読切(脚本)
〇コンビニの店内
バカッター・・・
それは、2013年ごろからインターネット上で目撃される事が多くなった反社会的行動である。
主に承認欲求に狂った者がこういった行為を行なってしまう傾向にあると言われているが、詳細は不明である。
また、こういった行為の被害に遭った企業は設備の再整備や企業のイメージダウンなど、様々な不利益を被ることになる──
〇豪華な社長室
時は流れて2050年・・・
大手回転寿司チェーン 天狗寿司の社長室──
天狗寿司社長「本当に・・・やってくれるんだね?」
潰し屋「ええ、出すものさえ出して頂ければライバル企業に致命的ダメージを与えてみせますよ・・・」
天狗寿司社長「しかしだな・・・ その・・・任務を行う人間の人権とかプライバシーとか・・・情報漏洩とかっていうのは大丈夫なのか?」
潰し屋「大丈夫ですよ・・・彼らは人間ではないのですから」
天狗寿司社長「人間じゃない・・・? まさか、あんな知能が低そうな行動をするヤツはもう人間じゃないとか、そういう・・・?」
潰し屋「あなたさりげなく酷いこと言いますね・・・ 実行するのは人間ではなく、高性能アンドロイドです」
天狗寿司社長「アンドロイド・・・?」
潰し屋「ええそうです この世にすでにいそうでいない、特殊な顔を持った人間そっくりなアンドロイドが任務を遂行します」
潰し屋「この世に存在しない人間の顔ですから、個人情報の特定などはありえませんし、任務の依頼がある度に顔も交換しているのでご安心を」
天狗寿司社長「そうか・・・では君にこれを渡そう」
天狗寿司社長「私からの依頼、引き受けてくれるね?」
潰し屋「もちろんでございます・・・ それでは、3日後に決行いたしますので、しばしお待ちを・・・」
社長秘書「あの人・・・一体何者なんでしょう?」
天狗寿司社長「「潰し屋」だよ、「潰し屋」」
社長秘書「潰し屋・・・?」
天狗寿司社長「君、バカッターを知っているかね?」
社長秘書「えぇ・・・ あの知能指数が低そうな下等な人間が行う下衆な行為の事ですね?」
天狗寿司社長「君、めちゃくちゃ酷いことを言うな・・・ まぁ大体あってはいるけど」
天狗寿司社長「まぁこの話は置いといて そのバカッター行為を相手企業に向けて作為的に行ってくれるのが、その潰し屋なんだよ」
天狗寿司社長「彼らはこれまでに50近くの企業にダメージを与え、その半数以上を倒産にまで追いやったそうだ」
社長秘書「そんなに・・・ですか!?」
天狗寿司社長「あぁ、彼らはすごいよ 私が若い頃はただの迷惑行為だったバカッターをここまでのビジネスに持ち上げたんだから・・・」
〇豪華な社長室
数日後──
天狗寿司社長「「寿司次郎で客が迷惑行為動画投稿 犯人特定できず」か・・・」
天狗寿司社長「これで寿司次郎の株価も大暴落間違いなしだな!」
社長秘書「社長!大変です! 我が社のアルバイトが厨房で全裸になってあんな事やこんな事をする動画がSNSで拡散されてます!!」
天狗寿司社長「なっ、なにぃ〜〜〜〜!!!???」
現実の事件から未来の物語への昇華、お見事ですね!2050年に起こっていそうと思える絶妙のラインの設定にドキドキしたところでの、このオチがwww
「馬鹿と鋏は使いよう」と言いますが、このことわざをそのまま商売にする「潰し屋」のアイデアに感心してたら、社長の場合は「灯台下暗し」でしたね。現実社会の経営者とバカッターは、まだ当分の間イタチごっこが続くような気がします。