叶った夢のありか

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〇ハチ公前
  この街は、叶った夢と叶わなかった夢で出来ている。

〇ハチ公前
湯上梨香子「マリちゃーん!おまたせ!」
芹川真凜「んーん、私も今来たとこ」
湯上梨香子「出発する前に録画見てたらギリギリになっちゃった💦」
芹川真凜「何の番組?」
湯上梨香子「せりりんの出てる『ゆったり路線バスの旅』!!」
芹川真凜「また〜!?」
湯上梨香子「だって嬉しかったんだもん!私の地元に来てくれるなんて!」
  せりりん──私の推しは今、アイドルを卒業してタレントとして活躍している!
芹川真凜「アイドルとしては全然売れなかったけどねー、ってもう!この前もこのやり取りしたじゃん」
湯上梨香子「アイドルの時も好きだったし、でもタレントになってからの方が仕事の幅は広がったよね」
芹川真凜「まぁ確かにね。 もーこの話おわり!行こ!」

〇渋谷の雑踏
芹川真凜「うわ、やっぱ人多いな〜」
湯上梨香子「うちら大学生の頃とかよくここ通ったよね」
「あの頃は夢がいっぱいあったな〜!」
湯上梨香子「そういえば、上京してすぐの頃、このスクランブル交差点で芸能人とすれ違うのが夢だった」
芹川真凜「そんな夢〜!?」
湯上梨香子「だってこんなに人いるんだよ!?誰か絶対いるでしょ!」
湯上梨香子「・・・って思ってたけど探してると案外見つかんなかったな」
芹川真凜「あー、意識するとダメなやつね。あるある」
湯上梨香子「あとはー、・・・やっぱアナウンサーになりたかったし」
芹川真凜「梨香子、あの頃頑張ってたよね」
湯上梨香子「結構自信あったんだけどな〜、ていう。 思い出すと凹むなぁ」
芹川真凜「私たち、大人になったよね」
アイドル「こんにちは!「ベリー×ベリー」っていうアイドルをやってます!!」
芹川真凜(あ、受け取っちゃった)
アイドル「チラシ、ありがとうございます!この後ライブするので良かったら見に来て下さいね!」
芹川真凜「ありがと。・・・えっと、頑張ってね!」
アイドル「はい!」
アイドル「・・・!!」
湯上梨香子(・・・せりりんも、アイドルを初めた頃はよくチラシ配りしてたっけ)
湯上梨香子「ね。マリちゃんはさー、今もアイドル好き?」
芹川真凜「んー、そりゃ、まぁね」
湯上梨香子「そっか。大学生の頃なんてマリちゃんアイドルオタクだったでしょ?」
湯上梨香子「でも最近はそういう話あんまりしなくなったから、どうかなって」
芹川真凜「梨香子・・・」
  マリちゃんはハッとしたような顔をしている。
  「なんで今更そんな事聞くの?」って言われたら、どうしようか。
芹川真凜「今の子さ、可愛かったね」
湯上梨香子「うん」
芹川真凜「キラキラしてたよね」
湯上梨香子「うん」
芹川真凜「売れて欲しいね」
湯上梨香子「ね、そうだね」
芹川真凜「あーあ、歳とっちゃったなー 私たちだって初めて東京来た時はもっとキラキラしてたけどなー」
湯上梨香子「あのころの夢 全っ然叶わなかったね!」
芹川真凜「ふふ、ほんと。でもさー思ってたより今が充実してるの。不思議」
湯上梨香子「確かに!私今の方が学生時代より楽しいよ」
芹川真凜「アパレルの仕事だっけ?」
湯上梨香子「うん。職場の人面白いし。 あとやっぱ推し活かな!」
芹川真凜「そりゃよかった。 私も、これからもっと楽しくなりそうな気もするし・・・」
湯上梨香子「あ!叶った夢、ある!」
芹川真凜「なに、急に」
湯上梨香子「スクランブル交差点で有名人と合うっていう夢!!」
湯上梨香子「すれ違うどころか一緒に渡ってるもんね! 『せりりん』?」
芹川真凜「っバカ!大きな声でそっちの名前呼ばないでよ!!」
湯上梨香子「あはは!!ごめんごめん〜! なんか自慢したくなっちゃって!」
  ──この街にはたくさん人の叶わなかった夢がある。
  けれど、叶った夢も沢山あるのだ。──

コメント

  • そうなんでしょうね、人の浮き沈みを目の当たりにする機会も地方より多いんでしょうね。勝ち負けなんて、思い込みで、ビカビカでないとしても、まんざらではないのかもしれません。だったら、人生、挑戦得ですね。

  • とても共感できるお話でした🥲
    大きな夢だけではなく、
    「そういえば」というような小さな夢も、
    案外叶っているものなのかも知れませんね😌

  • 2人の会話をとても愛おしく感じました。自分の夢、友達の夢、街で出会った子の夢が叶う事を願える二人はきっといつの日か大きな夢を実現できると思います。

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