〇怪しいロッジ
鳳　煌我「トイレ・・・」
鳳　煌我（やらかした・・・）
鳳　煌我（やっべ────!!）
鳳　煌我「落ち着け・・・」
鳳　煌我「落ち着け俺・・・」
　　普段の俺はこうじゃない
　　こうじゃないんだ信じてくれ!!
鳳　煌我「魔が差した・・・」
　　魔が差しただけ

〇名門の学校
女学生「カッコいいー!!」
女学生「今日も王子様ー!!」
鳳　煌我「ありがとう」
鳳　煌我「君たちも可愛いよ」
女学生「いい香り♡」
女学生「ふわふわウェーブパーマ♡」
女学生「女の子みたいなすべすべお肌♡」
女学生「清潔感♡」
　　そう!!
　　俺は王子様なのだ!!

〇怪しいロッジ
　　しかし今は
鳳　煌我「ぺたんこヘア」
鳳　煌我「ただならぬ生命力のすね毛」
鳳　煌我「あ、胸毛も」
鳳　煌我「紳士らしからぬパンいち」
鳳　煌我「はぁ・・・」
（こんなの王子様じゃない!!）
（王子こんなことしねぇよ!!）
鳳　煌我「こうなれば・・・」
鳳　煌我（ひた隠すのみ!!）

〇ボロい山小屋
鳳　煌我「ここが女子の部屋か」
鳳　煌我「よし」
鳳　煌我「寝てるな」
鳳　煌我「よいしょっと」
姫野いちご「ん～」
姫野いちご「あqwせdrftgyふじこkpl・・・」
鳳　煌我「・・・・・・」
鳳　煌我「セーフ・・・」
鳳　煌我（俺は王子様でなければならないんだ!!）
鳳　煌我（君のためにも）
鳳　煌我（寝顔）
鳳　煌我「赤ちゃんみたいだな」

〇寂れた旅館
部長「お前ら!!」
部長「学祭はもうすぐだ!!」
部長「気合い入れて最後の追い込みしろよ!!」
「は──い」
鳳　煌我「・・・」
鳳　煌我（誰にも気付かれてないみたいだな）
鳳　煌我「ふぅ・・・」
姫野いちご「おはよう鳳くん！」
鳳　煌我「お、おはよう」
姫野いちご「大丈夫？ クマすごいよ？」
鳳　煌我「あ・・・はは」
鳳　煌我「楽しみ過ぎて眠れなくてさ」
姫野いちご「子どもみたい」
鳳　煌我（良かった・・・）
鳳　煌我（本人も覚えてない）
鳳　煌我（飲み過ぎて記憶がない 一番いいパターンかも知れない）
姫野いちご「変な夢見たんだよねー」
鳳　煌我「そういう日もあるよな」
姫野いちご「それがー聞いてよ!!」
姫野いちご「王子様ならまだしも」
姫野いちご「こーんな人に抱かれる夢だったんだから!!」
姫野いちご「どうせならイケメン王子様が良かった」
友達「今夜はいい夢見ろよ」
鳳　煌我（ソレ俺じゃん）
鳳　煌我（夢っていうか少し記憶してるじゃねぇか）
鳳　煌我（絶対に）
鳳　煌我（夢だと信じ込ませなければ!!）

〇ゆるやかな坂道
悪い人「逃げるなって」
悪い人「そんな短いスカート履いて」
悪い人「オレを誘っているんだろう？」
姫野いちご「ちがいます・・・!!」
姫野いちご「これは・・・」
姫野いちご「お姫さまみたいにになりたくて・・・」
悪い人「そうかそうか!!」
悪い人「オレが運命の王子だったというわけだな!!」
姫野いちご「ひっ・・・!!」
姫野いちご「や、やめてーっ!!」

〇ゆるやかな坂道
悪い人「あぁ？」
通りすがり「あー」
鳳　煌我「いい汗かいたー」
鳳　煌我「やっぱスマ○゛ラは実戦に限るな」
姫野いちご「王子様・・・」
鳳　煌我「えっ」
姫野いちご「同じ学部ですよね！」
姫野いちご「友達に、なってください!!」
姫野いちご「というか・・・」
姫野いちご「王子様に、なって下さい!!」
鳳　煌我「・・・」
鳳　煌我「王子・・・様・・・」

〇寂れた旅館
友達「あははは！」
友達「なんなのよそのタイトル」
友達「『ドS王子に届け』」
友達「『王子様の取扱説明書』」
友達「王子ばっかり気持ち悪いわ」
鳳　煌我「・・・・・・」
鳳　煌我（助けただけなのに）

〇キャンディ
姫野いちご「鳳くん」
姫野いちご「鳳くん！」
姫野いちご「お・お・と・り・く・ん」
鳳　煌我（あー！ だめだめ!!）
鳳　煌我（今は昼）
鳳　煌我（そんなに懐かれると困る）
鳳　煌我（また間違いが起きてしまう）

〇寂れた旅館
友達「あれま」
友達「おーい帰るぞ」
友達「バス乗るぞー」
友達「起きねーな」
友達「姫ちゃん起こしてきて」
友達「うちバス乗ってるわ」
姫野いちご「・・・」
姫野いちご「こうして見ると・・・」
姫野いちご「本物の王子様みたい」
鳳　煌我「────」
鳳　煌我「いや」
鳳　煌我「俺よりも君の方が似合うよ」
鳳　煌我「目覚めさせてくれてありがとう」
友達「なにやってんのよ」
鳳　煌我「・・・・・・」
鳳　煌我（このままでいいんだろうか・・・）
鳳　煌我（本当は全然、 王子様なんかじゃねぇのにな・・・）

