エピソード8 脱出(脚本)
〇海
ルドルフ「シロサキ、アサノ!こっちだ! うまく行ったようだな!」
アサノ(誰だ?)
シロサキ「ルドルフさん・・・ソムがまだ戦っているんです」
ルドルフ「そうなのか?お前さんたち、潜水艦の見張りを頼むよ!艦内には助け出した人たちも居るから安心させてやってくれ」
シロサキ「ルドルフさんは?」
ルドルフ「様子を見てくる・・・!」
ルドルフ「アサノ、だったか?その格好ならいざという時は守れるよな?」
アサノ「・・・もちろんです! えーと、あの・・・どちらさま?」
ルドルフ「俺はルドルフ・レーガン 歩く武器 の 妖精さん だ」
ルドルフ「おっと・・・そうだった! お前さんのカラスには助けられたよ!受け取れ」
アサノ「俺のスマホ・・・良かった! シロサキが拾ってくれたんだな?」
シロサキ「アサノくんのスマホ、カラスになって色々助けてくれたのよ!」
アサノ「やっぱりクロウモードは隠密行動向けだな!カッコイイだろ?」
シロサキ(でもなんで?アサノくんの妄想だけ具現化したの?私のは何も起こらないのにズルくない?)
ルドルフ「それじゃ、行ってくるから ここは任せたぜ!」
いつの間にか着替えて棺桶を背負って出てきたルドルフを見てアサノは目を輝かせる。
アサノ「か、かっけー・・・」
ルドルフ「ありがとよ」
シロサキ「もー!アサノくんしっかりして!」
アサノ「分かってるよ!」
〇研究施設の廊下
ルドルフ(監視カメラは化かしてあるし、堂々と乗り込みますか!)
ルドルフ(見るからに怪しい研究所だな・・・)
〇研究施設の廊下(曲がり角)
その頃、地図も何も持っていないレイベルは白い廊下で迷子になっていた。
レイベル「はあ、はあ・・・」
レイベル(あいつは何処に・・・?)
レイベル(身体に力が入らなくて動けなくなってきた・・・)
邪神イヴル・レーヴァ(お前が捕まえた獲物を逃がすからだ・・・)
レイベル「ふざけんなよ! 人は食べたくない!」
邪神イヴル・レーヴァ(もうお前は人ではないのだ・・・あの赤いやつを見つけたら喰い殺すつもりだったのだろう?)
レイベル「そうだよ・・・なんでそんな考えが普通に浮かんじまうんだ・・・自分が怖いよ・・・」
レイベル(俺が誰かを喰い殺す前に、誰か俺を倒してくれ・・・)
レイベルの望みを聞いていたかのようにグレネード弾がレイベルの背中に命中した。
レイベル「ぐっ! 熱ッ・・・・・」
ルドルフ(あいつは・・・? この研究所で作られたキメラ生物か?)
レイベル「誰かは知らないけど、もっと強い武器じゃないと俺は殺せないみたいだよ・・・」
レイベルの傷がルドルフの目の前で再生していく。
ルドルフ「そうか、・・・こっちのほうが良かったか?」
ルドルフは棺桶を開いて手を突っ込むとロケットランチャーを作り出した。
ルドルフ「最後に言いたいことはあるか?」
レイベル「アサノによろしく・・・」
ルドルフ(アサノの知り合い・・・助けるべきか?)
レイベル「やるなら早くしろ・・・」
ルドルフ「助けられなくてすまない・・・」
レイベル「・・・・・・・・・!」
レイベル「いい 早く、撃て」
ルドルフは悲しげな顔でロケットランチャーを撃ち込んだ。
ルドルフ「・・・・・・・・・」
〇地下実験室
第二実験室──
キール「しまった・・・遊びすぎたか!」
監視カメラは騙せても爆発音は騙せない。
キールは感づいて実験室から出ていった。
ソムもその後を追う。
〇研究施設の廊下(曲がり角)
ルドルフ(あの再生能力を見たからには、これぐらい撃たないと倒せない、とは思ったがやり過ぎたか・・・)
佇んでいるルドルフの元へキールとソムが走ってきた。
キール「はあ・・・はあ・・・ 遅かったですか・・・」
キール「彼は邪神と融合した成功体だったのに・・・あなた容赦ないですね・・・」
ルドルフ「一人の人間の人生をめちゃくちゃにしておいて、お前は・・・何も感じないのか?」
ソム「・・・・・・」
キール「実験体の人間への感情? 興味ないね」
ルドルフ「なんてやつだ・・・擬人種の恥だな」
キール「なんとでも言えばいいですよ」
ルドルフ「俺たちの目的は達成した・・・ 今日のところはこれで失礼する! 行くぞ、ソム・・・」
ソム「もう、ここに用はない、か・・・」
キール(あの二人も面白そうなんですけどね・・・)
〇海
ルドルフ「なあ、ソム・・・お前さんにも感情は無いのか?」
ソム「ああ・・・」
ソム「俺の両腕にはクジャンテ・チェギナーという神器が埋め込まれている・・・おそらくそれのせいだ」
ルドルフ「神器・・・?まるで呪いだな・・・」
ソム「そうかもしれないな・・・」
シロサキ「あっ! 帰ってきた!」
シロサキ「ルドルフさん!ソム〜! 無事で良かった・・・」
ルドルフ「ただいま!」
ソム「俺は強い、心配無用だと言っただろう?」
シロサキ「分かってるけど、ちゃんと帰ってきてくれて良かった〜」
ルドルフ「さて、皆揃ったし帰ろうか・・・ アルディナ国へ!」
〇潜水艦
アサノ「シロサキから色々聞きました! 助けに来てくれてありがとうございました!」
ルドルフ「ああ、どういたしまして それにしても、別の世界から来てすぐ誘拐されるなんて災難だったな・・・」
アサノ「ハハハ・・・ほんとそれっすよ・・・」
シロサキ「ホント、大変だったんだからね!」
シロサキ(助けられてばかりの旅だったな・・・ 帰ったらたくさんお礼言わなきゃ・・・)
シロサキ「ルドルフさん、ソム、ほんとにありがとう!」
ルドルフ「力になれて良かったよ」
ソム「ああ、・・・そうだな」
アサノ「ルドルフさん・・・ 研究所に行った時に人と蛇が融合した怪物と会いませんでした?」
アサノ「俺の知り合いなんですけど・・・」
ルドルフ「ああ、会ったよ・・・」
ルドルフ「俺がとどめを刺した・・・ 彼もそれを望んでいた」
アサノ「そう・・・ですか・・・」
アサノ「あいつ、出会った時から臆病で、本当はすごく怖かったんだろうなって・・・思うと・・・」
アサノ「やっぱ、つれえわ・・・」
ルドルフ「・・・・・・」
ルドルフはアサノの肩にそっと手を乗せた。