第一話 まさか我らがツチノコさんの出しゃばろうはずも無し(脚本)
〇学校の校舎
〇幻想2
しぶしぶイケボおじさん「───ちゃん」
しぶしぶイケボおじさん「──りちゃん、偉いねぇ」
しぶしぶイケボおじさん「ほら──おいしい飴ちゃんをあげよう」
しぶしぶイケボおじさん「ひ─りちゃん頑張ったんだね」
しぶしぶイケボおじさん「さあ──近くにおいで、ナデてあげよう」
???「うへ、ふへへへ」
〇学校の部室
部長「──」
???「ふひひっ」
下手 ひだり「んふ~、ふへへへ」
部長「おい、下手(しものて)」
下手 ひだり「ふほほっ──」
下手 ひだり「ハイ部長、何か用でしょうか?」
部長「いや、さっきから何をニチャニチャ笑っているんだ? だいぶ気持ち悪いぞ」
下手 ひだり「あぁ──失礼しました」
下手 ひだり「ちょっと自作のアプリで英気を養っていたのですよ」
部長「自作のアプリ?相変わらず器用なヤツめ」
部長「どんなアプリなんだ?」
下手 ひだり「音声合成アプリです」
下手 ひだり「これで推しのオジさんから好きな言葉をかけて貰えるのですよ」
部長「キッツいわ~」
下手 ひだり「まぁ──同級生をジジイと仰る部長とは相容れないと思います」
部長「ムダ毛の生えた男なんて、もうジジイだろ」
部長「ところでそのアプリ、ショウ太くん──」
部長「いや、例えば小学生のモノも作れるのか?」
下手 ひだり「1時間程度の音声サンプルさえあれば──」
下手 ひだり「お値段1万円になります」
部長「買った──今日中に金と動画を用意する」
下手 ひだり「お買い上げありがとうございます」
下手 ひだり「────」
下手 ひだり「なんでこの人、となりの家の子の音声1時間分も持っているのでしょうかね?」
部長「下手──」
下手 ひだり「え、ええ──部長ご安心下さい」
下手 ひだり「この下手ひだり、クライアントの事情は詮索しません──出しゃばりませんとも」
部長「フフ、お前に限ってその心配はしてない」
部長「それよりも」
部長「私宛てに来た依頼なんだが」
部長「下手がやってみないか?」
下手 ひだり「おや──譲って下さるのですか?」
部長「まぁ、私はそろそろ満点だ」
部長「部で”校益点”での進学狙いはお前だけだし」
部長「今後は融通してやろうと思っている」
下手 ひだり「──」
下手 ひだり「で──その心は?」
部長「嫌な依頼だからお前がやってくれ!」
下手 ひだり「素直っすねぇ!?」
部長「おや、来客かな?」
下手 ひだり「はいどうぞ、こちら校益活動助成部です」
女子生徒「あ、あの、ここで助っ人を頼めると聞いて」
下手 ひだり「おや──ご依頼ですね、お伺い致します」
下手 ひだり「ささ──まずはどうぞ中へ」
女子生徒「は、ハイ!」
〇学校の部室
〇黒
〇黒
〇田舎の役場
土御門 龍成「アレ?里砂場(りざば)さんは?」
下手 ひだり「すみません、部長ヘビが苦手だそうで」
土御門 龍成「そんな~、トホホ」
下手 ひだり(貴方フラれましたよ──とは言えない)
下手 ひだり「とりあえず、依頼の確認をさせて頂きます」
土御門 龍成「そうだね、嘆いてばかりじゃ代役をくれた里砂馬さんの為にもならないよね!」
下手 ひだり「依頼は爬虫類愛好会の部長、土御門 龍成さん──貴方から」
下手 ひだり「今回ツチノコ調査のお手伝いと伺いました」
下手 ひだり「あの──失礼ですがアテはあるのですか?」
土御門 龍成「と、言うと?」
下手 ひだり「校益部は校益点目的の部です」
下手 ひだり「ツチノコを発見すれば学園から10点や20点は出ると思いますが──」
下手 ひだり「懸賞金もかかる伝説のUMAですよ? 素人の学生が発見できるのモノですか?」
土御門 龍成「うむ、その依頼なんだがね──」
土御門 龍成「ウソなんだよね」
下手 ひだり「んなッ!?」
下手 ひだり「まさか、2人きりの状況で部長を!?」
土御門 龍成「ち、違うよ、僕にやましい所は無い!」
