恋より甘き友

RARUΩ

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〇文化祭をしている学校
  彼女たちは同じ男に恋をした。出会う時期は違えど、愛する気持ちだけは同じだった
  三人に優劣は全くなく、誰もが自分を選んでくれると思い続け恋した日々はとても甘美で
  心地のいいものだったのだが・・・そんなある日、突然それは終わった。
  男が一人の女を選んだことで終わりを告げた。
  男に選ばれなかった二人は、悲しみに打ちひしがれたが、まだチャンスはあると諦めきれなかった。
  しかし、それからしばらく経ったある日の事。

〇渋谷駅前
  街中で偶然見てしまったのだ。男の隣にはその女性の姿があったことを・・・・・・。
  その光景を見た瞬間、二人の心は何かが壊れる音が聞こえてきたような気がして何も考えられなくなってしまった。
  そして二人は悟ったのだ。もうあの男は自分たちの元に戻ってこないということを・・・・・・。
  それからというものの、彼女達は脱け殻のように生き続けていた。何をするにも無気力で生きる意味を見出だせない。
  そんな時だった。彼女達は・・・・・・

〇車内
  女二人で傷心旅行に来ていたのだ。
  どうして行くことになったのかもわからない仲良くもない二人だったが、それでもお互いを支えあうようにして旅を続けていた。
星崎葵「(気まずいわね)」
星乃翠「(気まずいわね)」
  二人は同じ事を思っていた。そして、同時にため息をつくとまた沈黙が流れる。
「ねぇ」
  すると、二人の声が重なった。二人は顔を合わせると苦笑いを浮かべながら口を開いた。
星崎葵「あなたからどうぞ」
星乃翠「いえ、あなたこそ」
  譲り合いながらも二人は言い出したら聞かない性格の為二人は睨み付け合うように見つめ合っていた。
  だが、このままでは話が進まないと思ったのか、片方の女が話し始めた。
星崎葵「じゃあ、私から聞くわよ?それで良い?」
  そう聞くと、もう片方の女は静かにうなずいた。それを確認すると彼女はゆっくりと深呼吸をして
星崎葵「ずっと知りたかったんだけど・・・あなたは何時からアイツの事好きだったの?」
星乃翠「私は中学1年の頃かな。一目惚れってやつよ・・・助けられてね」
  星崎の質問に答えるように答えた。
星崎葵「そう。私は幼稚園からよ・・・馬鹿な男の子の中で唯一マセてて優しくしてくれたのよ・・・・・・」
星乃翠「アイツは変わらないのね。昔から誰よりも優しかったんだよね。だから・・・」
  星乃は言葉をやめてうつむく。そして
星乃翠「ねぇ星崎さん、あなたは納得行ってるのかしら?一番先に好きになったのに」
星崎葵「仕方がないわ・・・彼が選んだことよ」
星乃翠「私は嫌よ・・・」
  星乃は泣きそうな声で言った。そんな彼女に星崎は
星崎葵「星乃さん・・・」
  抱き締める。星乃は抵抗することなくただされるがままにされていた。
  しばらくそのままでいると、抱き締め返してきて、星崎は少し驚いた表情をしながらも受け入れ抱き締める力を強くした。
星崎葵「ごめんなさい、いきなりこんなことをして・・・・・・」
星乃翠「大丈夫よ、気にしないで。それに・・・・・・私も同じ気持ちだから」
星崎葵「ありがとう・・・・・・でも、まさかあなたとこんな事をするとは思わなかった。だって、今まで一度も接点がなかったもの」
星乃翠「私も、正直戸惑っているわ。けど・・・ありがとう・・・・・・少し落ち着いたわ」
星崎葵「えぇ、こちらこそごめんなさい。でも、この気持ちだけはどうしても抑えられなくて・・・・・・」
星乃翠「わかるわよ。私も同じ気持ちですもの」
  二人は目を合わせて微笑むと、どちらからともなく離れた。でないとこのままだと危なかった
  双方共にそんな趣向はないが、唇でも重ねてしまいそうになっていたからだ。
  離れると、二人は照れ臭くなったのか目をそらした。
星乃翠「さぁ行きましょうか」
星崎葵「そ、そうね。早くしないと暗くなっちゃうからね」
  二人はサービスエリアから
  出ると目的地へと向かった。

〇足湯
  二人が向かった先は、有名な温泉宿だった。

〇旅館の受付
仲居「!?・・・んん・・・いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
  中に入ると、仲居さんが出迎えた。頬に口紅の後や口元が乱れているのが気になるが
  二人は荷物を預けて部屋へと案内される。
仲居「お客様、本日は当旅館をお選び頂き誠に有難う御座います。当館自慢のお風呂がございますので是非とも堪能なさってください」
  仲居さんが丁寧に頭を下げながら説明すると二人は部屋に通された。

