エピソード1(脚本)
〇黒
美人薄命
美しい花には棘がある
〇けもの道
7/19
都内の山林で一人の若い男性の遺体が発見された
長谷川「こりゃあ」
長谷川「ひでぇ死に方だなぁ」
定年を控えたベテラン刑事の長谷川は
眉を顰めながら遺体を見つめる
寺島「長谷川刑事お疲れ様です」
長谷川「オゥお疲れさん」
寺島「被害者はどんな状況ですか?」
長谷川「聞くより直接見た方が早い」
長谷川は顎で目の前の遺体を指した
寺島「なっこれは一体!?」
遺体を見た寺島は一瞬にして顔が青ざめた
長谷川「なっ?惨い死に方だろ?」
寺島「これは想像を絶しますね」
長谷川「取り敢えず署に戻って捜査会議だな」
〇大会議室
署に戻った寺島と長谷川刑事は
捜査会議に出た
捜査会議には寺島たちを含めた
十数名の刑事が会議に参加していた
戸田「えー今から捜査会議を行う」
指揮を取るのは捜査部長の戸田
戸田「昨日都内の山林で男性の変死体が発見された」
戸田「捜査状況を長谷川刑事、報告してくれ」
長谷川「はい」
長谷川「被害者の身元は現在調査中ですが」
長谷川「死亡推定時刻は、昨日の午前3時頃~4時頃」
長谷川「被害者の体には無数の刺し傷がありました」
長谷川「恐らく死因は」
長谷川「失血死によるものだと思われます」
戸田「無数の刺し傷?凶器は刃物という事か?」
長谷川「いや刃物ではないかと・・・」
戸田「じゃあ一体何なんだ?」
長谷川「恐らく剣山みたいな尖った物だと思われます」
戸田「尖った物だと?」
室内にざわめきが起きる
長谷川「今の所分かってるのはこれだけです」
長谷川「引き続き捜査を行います」
戸田「よしっ分かった」
戸田「他の者も」
戸田「長谷川刑事の指示に従って捜査を進めてくれ」
戸田「会議は以上だ」
〇警察署の廊下
会議が終わり
寺島と長谷川刑事は部署に戻ろうとしていた
寺島「長谷川刑事。定年間近に」
寺島「厄介な事件引き受けちゃいましたね」
長谷川「その話なんだが」
長谷川「お前この事件引き継いでくんねーか?」
寺島「えっ俺がですか?」
寺島「何でいきなり?」
長谷川「実は周りには黙ってたんだが」
長谷川「ここん所体調が良くなくてな」
寺島「良くないって?」
長谷川「癌だよ」
長谷川「どうやら再発してるらしい」
寺島「そんなっ!?」
長谷川「だからお前に この事件を解決してほしいんだよ」
寺島「そう言われましても俺まだ新米ですし・・・」
長谷川「大丈夫」
長谷川「お前ならこの事件を解決出来る」
長谷川「確かにお前は新米だが」
長谷川「優れた考察力があると俺は思ってる」
寺島「いいえ考察力なんて俺にはないですよ」
長谷川「いや一緒にいた俺には分かる」
長谷川「お前は俺よりいい刑事になれるよ」
寺島「・・・」
長谷川「なぁに」
長谷川「すぐに辞めるわけじゃない」
長谷川「捜査に行き詰まったら」
長谷川「俺が手を貸すから」
長谷川「なっ?」
寺島「はっはい・・・」
こうして寺島は長谷川刑事から
この事件を引き継ぐ事となった
〇森の中
以前
捜査は難航を極め
寺島も長谷川も頭を抱えていた
〇大衆居酒屋
久し振りに居酒屋へ行く
寺島「はぁ」
寺島「あれから一ヶ月経とうとしてるのに」
寺島「何の手掛かりも無いですね」
長谷川「・・・そうだな」
寺島「事件当日は雨も降ってて」
寺島「足跡すら残ってなかったですし」
寺島「まぁ」
寺島「被害者の身元は特定出来てよかったですけど」
寺島「このまま未解決に終わるんでしょうか」
長谷川「いや」
長谷川「そんな事させちゃいけない」
長谷川「俺とお前で犯人捕まえんだよ」
寺島「ですが・・・」
長谷川「遺族の気持ちを考えろ」
長谷川「手掛かりが無いため」
長谷川「これ以上の捜査は出来ません」
長谷川「なんて言えねーだろ」
長谷川「酷い死に方されてんだ」
長谷川「泣いてただろ?」
