暁に鈴蘭

キリ

ただ話したいだけの男(脚本)

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〇古びた神社
暁鈴(数日ぶりに来たと思えば、 悲しみに暮れてどうしたというのだ?)
皇樹「・・・っっ」
皇樹「ずっと、話そう話そうおもてた・・・」
皇樹「でも、言うたらあかんことやから ずっと言えんかった・・・」
皇樹「なんとか、なんとか! どうにかならへんかなとか」
皇樹「考えて考えて、それでも無理やった」
暁鈴(だから何だ?さっきから・・・)
皇樹「明日、」
皇樹「この寺は"解体工事"させられる」
暁鈴「なっ・・・」
暁鈴「貴様が、どうしてそんなことを知っている」
皇樹「っ・・・」
皇樹「俺が、解体業者だからや」
暁鈴「っ!」
暁鈴「・・・そうか」
暁鈴「貴様は、ことごとく我の堪忍袋の尾を 切らざるを得ない男ぞ」
暁鈴「我がこの世で一番恨んでいるのは 貴様ら工事業者の人間だ!」
皇樹「・・・ぎょっ、暁鈴?」
暁鈴「我の寺は、貴様らのせいで解体された」
暁鈴「帰る場所を失った我は、 この寺に身を置くことにした!」
暁鈴「また我の護り寺を壊すというのなら!」
皇樹「うわあー!ストップ!ストップ! 早まるなて!」
皇樹「俺は解体工事に賛成してへんのや!」
皇樹「ってか、暁鈴って元々この寺の・・・」
皇樹「あああーーーーーー!」
皇樹「ちょ、水飲ませてくれへん? ? ?」

〇古びた神社
  一旦休息をとり、皇樹は寺の階段に腰掛け
  暁鈴は怒りが収まらないままで立ち尽くす
皇樹「はあ、俺は最初から解体工事の件を 伝えに来たつもりやった」
暁鈴(ふむ)
暁鈴(だから最初から、"話せるように"と 我と話す時はいつも、願っていたわけか)
皇樹「けど、暁鈴とおばちゃんのやり取りとか 色んな人たちとのやり取りとか見て、 心変わりしたんや」
皇樹「ぜっったいにこの寺を壊したらあかん」
皇樹「まだまだ願いを叶えたい、ほんで 幸福をもたらす人が出る!」
皇樹「これぞまさに!幸せの連鎖やあ!」
暁鈴「・・・」
皇樹「だから、なんとかせなって!」
皇樹「それでこの寺の良いとこを探そおもて 軒下とか点検してたところに、 賽銭泥棒きたもんやからそんで──」
皇樹「(ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ)」
暁鈴「長い」
皇樹「ああ、どこで息継ぎしよかと、ハハッ」
暁鈴「キッ」
皇樹「はいすんません!」
皇樹「それはそうと、」
皇樹「暁鈴の、そのっ言いたくないと思うけど なんで俺らを恨んでるのか、聞かせてや?」
暁鈴「・・・」
暁鈴「・・・数ヶ月前だ、この暁月寺に来たのは」
暁鈴「"桧山稲荷神社"を調べてみろ」
暁鈴「そこが、我の元居た場所だ」
皇樹「・・・」
皇樹「あ、ここて」
皇樹「俺らの担当・・・」
暁鈴「くっ」
暁鈴「やはり、貴様たちのせいではないか!」
皇樹「んぐっ・・・」
暁鈴「はぁ・・・もうこの寺もここまでか」
皇樹「なんか手は無いんか?」
暁鈴「あるわけ無かろう」
暁鈴「この寺の存続を強く願う者などおらん」
皇樹「暁鈴が願えばええやないの」
暁鈴「我は、願える立場では無い」
暁鈴(付喪神なんぞに、祈れる資格など・・・)
皇樹「せやったら、俺が願ったる!」
暁鈴「貴様の生半可な気持ちで願っても 叶うものじゃ──」
皇樹「生半可やない!本気や!マジや!ガチや!」
暁鈴「っ」
皇樹「この工事が」
皇樹「改修工事となりますように──」
暁鈴「っ!」
皇樹「工事は止めることできんかった」
皇樹「でも、未来を変えられることなら 願っても文句ないやろ?」
暁鈴「・・・」
皇樹「さてと!初みくじやってみよか!」
皇樹「んー・・・これやな!」
皇樹「おお!小吉か〜」
皇樹「って縁起悪う!」
暁鈴「ラッキーアイテムは、ピスタチオだそうだ」
皇樹「ホンマ?」
暁鈴「さあな」
皇樹「信じるで」
皇樹「暁鈴のおみくじやからな」

〇黒
  あれから数カ月後──

〇神社の本殿
暁鈴(まさか、あやつが願う力がこれほどまで 強かったなんて思わなんだ)
暁鈴(願望とは、強いものだ)
暁鈴「っ!」
皇樹「よお、慣れたか?居心地」
暁鈴「まあまあだな」
皇樹「え、もっと褒めてもええよ?」
暁鈴「・・・」
暁鈴「フフッ」

〇黒
  ありがとう、皇樹

コメント

  • 素晴らしい最終話、本当に感動しました!
    暁鈴様、本当によかった……
    人間ではないのに誰よりもニンゲン臭い暁鈴様の連載、楽しませてもらいました。ありがとうございました。

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