〇広い和室
  そこは広く、とても落ち着ける場所だった。
星崎葵「凄いわね、結構良いところね」
星乃翠「そうね。こんなところに泊まれるなんて思いもしなかったわ」
星崎葵「まぁ、せっかくだし楽しみましょうか」
星乃翠「えぇ、そうね」
  二人は景色を眺めたりしながら寛いでいた。そして景色を見て綺麗な黒髪を遊ばせている星崎を見つめる星乃は
星乃翠「(そう言えば中学校から星崎さんとはいるけど・・・アイツがいないと会話もろくにしたことないかも)」
  ふと、星乃はそんなことを考えていた。星乃にとって星崎は恋敵ではあったが、特にこれといった接点はなかった。
  その為、彼女が何を考え、どんな人間なのかも全く知らなかったのだ。
星崎葵「どうかしたの?」
  考え事をしていたせいでボーッとしていた星乃に話しかけてきた。
星乃翠「いえ、何でもないわ。でも・・・あ!そうだわ」
星乃翠「それより星崎さんって高校の時、部活何してたの?私はアイツを追いかけるのに必死だったから何もやってないんだけどね」
星崎葵「私?私は弓道部に入ってたわよ」
星乃翠「へー意外ね。あなたがそういうスポーツやるイメージ無かったから」
星崎葵「失礼ね、こう見えても高校では全国大会準優勝まで行ったんだから」
星乃翠「それは凄いわね。もしかして今も続けてたりするの?」
星崎葵「いいえ、もう辞めてるわよ。あの頃の熱量はとうに冷めてしまったの」
星乃翠「そう・・・・・・残念だわ。あなたの射つ姿はとても綺麗だと思うから」

〇神社の出店
珍小万小「それにしても君が弓道する姿は綺麗だね」
星崎葵「見ていてくれるから・・・だから君さえよかったらずっと見ていてほしい・・・」
珍小万小「・・・重いな」
星崎葵「?」

〇広い和室
星崎葵「ありがとう。でも、今は・・・彼の事を思いだしたくないから・・・・・・」
星乃翠「そうね・・・ごめんね・・・」
星乃翠「(あれ何で私・・・イラってしたのかしら?何か・・・嫌な感じがする・・・まるで嫉妬しているような・・・・・・そんな・・・)」
  そこまで考えて
星崎葵「どうしたの?」
  急に黙った彼女に心配そうに聞く。
星乃翠「いえ、何でもないわよ」
  星乃は笑顔を作って誤魔化した。
  それから二人は夕食の時間までゆっくりと過ごした。しばらくすると、夕食の時間になり料理が運ばれてくる。
  豪華な食事が次々と運ばれてくる。どれも美味しく、二人は満足だった。
  そして、最後にデザートを食べて、見た目も良く、味も最高で二人は満足していた。食事が終わると
星乃翠「時間あるみたいだけどどうする?」
星崎葵「そうね、とりあえず温泉に入りたいかも」
星乃翠「賛成!入りに行きましょう!」

〇銭湯の脱衣所
  二人は着替えを持って大浴場に向かった。
  脱衣場に着くと、そこには誰もいなかった。貸切状態で二人は服を脱ぎ始めた。
  お互いの裸を見て一瞬固まる二人、二人の身体は似ていた。身長も体重も同じである。
  胸の大きさもあまり変わらない。互いの肉体の綺麗さに思わず見惚れてしまう二人。
  すぐに我に帰ると急いでタオルを巻き付けた。
  そして、そのまま浴室に入ったのだが・・・・・・。

〇露天風呂
  そこでも二人は固まった。なぜなら二人きりで二人は気まずい雰囲気の中、隣同士で座れば良い筈だが・・・
  同じ所に座ってしまったからだ。
「・・・・・・」
  互いに無言のまま、時間が過ぎていく。二人は意を決して向かい合って互いに抱きついてシャワーを浴びた。
「((やばい、恥ずかしすぎる!))」
  二人は心の中で思っていた。そして、そのまま洗いっこをして何故かしばらく抱き締め合ったままでいた。
星乃翠「(星崎さんの身体気持ちいい)」
星崎葵「(星乃さんの身体・・・あいつよりも良い)」
  互いにお互い似た身体をぶつけ合うかのように密着させていた。 
  そして髪を洗おうとし
星崎葵「あ、シャンプー同じなんだ」
星乃翠「そうみたいね・・・んっ・・・・・・ちょっと・・・・・・」
  星乃が声を上げると、星崎は彼女の耳元に息を吹き掛けた。
星崎葵「ごめんなさい、つい可愛くて・・・・・・」
  星乃は顔を真っ赤にして星崎を睨み付ける。
星崎葵「そんな顔しないでよ。可愛いわね」
星乃翠「うるさい、早く洗うわよ」
星崎葵「はいはい、わかりました」
  二人は身体を洗い終わると湯船に浸かった。
星乃翠「「ねぇ、一つ聞いても良いかしら?」
  星乃は星崎に問いかける。
星崎葵「何?」
星乃翠「あなたとアイツの関係よ。どうして告白しなかったのよ」
星崎葵「・・・したわよ・・・小学校の卒業式の時、そして中学校の入学式の時も・・・でも、彼は私の気持ちには答えてくれなかったのよ」
星乃翠「そう・・・なのね。知らなかったわ・・・でもさ、あなたとアイツなら上手くいきそうだったけどな」
星崎葵「無理よ。だってまだ時じゃないなんて言ってはぐらかす奴よ。それに、他に好きな人がいたんでしょアイツには」
星乃翠「そうかしら?」
星崎葵「さぁ?」
星崎葵「他に好きな人・・・」
  星崎は星乃に顔を近づけながら
星崎葵「あなたかしら?」
星乃翠「えぇ。それは私も同じなんだけどな」
  星乃も顔を近づけ
「あの時・・・どっちが好きだったんだろうね」
星乃翠「でも私が奪えそうとも思えたのよ」
星崎葵「知ってるわよ。あなたはずっと彼を見ていたものね」
星乃翠「そうよ、悪い?」
  星崎の額に自らの額を重ねる星乃
星崎葵「別に、私も一緒だから・・・」
星乃翠「そう・・・」
  二人はお互いに見つめ合い、微笑み合うとどちらともなくキスしそうになり慌てて離れた。
  互いの綺麗な黒髪を重ねて背中合わせになる・・・互いの顔が恥ずかしくて見れない・・・
  互いの髪が吸い付くように絡み・・・
  そして、また二人は向き合うように座り直すと今度は抱き締めあった。
「((柔らかい・・・・・・それに・・・・・・良い匂い・・・・・・なんかクラっとしてきた・・・・・・」
「けど・・・・・・幸せ・・・・・・このままずっと・・・・・・いられたら・・・・・・))」
  二人はそんなことを思いながらも、これ以上はまずいと離れた。
星崎葵「星乃さんの身体・・・気持ち良いわ・・・・・・」
星乃翠「あ、ありがとう・・・・・・でも、星崎さんも気持ち良かったわよ・・・・・・」
  そんなことを言いながら二人は微笑む。彼と抱き合うよりも気持ちよくて
  自分の気持ちがわからなくなる二人は身体がのぼせそうになり

