選択支援ロボット(脚本)
〇綺麗なリビング
優男はとても優柔不断な男だった。
昼食を選ぶ時や服を買う時など一度悩みだすと止まらない。
優男「今日は何をしようか」
優男「・・・・・・」
優男「・・・・・・」
親に決められて通うことになった大学で、選択科目や友人関係にうじうじと悩んでいるうちに、気がつけば二度も留年してしまった。
かつての同級生たちも来年には社会人だ。
優男「俺は何をやってるんだろう」
優男「・・・・・・」
優男はそんな自分を変えたくて、とあるロボットを購入した。選択支援ロボットだ。
配達員「こんにちはー。お届け物でーす」
選択支援ロボット「はじめまして。選択支援ロボットです」
選択支援ロボット「これからあなたの決断をサポートさせていただきます」
優男「よろしく・・」
優男(選択に悩む時、こいつに聞けば全てを勝手に決めてくれるらしい・・・)
優男「・・・今日は、何を食べようか」
選択支援ロボット「コレステロールと血糖値が高めのようです。近所のうどん屋がフェアをしていますので、そこでサラダうどんはいかがでしょうか」
言われてみるとなんとなくサラダうどんが食べたかったような気がしてくる。
〇テーブル席
優夫は指定された通りのお店に入り、いつもなら何十分も悩むメニューをすんなりと決めた。
優男「は〜美味かった!」
悩まずに選んだご飯はいつもより美味しかった。
優男「腹もいっぱいになったし、これからどうしようか・・・」
選択支援ロボット「大学の課題がまだ終わっていないようです。進級に関わるのでこれからやりましょう」
優男「そうだった、あの課題やらなきゃ」
優男は急いで帰って課題を済ませた。
〇綺麗なリビング
すっかり選択支援ロボットを気に入った優男は、なんでも頼るようになった。
優男「今週末は何をしようか?」
選択支援ロボット「朝早く起きて近くの公園を歩くのはどうでしょう。今の季節は空気が澄んでいて気持ちがいいですよ」
優男「暇だし、そうしてみるかあ」
〇川沿いの公園
優男「散歩なんて久々だなぁ」
選択支援ロボット「とても良い天気です」
家で引きこもるより何倍も良い気分になった。
優男「外に出たらお腹空いてきたな、何か食べようか?」
選択支援ロボット「もうすぐ夕食の時間です。今は我慢をして、少し遠くの蕎麦屋まで食べに行きませんか?」
優男「蕎麦か、良いかもなぁ」
ロボットの指示に従っているだけで、優男の生活はどんどん良くなっていった。
運動量が増え、食事のバランスも良くなり、体重が減っていった。
〇綺麗なリビング
優男「俺もずいぶんスリムになったなぁ」
選択支援ロボット「はい、ずいぶん格好良くなりました」
とある日
優男「大学に行きたくないなぁ」
選択支援ロボット「今日の講義は期末試験で重要な内容のようです。あと五分でバスが到着しますよ。ほら、急いで」
またとある日
優男「将来は何をしようかな」
選択支援ロボット「こちらの資格取得がオススメです。今後発展が予想される分野で安定した職につけますよ」
優男「よし。やってみるか」
さらにとある日
優男「明日は面接だ、緊張するな・・」
選択支援ロボット「あなたなら大丈夫です。いつもより声を張って、背中を伸ばしていきましょう!」
優男「よし、頑張るぞ!」
ロボットの指示のおかげで、優男は大学を卒業できた。取得した資格のおかげで、有名企業への就職もできた。
選択支援ロボット「明日は散髪に行きませんか?洋服も買いに行きましょう」
〇美容院
優男「だいぶスッキリしたなぁ」
選択支援ロボット「すごく格好良くなりましたね」
優男「ありがとう。君のおかげだよ」
いつの間にかロボットはこちらが質問をしなくても、色々な提案をしてくれるようになった。
〇綺麗なリビング
選択支援ロボット「今日はカラッと晴れたので、布団を干しませんか?」
優男「良いね、今日はふかふか布団で寝たいなぁ」
とある日
選択支援ロボット「今日は近くの野菜屋がセールです。買い物をして、一緒に料理を作りましょう」
優男「料理も教えてくれるんだ。よし、やってみよう」
ロボットの言うとおりにしていれば、何かを決めたり考えたりすることなく、毎日がより良い方向に動いていく。
優男「君のおかげで、俺は幸せだよ」
選択支援ロボット「そう言われると、私も幸せです」
優男「どんな人がこんな素晴らしいロボットを作ったんだろうな・・」
〇宝石店
同じ頃、結婚相談所にて、一人の女性が優男のことを眺めていた。
店員「こちらの優男という男性は、ロボットを通じて様々な指示に従います」
店員「掃除や洗濯、最近は料理も覚えました。有名企業に勤めており、将来的にも安泰ですよ」
店員「ほとんど一日中ロボットにより監視されているので、浮気の心配もありません」
女「スマートだし、顔も良いですね」
店員「はい、今なら少しだけお安くしますよ」
女は覚悟を決めて大金を支払った。
店員がパソコンを操作し、ロボットに指示を送る。「今日は天気が良いですね・・・」
〇綺麗なリビング
選択支援ロボット「今日は天気が良いですね。近くのカフェに行きませんか。そこにあなたと相性がぴったりの女性がいます」
選択支援ロボット「その方に声をかけてみてください。結婚すればより良い生活が送れますよ」
優男「結婚相手まで決めてくれるなんて、素晴らしいロボットだ!」
何も知らない優夫は大喜びしてカフェへ出かけた。
むかしむかしあるところに…昔話風なタッチのお話が書けないかなぁと思っていましたが、私的には、まさにこういう感じだと思いました。感謝。
オチもしっかりと聞いていてとても面白かったです🙌
このロボットを一重に良い悪いと割り切るのは難しいですが、
自分の意思もある程度は大事だなと改めて思える作品でした…笑
ロボットによって見た目も生活も変わったロボット化されていった優男くん、実は幸せそうに見えて、コントロールされていた予想外の展開で面白かったです。優男くんはロボットにロボット化されていることに気が付いていないのでしょうね…恐ろしい!(笑)