エピソード1(脚本)
〇渋谷駅前
渋谷スクランブル交差点。
それは世界で最も人が行き交っているとも言われる場所。
今日もそこでは数多の人間がその交差点を行き交っていた。
しかしこの交差点の最も特筆すべき点は交通量ではない。
アニメのコスプレをした男性が、同じアニメのコスプレをした別の男性に手を差し出す。相手の男もそれに応えるように握り返した。
男性1「どこで語り合おうか?」
男性2「馴染みのカフェがあるんだ、そこに行こう」
二人は交差点を出て行く。
この交差点は出会いを生み出す交差点として有名なのだ。
元々は好きなアニメのキャラをしたコスプレイヤーが交差点を渡っている時にアニメのファンが握手を求めたことが始まりらしい。
以来この交差点で握手をしたもの同士は一緒に食事をするという慣習が出来上がった。
そして趣味の合う者同士で飲みに行ったり、親交を深めた者同士でお使いを頼むなどの交流が行われているのだ。
男性3「あの・・・」
交差点を歩く女性に男が手を差し出す。
なにせ、この交差点では手を差し出すだけでナンパが成立する魔法の交差点なのだ。
誰が呼んだか渋谷スクラブラブル交差点。この場所はいろんな意味でおアツイ場所となっていたのだった。
しかし、
女性1「ごめんなさい・・・」
男はあっさりフラれてしまった。世の中甘くないものである。
私は今日も愛犬サブローと共にそんな渋谷のスクランブル交差点で起こるドラマを観察し続けている。
主人公「お、美女に同時に手を差し出そうとした男二人が誤魔化すように伸びをしているぞ、うははは!」
ワンワン!
二人組「うわあ!何だこの犬、返しやがれ!」
突然サブローが男が受け渡しをしていた人形を奪い取った。
由々しき事態だ。
主人公「すみません、その犬はうちのなんですこれで新しいものを買ってください」
そう言って財布からお札を取り出す。
二人組「そんなもんいいからお前の犬が盗った人形をよこせ!」
抗議する二人組。むう、そう言われては仕方がない。
主人公「分かりました、それではお二人とも手を出してください」
二人組「おう」
そして俺は差し出された二人の手に手錠をかけた。
主人公「警察だ、お前達二人を麻薬密売の現行犯で逮捕する!」
二人組「!?」
サブローがかじっている人形に仕込まれた小袋の中の粉に試薬を垂らすとみるみる青色に染まっていった。ビンゴだ。
サブローは麻薬を探すための訓練を受けた優秀な警察犬だ。それは相棒の自分が一番よく知っている。
グッズのやり取りが行われるのに紛れて麻薬の取引が横行しているのだ。
あの二人があの人形にこだわったのも当然だ。人形の弁償代より麻薬の密売の利益の方が遥かに高い。
二人組「ちくしょう、捕まってたまるかよ!」
男が無理やり逃げようとする。
主人公「ふん!」
二人組「うわあ!」
自分の繰り出した一本背負いに男はたまらなくダウンする。
主人公「悪いけどそこいらの一般人に負けるほどやわな鍛え方はしてないんだ」
主人公「こちらパトロール、至急応援を頼む」
後から駆けつけた警官に男を引き渡す。
こうして今日もこの交差点の治安は守られた。
主人公「さて、引き続き観察に戻りますかね」
通勤中のサラリーマン、通学する学生、主婦やオタクに観光する外国人。様々な人間が今日もこの交差点を通り過ぎていく。
この交差点で次はどんなドラマが待ち受けているのだろうか。
女性「あ、いつも犬を連れて交差点を見てる人だ・・・今日こそは勇気を出してお話を・・・!」
ーそれではー
渋谷をご通行する皆さまにとって、どうか今日が良い一日でありますように
まさに人間交差点ですね。すれ違うことによって生じる何かは魅力的で、計り知れない感じです。無数の人の波がおりなすに数々のドラマが常に渋谷交差点を彩っているようですね。
何かイベントを起こしたり派手なことにスポットを当てるのではなく、こういう影の努力をしている方たちにスポットを当てた作品が良いなぁと思いました😌平和が1番ですね☺️
まさか、まさかの展開で、前半の前振りが上手い。中盤から話の展開に凄く引き込まれて、手錠が出てきても全く答えが分からなかった自分がいましたが、最後まで結構楽しめました。自分は結構好きな系統だと思いました。