下手 ひだり「フン────────分かりました」
下手 ひだり「3m外からの弁解を許しましょう」
土御門 龍成「分かりきってはくれない!?」
〇田舎の役場
土御門 龍成「え~っと?」
下手 ひだり「ただいま録画&撮影中です」
下手 ひだり「先輩が私に何をしても──」
下手 ひだり「必ず刺し違えますので悪しからず」
土御門 龍成「誤解だよ、話せば──」
下手 ひだり「おっと! それ以上私に近付くと──」
土御門 龍成「えッ? 近付くと?」
下手 ひだり「私の──カバディとセパタクローが火を吹きますよ!!」
土御門 龍成「かば? せぱた?──何それ?」
下手 ひだり「格闘技です(断言)!!」
〇田舎の役場
土御門 龍成「この写真を見てくれ(5m位置)」
下手 ひだり「それ──随分と見覚えのある蛇ですねぇ」
土御門 龍成「うむ、コレが真のターゲットだ」
下手 ひだり「今、テレビやネットで話題のお方──」
「シマパンダちゃん」
下手 ひだり「噂の脱走ヘビ──まさか、この山に居るのですか?」
土御門 龍成「ここは僕の縄張りでね」
土御門 龍成「観測カメラに彼女が写っていたのさ」
土御門 龍成「それで大体の位置は特定してある」
下手 ひだり「──なるほど」
下手 ひだり「接近しないで、と注意されている蛇を──」
下手 ひだり「偶然にも捕まえてしまうのでしょうか?」
土御門 龍成「本当はツチノコを探していたのだけれどね」
土御門 龍成「仕方ないよ、予想外の事は起きるものさ」
下手 ひだり「実際のところ、捕獲は可能なのですか?」
土御門 龍成「あの種は僕も飼育しているが、毒も無いし締める力も強く無い──正直楽勝だ」
下手 ひだり「ほぅ──楽勝ですか」
土御門 龍成「だからね──ただ捕まえたってだけじゃあ校益点は1点までだろうね」
下手 ひだり「ふむ──なるほど」
下手 ひだり「例えばそれを3点に変えたら私に1点、と」
土御門 龍成「ね、健全な提案だろう?」
下手 ひだり「ええ──素敵なご提案ですねぇ」
〇黒
〇森の中
女子生徒「あ、ここ開けているし、ダンスできそう!」
女子生徒「どうかな?」
???「おぉ──良い感じですねぇ」
女子生徒「それじゃ踊るよ!可愛く撮ってね!」
???「おっと──マキナちゃん、危ないので先に足下の石や枝を片付けましょう」
出臼 マキナ「あッ!そうそう、そうだったね!」
出臼 マキナ「よいしょ」
マキナ「えっ──」
???「マキナちゃん!? どうしました──」
???「へ、蛇ですとぉ!?」
???「マキナちゃん、はやく逃げて!」
出臼 マキナ「あ、アワワ、腰が抜けて」
土御門 龍成「悲鳴が聞こえました!大丈夫ですか?」
出臼 マキナ「た、助けて──蛇が」
土御門 龍成「蛇──大丈夫、その種類に毒は有りません」
土御門 龍成「僕が後ろに回って捕まえます、そのまま蛇を刺激しないでいて下さい」
出臼 マキナ「は、はい~」
???「マキナちゃん──あともう少し、頑張って」
土御門 龍成「それ!」
土御門 龍成「捕獲した!もう大丈夫ですよ!」
女子生徒「助かりました!ありがとうございます!」
土御門 龍成「なに、舞泰ヶ浦校生として当然の事です お礼には及びません」
土御門 龍成「しかしこの蛇」
土御門 龍成「何か見覚えが──」
土御門 龍成「──」
???「はい!カットーーッ!!」
〇黒
〇SNSの画面
─お騒がせ脱走ヘビ、捕獲へ─
─シマパンダちゃん高校生が捕まえた!?─
─脱走ヘビ事件に学ぶ、野生動物との遭遇─
〇学校の部室
部長「お見事、土御門くんは時の人になり──」
部長「下手ともども校益点をがっぽりボロ儲け」
部長「おまけに出臼のヤツもバズり動画に初出演 一石三鳥だったな」
下手 ひだり「ええ──おいしい依頼、ありがとうございました」
部長「私としてもジジイ避けにお前を使わせて貰ったからな──おあいこさ」
〇学校の部室
