年下の君と缶コーヒー

サカイリユリカ

読切(脚本)

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サカイリユリカ

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〇SHIBUYA109
  大都会、渋谷の真ん中。
  私はスクランブル交差点を渡った先の、TSUTAYA前で彼を待っていた。
ミユ(ヒロくん、遅いな・・・ スタバにでも入ってようかなー・・)

〇渋谷のスクランブル交差点
アキ「ヒロく~ん!♡ ね、アキ今日はぁ~スタバの新作飲んであったまりたい!」
ヒロ「そうだな、寒いしどっか入ろっか」
ミユ「ヒロくん!!??」
ミユ「ちょ、え、誰、その子・・・!!」
ヒロ「・・・」
アキ「ヒロくん、知り合い?」
ヒロ「・・・んーん。 知らないよ、あんなオバサン」
ミユ「えっ・・・」
ヒロ「いいから行こう、アキ♡」
ミユ「そんな・・・・・・」

〇渋谷の雑踏
  寒い渋谷の路上で、
  私はただ立ち尽くすしかなかった・・・
ミユ「あーあ。 このまま帰るのも寂しいなあ」
  行き交う人たちが、
  みんな幸せそうで、
  私は余計に寂しくなった──
ミユ「はぁ~! やってらんない!」
  私は寂しさを誤魔化すように、
  道玄坂を歩き始めた。

〇ナイトクラブ
  私は何かに誘われるかのように、
  とあるクラブに入っていた。
ミユ「クラブに来るのなんて、久しぶり・・」
  週末だからか、人も多い。
  皆、思い思いにDJの音楽を楽しんでいる。
  私は・・・踊る気分じゃない。
  でもここにいると何だか寂しさも
  紛れるような気がする。
ミユ「・・・とりあえず飲むか」
  楽しそうに踊る人たちを
  ぼんやりと眺めながら、
  私はバーカウンターでお酒を
  どんどん煽っていた。
ミユ「はぁ~・・・ やってらんない・・・」
ショウ「あの・・すみません」
ミユ「はい・・?」
ショウ「お姉さん、かなり酔っぱらってるみたいですけど・・大丈夫ですか?」
  私を心配してくれてるんだろうか。
  それとも、まさか、ナンパ・・!?
ミユ「大丈夫だって。 すみませーん、ビールもう1杯!」
ショウ「いや絶対大丈夫じゃないですって」
  なんなのコイツ・・・
  改めてよく見ると、なんかクラブであんまり見かけないタイプの・・・男の子。
ミユ「君、大学生?」
ショウ「え、あぁ・・はい」
ミユ「ふ~ん。1人で来たの?」
ショウ「いや、友達と一緒に来たんですけど・・・」
ミユ「友達は?」
ショウ「それが、なんか女の子ナンパしてどっか行っちゃって・・・」
ミユ「あはは、何ソレ。 君もナンパしてきたら?」
ショウ「いや、僕はそういうのは・・。今日だって友達に連れてこられただけだし・・・」
ミユ「もしかしてクラブ来るの初めて?」
ショウ「そうなんです・・・。 どうしたらいいのか分からなくって・・」
ミユ「あはは。せっかく来たんだし楽しめば? お酒は?」
ショウ「えと・・ 僕お酒苦手で・・・」
ミユ「はぁ~!? お酒も飲めないのにクラブ来たの? じゃあせめて踊ったら?」
ショウ「なんかちょっと恥ずかしいっていうか・・・」
ミユ「でも、帰んないんだ?」
ショウ「あ、それは・・もう終電もないし」
  なんなんだろう、この子。
  イマドキ、こんな子いるんだなぁ~。
  でも不思議と、話していて、
  嫌じゃなかった。
ミユ「こんなオバサンと話してないでさ、 もっと若い子見つけたら?」
ショウ「オバサンなんてそんな! 僕はただお姉さんが心配だったので・・・」
ミユ「またまたぁ~」
ショウ「いや、ほんとですよ」
ミユ「・・・・・。 じゃあさ、お姉さんに付き合ってよ」
ショウ「え・・!?」
ミユ「だーかーら。 終電逃したんだったら朝までいるんでしょ?あたしも同じだから」
  お酒に酔って、
  気が大きくなってきたのか、
  気づいたらこの年下の男の子を
  みんなが踊るフロアへと誘っていた。
ショウ「ぼ、僕、踊れないですって!」
ミユ「だいじょぶだいじょぶ。 音にノってるだけでいいから。 ね?」
ショウ「は、はい」
ミユ「あ~!あたしの好きな曲かかった~!!」
ショウ「ふふっ・・・笑」
ミユ「え、なに?」
ショウ「なんかちょっと元気になったみたいで、よかったなあって」
ミユ「なあによ、それ・・・」
ショウ「いや、さっき、すごい深刻な顔でため息ばかりついてたから」
ミユ「・・・。 見てたんだ」
ショウ「はい、それもあって、心配だったんです」
ミユ「アハハ! まあ、大人にはいろいろあるんだよ。 それよりさ、今日は楽しも?」
ショウ「・・・はい!」

〇高架下
ミユ「はあ~楽しかった~!」
ミユ「ありがとね、こんなオバサンに朝まで付き合ってくれて、さ」
ショウ「いやいや・・・ それより、ちょっとフラフラしてません?」
ミユ「んー、まあ・・・ ちょっと飲みすぎたかな」
  すると、彼は何を思ったのか、
  道端の自動販売機に向かった。
ショウ「あの、コレ、よかったら」
ミユ「あたしに?」
ショウ「はい。 あの、さっきその、クラブで何もご馳走できなかったから・・・」
ミユ「え?」
ショウ「いやあの、なんかああいうところって、男性が女性にお酒を奢ってあげるんですよね?」
ミユ「アハハ、まあ、そういうときもあるけどね」
ショウ「僕、お姉さんより年下だし、学生でお金ないですけど。これくらいは。ご馳走させてください」
ミユ「・・ありがとう」
  彼から受け取った缶コーヒーを
  飲むと、体も心も温まった気がした。
ミユ「今日はほんとに、ありがとね。 じゃあ・・・」
ショウ「あの、ほんとに、1人で大丈夫ですか?」
  心配そうに私の顔を覗き込んでくれる彼。
  まだ少し幼い瞳を見たら、
  なんだか少し・・・
  少しだけ、甘えたくなってしまった。
ミユ「ダメそうかも・・・ って言ったらどうする?」
  彼は少し驚いたような顔をしたが、
  すぐ、微笑んで、
  私に手を差し伸べてくれた。
ショウ「じゃあ、安全に帰れるように、 付き添います」
ミユ「・・・ありがと」
  私は、そっと彼の手をとった。
  朝陽が少し眩しい。
  でも、今日はなんだかいい日になる。
  そんな気がした。

コメント

  • んん 甘酸っぱい!
    短いストーリーでも 甘い感じが充満してます!
    その後が気になる!

  • 甘ぁぁぁぁぁぁぁぁぁい。うふふ、くすぐったい。もう書きたい放題ですやん。神田川ったら、神田川。ウレシハズカシ神田川! 好きです。

  • ホッと出来る素敵な出会いと時間でした。タイトルも好きです(^▽^)/

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