長谷川「遺族だって俺達より 辛くて悲しい気持ちなんだ」
長谷川「時効までには、まだ十分時間はある」
長谷川「だから未解決なんかで終わらせちゃいけねえ」
寺島「そうですね何としてでも俺とハセさんで」
寺島「この事件解決してみせましょう」
長谷川「その意気だ」
長谷川「もっかい乾杯すっぞ」
〇飲み屋街
二人は再度酒を酌み交わした
〇渋谷のスクランブル交差点
8/23
PM20時
〇渋谷のスクランブル交差点
宮間 周平「あーっ」
宮間 周平「今日の合コンも駄目だったなぁ」
宮間 周平「俺達これで何回目だよ」
大学生の宮間周平は
いつものメンバーと合コンをしていた
清水 卓也「確か4・5回は惨敗してるかも」
宮間 周平「大体卓也が女の子が引くようなコト毎回 言うからこーなんだろ?」
宮間 周平「ちっとは学習しろよな?」
清水 卓也「わりぃ」
清水 卓也「次はそうならない様気を付けるからよ」
宮間 周平「あったりめーだ」
宮間 周平「次やったらお前メンバーから外すからなっ!?」
清水 卓也「分かったよ」
清水 卓也「じゃあまた明日学校でな」
宮間は清水と別れ
家に帰ろうとした
その時
「あの、すみません」
「今お時間ありますか?」
女が声を掛けてきた
宮間 周平「え?」
振り返ると、そこには
長い黒髪の綺麗な女性が立っていた
暫くその女に見蕩れていると
花「あの・・・」
再び女が声を掛けてくる
宮間 周平「あっごめん」
宮間 周平「時間だっけ?あるよ全然ある」
花「よかったぁ」
花「なら今から私と遊びませんか?」
花「暇してるんです」
宮間 周平「いいねぇ行こうよ」
宮間 周平「どこ行きたい?」
花「実は私ご飯まだなんです」
花「なので何処かでご飯食べたいなぁなんて」
宮間 周平「OK飯行こうよ」
宮間 周平「何なら俺奢るよ」
花「本当ですか?」
花「嬉しい有難うございます」
宮間 周平「で?何にする?俺は何でもいいよ」
花「いえ、そちらにお任せします」
宮間 周平「そう?じゃあ居酒屋でもいい?」
花「はい大丈夫です」
宮間 周平「なら、そうしよっか」
二人は居酒屋を目指し
夜の繁華街へと消えて行った
〇居酒屋の座敷席
居酒屋に着き
二人は肴や酒を飲み会話を楽しむ
宮間 周平「ところでさ」
宮間 周平「名前まだ聞いてないよね?」
宮間 周平「名前何て言うの?俺は宮間周平」
宮間 周平「年は22。大学生」
花「私の名前は花」
花「年は25です」
宮間 周平「へぇ花さんって言うんだ」
宮間 周平「いい名前だね」
宮間 周平「仕事は何してるの?」
花「実は私」
花「体が弱くて最近まで入院してたんです」
宮間 周平「じゃあ退院したばっかってこと?」
花「はい」
宮間 周平「そっか」
宮間 周平「体はもう大丈夫なの?」
花「ええ」
花「久し振りに外に出たら元気になりました」
宮間 周平「なら良かった」
宮間 周平「てか花さんの方が年上なのに」
宮間 周平「俺タメ語で話してたね」
花「いえ気にしないで下さい」
宮間 周平「花さんもタメ語で喋ろうよ」
宮間 周平「折角仲良くなれたんだしさ」
花「そうね」
宮間 周平「しっかし花さんって本当美人だね」
宮間 周平「しかもスンゲーいい匂いするし」
宮間 周平「何の香り?」
花「これはねジャスミンの香りよ」
花「宮間くん」
花「花には興味ある?」
宮間 周平「えっ」
宮間 周平「花?うーん」
宮間 周平「あんま興味ないかな」
宮間 周平「けど、こっちの花には興味あるよ?」
宮間は花の白くて細い手を握り締めた
花「宮間くん面白い事言うのね」
宮間 周平「いや本当の事だよ」
宮間 周平「俺、花さんの事色々知りたいなぁ」
宮間 周平「あんな事やこんな事」
宮間 周平「花さんは、彼氏いるの?」
花「ううん」
花「何か運命の人がいなくって」
宮間 周平「まじで?こんな綺麗なのに勿体無いなぁ」