出臼 マキナ「私、出臼(いでうす)マキナと言います 鳴かず飛ばずのアイドルやってます」
部長「ハッハッハ、悲しい事を言うねぇ」
下手 ひだり「粗茶ですが、どうぞ」
出臼 マキナ「ありがとうございます」
出臼 マキナ「あの、助っ人を頼めるって本当ですか?」
部長「それは依頼の内容次第だね」
出臼 マキナ「私以外のメンバーがグループを辞めて 最近はマネージャーや事務所も投げやりで」
出臼 マキナ「もう、もう──にっちもさっちもで!」
下手 ひだり「どうぞ、こちらはお茶請けです」
出臼 マキナ「ありがとうございます!」
出臼 マキナ「それでは──尻尾から行かせて頂きます!」
出臼 マキナ「ふぅ、ごちそうさまでした」
出臼 マキナ「──それで」
出臼 マキナ「私のアイドル活動を手伝ってくれませんか」
部長「漠然とした依頼だな、それに校益点の当ても無さそうだ」
部長「下手、お前はどうする?」
下手 ひだり「そうですねぇ──」
〇学校の部室
部長「出臼の依頼、お前は断ると思ったよ」
下手 ひだり「手駒──もとい、出たがりのお友達も良いかと思いましたので」
下手 ひだり「彼女が目立つ形なら私の活動に協力して頂けますし、今後もし校益点を得たら──」
部長「貰えると思うか?」
下手 ひだり「まぁ──顔面力と図太さで、あるいは」
部長「うわ、無さそう」
下手 ひだり「とは言え、私にも明確なノルマがある訳では無いので気楽にやりますよ」
部長「そうか、まぁ好きにすれば良い」
下手 ひだり「──」
下手 ひだり(芸能人の知人が居れば──もしかして)
下手 ひだり(いえ──浅ましい考えですね)
出臼 マキナ「ひだりちゃ~~ん!!」
出臼 マキナ「やったよ!」
下手 ひだり「慌ててどうしたのです?」
出臼 マキナ「この前の動画のコメント!」
出臼 マキナ「ほら、コレ見てよ!」
下手 ひだり「どれどれ──」
下手 ひだり「『襲われてる子、可愛いじゃん』」
下手 ひだり「『シマパンダちゃんどきな、俺が襲う』」
出臼 マキナ「私、可愛いだって!!」
下手 ひだり「そ、それは良かったですね」
下手 ひだり「不埒な輩も居ますが」
部長「まぁ、無名よりはマシなのか?」
出臼 マキナ「テレビにも映るかな? 番組にも呼ばれるかな?」
部長「さすがに気が早すぎるだろ」
下手 ひだり「ハハ──喜んで貰えて幸いですよ」
下手 ひだり(私──今度も上手くできましたよね?)
〇幻想2
また──私を褒めて下さいね
〇黒
お父さん
〇黒
〇劇場の楽屋
──都内、某所──
スマホ「マキナちゃん逃げて!」
スマホ「アワワ、腰が抜けて」
賀御手 頼人「ハイ、どうぞ」
TVスタッフ「お疲れ様です賀御手(かみて)さん!」
TVスタッフ「スタジオの用意が整い──」
TVスタッフ「おや、シマパンダちゃんの動画ですか」
賀御手 頼人「ええ──可愛いこ─」
TVスタッフ「おお!? マキナんに気付くとはお目が高い!」
賀御手 頼人「えぇ?──どうしたんです急に」
TVスタッフ「蛇に襲われた子、僕の推しなんです!!」
賀御手 頼人「へぇ──そうなn」
TVスタッフ「マキナんはですねぇ!!」
〇黒
〇劇場の楽屋
TVスタッフ「それじゃあ、スタジオ入りお願いします!」
賀御手 頼人「──」
賀御手 頼人「いやはや──」
賀御手 頼人「私が気になったのは──」
賀御手 頼人「カメラマンの子の声なんだけれどね」
賀御手 頼人「まぁ──良いか」
ひだりちゃんと部長の関係性がいいですね。どちらも他人を尊重しているのが素晴らしいです!最初のイケオジとラブな関係のお話になるかと思いきやお父さんとは!はっ!まさか禁断の恋?なんてことを思いながら続きを楽しませてもらいます!
軽快でキャラに癖があって、とてもかけないような不思議な作品ですね!!
タップノベルのレベルの高さを感じます😮
ひだりちゃんはおじ専かぁ~😯と思っていたら、まさかのお父さんでしたか!😳
しかも芸能人!✨
どういう展開になるんでしょう?気になります!😆