閻魔様はお客様です

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閻魔様はお客様です(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  ハロウィン。それは死者が復活する日
  海外ではそう言われているが、日本のハロウィンは違う
  日本では仮装をしてバカ騒ぎができる日。
  そんな風に認識されてしまっている。
  ここ渋谷もそうだ。ハロウィンには人が集まり犯罪が多発するようになった。
  バカ騒ぎするだけのハロウィン
萩原 祐「俺はそんなハロウィンが嫌いだ!」

〇おしゃれな受付
  俺はカラオケ店でアルバイトをしている
  店は渋谷センター街にある
  大学入学と同時にバイトを始め、気づいたら二年目になっていた
能登店長「萩原さん、ちょっといいかしら?」
  この渋谷店の店長、能登店長だ
萩原 祐「店長、どうしましたか?」
能登店長「606号室のお客様から電話があったのよ。萩原さん、悪いけど行ってくれるかしら?」
萩原 祐「オーダーの運搬ってことですか?」
能登店長「いいえ。電子目録の使い方がわからなくて来てほしいと仰っているわ。ただ新入りの南さんに任せるのは不安だから・・・」
萩原 祐(参ったな・・・)
萩原 祐(この雰囲気だとおそらく面倒な客なんだろうな・・・)
萩原 祐(断りたいけどここで断ったら、店長どう思うかな・・・)
萩原 祐「・・・わかりました。俺が行きます」
能登店長「ありがとう。助かるわ。宜しくね」

〇廊下の曲がり角
萩原 祐(つい引き受けてしまった・・・)
萩原 祐(けど、俺は能登店長の依頼は断れない)
萩原 祐(だって能登店長はめちゃめちゃ美人だから!)
萩原 祐(まあ、たしかにみんなが言うように無表情で、なに考えてるかわからないけど・・・)
萩原 祐(しかし、一体どんな客なんだろう・・・)
萩原 祐(これまでろくでもない客には何度か遭遇してきた・・・)
萩原 祐(それに今日はハロウィンだ。嫌な予感しかしない)
萩原 祐(これまで仮装の血糊で備品を汚したり、覆面をいいことに他の部屋に乱入するようなお客様がいた・・・)
萩原 祐(今回はそうじゃないといいけど・・・)

〇カラオケボックス(マイク等無し)
  606号室
萩原 祐「お客様、失礼致します」
骸骨男「ようやく来てくれたか、青年」
  え、なんだ!?コスプレ!?
  ハロウィンだからコスプレをしているのか?
  なんてクォリティ!本物みたいだ!
骸骨男「この機械の使い方がわからんのだ。すまんが、教えてくれるか?」
萩原 祐(電子目録だ。たしかに使い方を聞いてくる人は結構いる)
萩原 祐「これはですね・・・・・・」
  俺は謎の骸骨男に対して端末の説明を始める
骸骨女「あたし、アニソン歌いたい!」
  え、もうひとり骸骨がいる!?
骸骨女「あの妖怪アニメの歌あるじゃない?これにも入ってる?」
萩原 祐「それでしたら・・・この検索画面で・・・」
  俺は国民的妖怪アニメの主題歌を検索する。有名な曲なのですぐに見つかった
骸骨女「あった~!嬉しい!」
萩原 祐(国民的妖怪アニメの主題歌歌うなんてよっぽどの妖怪好きなのか・・・?)
骸骨男「この機械で料理も頼めると聞いたが本当か?」
萩原 祐「そうですね。このメニューのボタンからドリンクやフードをご注文できます」
河童「キュウリ料理はないのか?」
  河童!?特殊メイクすごっ!
萩原 祐「キュウリ料理でしたらサラダなどならございますが・・・」
萩原 祐(キャラ作りまで完璧だ・・・)
小豆洗い「わしゃ、小豆が食べたいのう」
萩原 祐(こっちも特殊メイクすごいなぁ。本物みたいだ・・・)
萩原 祐「小豆を使ったメニューでしたらデザートメニューに何種類かございます」
骸骨女「口裂け女さんはなにか食べる?頼むよ?」
口裂け女「・・・私はハニトーでいいです・・・」
萩原 祐(一体なんの集まりなんだ・・・?)
萩原 祐(コスプレ集団か?妖怪好きの集まりか?)
閻魔様「えー本日は私が主催しますオフ会に来ていただき誠にありがとうございます」
萩原 祐(え、オフ会?それに俺まだいるのに閻魔様が挨拶始めた!)
閻魔様「ありがたいことにこのオフ会もついに6回目も向かえました。みなさまのお陰です」
  部屋にいたものたちがみな一斉に拍手する
  そのあともお客様から質問責めにあい、俺はしばらく部屋を出られなくなってしまった

〇おしゃれな受付
  一時間後・・・
萩原 祐(ようやくお客様から解放された・・・)
萩原 祐(なぜかフロントが騒がしいぞ・・・?)
クレーム客(女性)「だから飲み物にプラスチック片が入ってたっていってんの!」
能登店長「キッチンでの衛生管理は徹底させております。けして、そのようなことは・・・」
クレーム客(男性)「俺らが嘘ついてるって言うのかよ! お客様は神様だろ!」
クレーム客(男性)「この店の一番偉いやつ連れてこいよ!」
能登店長「この店の責任者は私です」
クレーム客(男性)「女じゃ話にならねぇよ!責任者呼べって言ってんだよ!」
萩原 祐「お客様!失礼致します!」
能登店長「萩原さん!」
クレーム客(男性)「なんだよ・・・お前ただのバイトだろ?」
萩原 祐(たしかに俺はただのバイトだけど・・・)
閻魔様「一体なんの騒ぎだ?」
萩原 祐「えんま・・・お客様!」
閻魔様「厠に行くつもりが戻る部屋がわからなくなってしまってな・・・」
萩原 祐「お客様の部屋番号でしたら・・・」
クレーム客(女性)「なにそのコスプレださすぎ~うける!」
クレーム客(男性)「ほんといいおっさんがコスプレなんてな!」
閻魔様「先程の話は効かせてもらったが、お主ら嘘はついてないのだな?」
クレーム客(女性)「そ、そうに決まってるでしょ!」
クレーム客(男性)「外野が口挟んでくんじゃねぇよ!」
閻魔様「この大嘘尽きめ!許しておけん」
  閻魔様が怒鳴ると突然二人の男女が消えた
萩原 祐「消えた・・・?」
閻魔様「心配ない。地獄に送っただけだ・・・」
萩原 祐(いや、心配ありまくりでは?)
閻魔様「しかし、地獄に帰ったらまた残業だのう・・・」
萩原 祐「えっ?」
閻魔様「いやいや、独り言だ。わしは部屋に戻るぞ」
萩原 祐「よくわからないけど助けてくれてありがとうございました!」
閻魔様「色々と世話になった礼だ。気にするな」
  閻魔様は部屋へと消えていった
能登店長「助けてもらったみたいだけど不思議なお客様だったわね・・・」
萩原 祐「はい・・・」
  お客様は神様ではない
  それどころかお客様は閻魔様だった

コメント

  • オチがとっても綺麗でした✨
    確かに何にでも言いがかりつける人って
    少なからずいますよね💦
    彼の優しさが導いた結果なのだと思います😌

  • やっぱり本物だったのですね(笑)
    コスプレや特殊メイクだと思って対応しているのがジュールでおもしろかったです! ハロウィンの日にはこんなこともありそうだと思ってしまいました!

  • 妖怪たちがまさか渋谷でオフ会してるとは(笑)
    発想が面白くて、さらに面倒な客も一蹴してくれて、とても楽しく読ませていただきました!

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