〇銭湯の脱衣所
  温泉から出ると身体を拭くとまた抱きつけば抱きついてきてまた抱き締め合ったりしながら浴衣を着た。

〇広い和室
  その後、部屋に戻ると・・・
星乃翠「・・・改めてあんたの顔見ていると・・・私達双子みたいね」
星崎葵「そうね。本当にそっくりよね私達」
  頬と頬を重ね鏡を見る二人
  二人の顔は全く同じだった初めて会った時は・・・まるで自分同士だと思った程に。
  だから互いに嫌悪し合い、喧嘩した。そして、嫌い合っていた。
  だけど今は違う。星乃の身体を抱き寄せて、優しく頭を撫でると
  星乃は嬉しそうに目を細める。その表情もまた星崎と瓜二つだった。
  そして、二人は一緒にベッドに横になると

〇広い和室
星乃翠「ねぇ・・・・・・今日は・・・・・・一緒に寝ない?」
  星乃は勇気を振り絞って言った。
星崎葵「えぇ・・・・・・私もそう思ってたわ・・・・・・」
  星崎も答えた。二人は同じ布団に入ると電気を消すと真っ暗になった。
星崎葵「星乃さん・・・・・・抱きついていいかしら?」
星乃翠「いいわよ・・・・・・私も・・・・・・抱きしめたいの・・・」
  二人は抱きつくと肌の温もりを感じ、安心感に包まれていた。二人は抱き合ったまま眠りについた。

〇広い和室
「ん・・・」
  身体に感じる温もりに目を見開く自分と同じ顔が密着して自分を見ていた。
  朝になり目が覚めた二人は、しばらくボーッとしていた。昨夜の事を思い出して、二人とも顔を赤くする。
星崎葵「お、おはよう星乃さん」
星乃翠「え、えぇ、おはよう星崎さん」
  二人はぎこちなく挨拶を交わすと、朝食を食べるために準備を始めた。歯磨きや色々やって・・・すると
星崎葵「あら、その香水いい香りね」
星乃翠「あなたと同じ香水よ」
星崎葵「・・・あら、いつもつけている香水じゃないのね」
星乃翠「ええ・・・そうよ大学であなたといるようになってから変えたのよ気づいていなかったのかしら?」
「・・・・・・」
  気づけば星乃は目の前まで来ていて抱きついてきた
  ふわりと香る香りに
星乃翠「(やっぱり、この人の匂いが一番好きだわ・・・・・・落ち着く・・・・・・)」
星崎葵「(ここまで同じなんて・・・)」
  違いを見つけようとしていた星乃がここまで同じになってくるなんて
星乃翠「!?・・・」
星乃翠「良いよ」
  星乃を押し倒した星崎は額を重ね・・・
星崎葵「・・・・・・ねぇ私ってさキスするよりもされるのが好きなの」

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コメント

  • 同じ男性を好きになったという事実は、どこかしら2人の間に外見だけでない共通点があるのかもしれませんね。鏡の中の自分を相手に見ているような。

  • 最初に瓜二つの星乃さんと星崎さんを見た瞬間に、「これはドッペルキスシリーズでは?」と思ったらやっぱり。旅館の仲居さんまで瓜二つでドッペルキスしてましたね。作者さんに別のモチーフの作品があるのかどうか、逆に興味が湧いてきました。

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