最終話(脚本)
〇幻想
数日後・・・とある配信ルームを一人の男性が立てる
彼は深呼吸をし、配信をスタートさせた
シンゴ「はじめまして、ここは僕の放送室です」
シンゴ「僕の名前はシンゴと言います」
シンゴ「これから皆さんに聞いてもらいたいことがあるんです」
シンゴ「僕は自分の事が嫌いでした」
シンゴ「身体が弱いからろくに動く事も出来ないし、何もする気力がなくて嫌な事ばかり考えてしまう」
シンゴ「体力もないから手術なんて上手くいかないんだって、どうせなら楽に死にたいなってそんな事ばかり考えてしまう日々でした」
シンゴ「でも、それは間違っていたんです」
シンゴ「ある配信を聴いたんです。その時は目も見えなくなっていて・・・配信なら何か気晴らしになるかなって軽い気持ちだったんです」
シンゴ「その配信では女の人が歌をうたっていて・・・聴いた瞬間驚いたんです」
シンゴ「心と身体が満たされるような幸福感の後に僕の目が見えるようになったんです」
シンゴ「本当は目なんて見えてなかったんですけど・・・・・・僕の心の目には、一目惚れした一人の歌姫が映っていました」
シンゴ「それから僕の人生が変わりました」
シンゴ「まだこんなに楽しいことがあったんだって。僕は何も知らなかっただけだったんだって」
シンゴ「だからまた生きたいと思うようになったんです」
シンゴ「そんな事が自分に起きるなんて思ってもみませんでした」
シンゴ「そして僕は・・・・・・絶対にやりたくなかった手術を受ける事にしたんです」
シンゴ「手術は失敗する確率の方が高くて、失敗すれば死んでしまうかもしれなかった」
シンゴ「でも僕は信じていたんです。手術は必ず成功するって・・・・・・成功して僕はもっと生きるんだって」
シンゴ「そしたら僕の大好きな人が手術前、最後に応援に来てくれました」
シンゴ「僕は思ったんです」
シンゴ「この世界は辛いことや苦しいことに溢れています」
シンゴ「その中で希望持って生きるなんて残酷な事だと思います。だってみんな必死なんです。必死に生きています」
シンゴ「でも・・・・・・だからこそ最後まで、何が起こるかなんて分からないんです」
シンゴ「僕はただ単に運が良かったのかもしれない」
シンゴ「彼女に出会えたのも、手術が成功したのも偶然だったのかもしれない」
シンゴ「でもその出会いが僕を変えた・・・・・・それは間違いありません」
シンゴ「だから僕も・・・・・・僕の声がいつか誰かを救うきっかけになればとそう思っています」
シンゴ「今はもういなくなってしまったんですが・・・・・・僕の大切な人から学んだ事です」
シンゴ「それでは今日は短いですがこれで、失礼しますね」
シンゴ「また明日」
〇病室
シンゴ「(僕はひとしきり喋り終えて、一息つく)」
シンゴ「(病室から窓の外をみると、青空が広がっていた)」
シンゴ「(まだ上手く身体は動かせないけど、今日は調子がいいんだ)」
シンゴ「(だから明日もきっと調子がいいはずだ・・・・・・だって)」
シンゴ「僕の中でアイさんはずっと生き続けるんだから」
心打つラストですね!
アイさんの結末は示されていないですが、彼女の存在と意思はシンゴさんの心にちゃんとあり続けているのですね。
ステキなお話をありがとうございました