〇観光バスの中
「あははは！」
鳳　煌我「・・・」
鳳　煌我（聞き耳を立てるつもりはなかったんだけど）
友達「つぅかー、ここだけの話」
友達「あたし見ちゃったんだよね」
友達「あんたが誰かに運ばれてくるところ」
「──!?」
姫野いちご「え・・・えっ!?」
友達「暗くて顔までは分からなかったんだけど」
姫野いちご「それじゃあ、あれは夢じゃなくて・・・」
友達「事実♡」
鳳　煌我（や・・・べ──!!）
鳳　煌我「夢に決まってるだろ」
鳳　煌我「その男・・・」
鳳　煌我「こんなんだろ？」
鳳　煌我「それは夢」
鳳　煌我「姫野さんは王子様が大好きなんだからさ」
姫野いちご「・・・」
鳳　煌我（ヤバい・・・）
鳳　煌我（ヤバいことになってきたぞ）
鳳　煌我（あんなことをしたのが俺だってバレたら）

〇水の中
姫野いちご「鳳くんなんか嫌い!!」
鳳　煌我（バレたくない）
鳳　煌我（俺は王子様だ）

〇観光バスの中
姫野いちご「鳳くん」
姫野いちご「鳳くん！」
鳳　煌我「あぁ、ごめん」
姫野いちご「また寝てたの？」
姫野いちご「鳳くん、悪女は好き？」
鳳　煌我「悪女？」
鳳　煌我「急にどうした」
姫野いちご「ううん、なんでもないんだけど」
姫野いちご「昨日組み立てた演劇部の看板」
姫野いちご「『王子様の取扱説明書』」
姫野いちご「この本を脚本にしてるんだって」
姫野いちご「悪女が、王子様を指南するっていう話なの」
鳳　煌我「へぇー？」
姫野いちご「それでね」
姫野いちご「それで・・・」
姫野いちご「ここに描く王子様のイラスト」
姫野いちご「鳳くんをモデルにしていいかな」
鳳　煌我「あぁ」
鳳　煌我「イケメンに描いてくれるならな」
鳳　煌我「・・・」
鳳　煌我（本当の王子様は）
鳳　煌我「あんなこと絶対にしないけどな」

〇観光バスの中
部長「DNA」
部長「姫野さん大丈夫か？」
部長「オレは誰かが君を襲ったんだと思う」
部長「あやふやにしないで 医者に診てもらった方がいい」
鳳　煌我「・・・」
姫野いちご「確かにそうね・・・」
鳳　煌我（聞いてたのか）
部長「なんでもないのなら越したことはないし」
部長「もしそうでなかったら、 取り返しのつかないことにならないように」
姫野いちご「今のうちにDNAを採取して 証拠を集めた方がいい」
部長「そうだ」
鳳　煌我「と、取り返しのつかないことって」
「・・・・・・」
鳳　煌我（まさか）

〇動物

〇観光バスの中
鳳　煌我「そんなの俺がどうにかするしかないだろう!!」
「・・・？」
姫野いちご「性感染症とか」
部長「PTSDとかな」
鳳　煌我「・・・」
部長「なんでお前が責任取るような台詞言ってんだ」
部長「いい人すぎるぞ」
鳳　煌我「・・・っ」
鳳　煌我「俺なら、可哀想な姫野さんの理想の王子様になれるし？」
姫野いちご「・・・」
姫野いちご「王子様現金ください」
鳳　煌我「・・・」
鳳　煌我「王家は没落しました」

〇名門の学校
友達「気をつけてなー」
姫野いちご「またねー！」
鳳　煌我「ミスコン・・・」
姫野いちご「鳳くんカッコいい!!」
姫野いちご「王子様みたい！」
鳳　煌我（理想の王子様の姿なら 許してくれるかも知れない）
鳳　煌我「本当の俺でも──」
鳳　煌我「──」
鳳　煌我「姫野さん!!」
鳳　煌我「これ・・・」
鳳　煌我「見に来てほしい」
鳳　煌我「いつもよりも何倍も王子様になるから!!」
姫野いちご「うん!!」
姫野いちご「楽しみにしてるね！」

〇ゆるやかな坂道
部長「降ってきちまった」
部長「早く帰んねぇと せっかく買ったコイツが濡れちまう」
部長「へへっ」
部長（鳳くんじゃねぇか）
部長「あいつ、車運転できたんだな」
部長「いいな」
部長「おーい!! 鳳くん!!」
？？？「いつもありがとう」
鳳　煌我「いいえ」
鳳　煌我「いつでも頼ってよ」
？？？「ええ」
部長「──!?」

〇文化祭をしている学校
　　ミスターコンテスト　会場
司会「続きまして！ エントリーナンバー三番！」
司会「鳳　煌我くんでーす!!」
女学生「やっぱ鳳くんはカッコいいね！」
女学生「あたし絶対投票するねー！」
鳳　煌我（大丈夫）
鳳　煌我（うまくやれてる）
鳳　煌我（俺は完璧な王子様だ）