花「本当?私そんなに綺麗なのかな」
花は照れ隠しをした
宮間 周平(ヤバッ照れた顔もチョー可愛いじゃん)
花「宮間くん?聞こえてる?」
宮間 周平「えっあぁ」
宮間 周平「花さんは本当に綺麗だよ」
宮間 周平「あれかな美しい花には棘がある様に」
宮間 周平「花さんに男性が近寄りがたいんだよ」
宮間 周平「あまりに綺麗すぎてさ」
花「そうなのね」
宮間 周平「そうそう」
宮間はビールを一気に飲み干した
花「ねぇ」
花「本当に私にトゲがあったらどうする?」
宮間 周平「えっ!?」
宮間は放り込んだ唐揚げを口から落とす
花「なんて冗談よ冗談」
宮間 周平「なんだ冗談かよ」
宮間 周平「花さんって見かけによらずイジワルだなぁ」
花「ほんとにごめんね」
宮間 周平「別にいいよ」
宮間 周平「それよりさ、この後どーする?」
花「さっき宮間くん」
花「私の事色々知りたいって言ってたよね?」
花「それは今でも変わらない?」
宮間 周平「勿論」
宮間 周平「だって折角仲良くなれたんだし」
花「嬉しい」
花「じゃあ」
花「今から私のお気に入りの場所、教えてあげる」
宮間 周平「お気に入りの場所?」
花「そうよ」
花「行ってみたくない?」
宮間 周平「いいね。それなら」
〇白
〇けもの道
PM11時
宮間は花と一緒に
山林に連れて来られた
宮間 周平「花さん」
宮間 周平「こんな所に何があるの?」
宮間 周平「ほんとに此処がお気に入りの場所?」
花「そんなに焦らないで」
花「もうすぐだから」
宮間 周平「でも・・・」
花に言われた通り
暫く無言で山林の中を歩く
〇森の中
「さぁ見えてきたわ」
女は林の中に咲いている
一輪の白い花に歩み寄った
花「宮間くん」
花「この花何て言うか知ってる?」
宮間 周平「えっ?そんなの分かんないよ」
花「この花は月下美人っていうの」
花「この花の言葉は」
花「艶やかな美人」
花「儚い恋なのよ」
宮間 周平「艶やかな美人?まるで花さんみたいじゃん」
花「ウフフそうかしら?」
花「でもね」
花「危険な快楽って意味もあるの」
宮間 周平「危険な快楽?」
宮間 周平「何かエキゾチックだね」
「宮間くん」
「ほら見て」
「上に綺麗な満月が出てるでしょう?」
花「ねぇ宮間くんは今」
花「恋と快楽どちらを選ぶ?」
宮間 周平「えっ」
宮間 周平「そりゃあ恋もいいけど」
宮間 周平「今なら快楽かな」
宮間は背後から女に近付く
花「そうなのね・・・」
宮間 周平「ひょっとして花さんも俺と同じ気持ち?」
宮間 周平「だからこんな所に連れて来たの?」
花「・・・」
宮間 周平「花さん?」
花「そろそろ時間ね」
花「宮間くん私」
花「ものすごく寒いの」
花「お願いだから抱き締めてくれない?」
宮間は女の発言に驚いたが
その顔はすぐにニヤつく顔になった
宮間 周平「あぁ勿論だよ」
宮間は花を優しく包み込む
花「もっと」
花「もっと強く抱き締めて」
「花さん好きだよ」
花の甘美な香りが
宮間の体に纏わり付く
その時
山林に宮間の声がこだました
〇黒
地の文にも引き込まれるものがあって、自然とストーリーに入り込んでいました。
そして、花さんのミステリアスな雰囲気。儚く、美しく、そして恐ろしい…
彼女を追い詰めるのは新米刑事には荷が重い気がしますが、そこはベテラン刑事との二人三脚で立ち向かっていくのでしょうか…
こんにちは!
最初から最後までとても面白かったです
間宮行くな行くな!と最初から思っていましたがやはり殺されてしまいましたか😭
え?死んだ、んですよね??
花のミステリアスさと月下美人がどのように絡んでいくのかとても楽しみです!
花さんの正体、目的が気になる一方で、キャラクター自体もとても引き付けるものがあるなーと感じました。彼女と警察側がいつどのように交わってくるのか楽しみです!