とある並行世界のサンタクロース

太陽を掴んでしまった男

とある並行世界のサンタクロース(脚本)

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〇中規模マンション
  2021年12月24日──

〇おしゃれなリビング
  テレビを見ながら朝食を食べている
  芝友晴(42)と芝光希(10)。
  テレビではニュースが流れている。
「今日12月24日はみなさんご存知の通り、 クリスマスイヴであるとともに・・・」
「30年前にサンタクロース禁止法が発令された記念の年でもあります」
芝友晴「・・・光希、分かってるな?」
芝光希「うん、大丈夫 みんなの話に適当に合わせとく」
  窓辺に大きな赤い靴下が
  吊るされている。

〇学校の校舎
  ○○小学校──

〇教室
  教壇に若林久美(32)が立ち、
  授業が行われている。
若林久美「ニュースでもやってたけど、 30年前の今日にとっても大事な法律が決まりました。何でしょうか?」
「サンタクロース禁止法です!」
若林久美「正解です それじゃあ、どうしてこの法律が出されたか知ってる人はいるかな?」
  生徒たちが次々に手を挙げる。
  光希も周りの生徒に合わせて手を挙げる。
若林久美「じゃあ・・・、芝さん」
  立ち上がる光希。
芝光希「サンタクロースが考える「良い子」という考え方が子供の個性を伸長を阻害し、画一化を助長するとして危険視されたからです」
若林久美「・・・・・・」
芝光希「・・・また、サンタクロースからモノが与えられるという点も、子供の自立心や競争心を減衰させるものとして懸念されました」
若林久美「・・・芝さん、パーフェクトです みんな拍手を」
  拍手をする生徒たち
  光希を見ている久美。

〇マンションの非常階段
  電話をしている久美
若林久美「・・・1名怪しい生徒がいます」
若林久美「・・・はい、サンタクロース信者の可能性があります」

〇大学の広場
  ○○大学──

〇学校の廊下
  歩いている芝。
  窓の外から騒ぎ声が聞こえてくる。
芝友晴「・・・?」
  窓の外を見る芝
芝友晴「・・・!?」
  サンタの仮装をした男が複数の警備員に取り押さえられている。
「離せっ! 子供達にプレゼントを、 希望を届けに行くんだー!」
芝友晴「・・・・・・」

〇川に架かる橋
  歩いている長谷川隆(50)。
長谷川隆「禁止法に関して饒舌に話す小学生ねぇ・・・」
長谷川隆「・・・まぁとりあえずさっさと終わらせて一杯やりたいとこだ」
  スマホの着信音。
  電話に出る長谷川。
長谷川隆「長谷川だ ・・・うん、なるほどな ・・・分かった、ご苦労さん」

〇おしゃれなリビング
  夕飯を食べている芝と光希。
  インターホンの音。
芝友晴「・・・光希、 念の為靴下を隠しておいてくれ」
芝光希「うん、わかった」
  立ち上がる2人。

〇おしゃれな玄関
  芝がドアを開けると、
  長谷川が顔を見せる。
長谷川隆「夜分遅くにすみません。 私こういうものです」
  長谷川、警察手帳を芝に見せる。
芝友晴「・・・!? 今日来たということは・・・」
長谷川隆「話が早くて助かります お察しの通り公安のものです」
芝友晴「・・・ご苦労様です」
長谷川隆「さっさと済ませたいのはお互い様だと思うので、このチェーン外してもらえますか?」

〇おしゃれなリビング
  窓辺から靴下が消えている。
  芝と長谷川がやってくる。
  部屋中をぐるりと見回す長谷川。
長谷川隆「ほ〜綺麗にされてますな」
芝友晴「夕飯の途中なんです 手短にお願いできますか?」
長谷川隆「これは失敬 おっ君が光希ちゃんだね こんばんは」
芝光希「・・・こんばんは」
長谷川隆「今日は学校関係者から連絡がありまして、 伺わさせて頂きました」
長谷川隆「光希ちゃん、 サンタクロース禁止法について随分詳しく知ってるみたいだね」
芝光希「あの・・・」
芝友晴「大事な法律なのでよく教えてありますから、それでだと思います」
長谷川隆「大事な法律ね・・・ 確かにそうですな・・・」
長谷川隆「・・・・・・」
長谷川隆「・・・まどろっこしいな」
芝友晴「・・・はい?」
長谷川隆「靴下を見せてもらえますか?」
芝友晴「靴下?」
長谷川隆「えぇ少し前にネットスーパーで大きなサイズのものを買われてますよね」
芝友晴「!?」
長谷川隆「それが確認できれば、 私も胸を張って上司に報告できます 芝さんはサンタクロース信者ではなかったと」
芝友晴「・・・わかりました 少しお待ちください」
芝光希「・・・・・・」
  リビングから出て行く芝。

〇本棚のある部屋
芝友晴「ウチのことが調べ上げられてる・・・」
芝友晴「どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする・・・」
  頭を抱える芝。

〇おしゃれなリビング
芝光希「・・・・・・」
長谷川隆「・・・・・・」
芝友晴「・・・お待たせしました」
  芝は手に何も持っていない。
芝友晴「すみません どこかになくしたか、気付かない内に捨ててしまったようで・・・」
長谷川隆「なーるほど・・・ 私の権限で今この時点からこの家は警察の管轄下に入りました」
芝友晴「・・・・・・」
長谷川隆「時間をかけて家中を調べさせてもらって、 お二人がここに戻ってこれるかどうかはその結果次第ってことになります」
芝光希「・・・わ、私、知ってます」
芝友晴「!?」
長谷川隆「うん?」
芝光希「・・・靴下がどこにあるか知ってます」
芝友晴「光希!」
  リビングから出て行く光希。
長谷川隆「・・・・・・」
芝友晴「・・・・・・」
  光希が戻ってくる。
芝光希「・・・これです」
  震える光希の手には
  小さな靴下が握られている
長谷川隆「・・・・・・」
  光希の目には涙が滲んでいる。
芝友晴「すみません、どうか・・・」
長谷川隆「・・・おーこれですよ 私が報告で聞いてた靴下は」
芝友晴「え!?」
長谷川隆「食事中に どうもすみませんでしたね」
長谷川隆「光希ちゃんもごめんな」
芝光希「・・・・・・」
長谷川隆「それじゃあ おいとまします」

〇おしゃれな玄関
  歩いてくる芝と長谷川。
  長谷川、芝の胸ぐらを掴み、
  耳元で囁く。
長谷川隆「あんたにも大義名分があるんだろうが、 小さな女の子にあんな顔させてまで貫くほどのもんかい?」
芝友晴「・・・・・・」
長谷川隆「今日はあの子の勇気に免じて帰るが、 ・・・次は容赦しない」
  芝を突き飛ばし、出て行く長谷川。
  頭を抱えてしゃがみ込む芝。
  赤い靴下を手に、光希がやってくる。
芝光希「お父さん、良かったね」
芝友晴「・・・光希」
  光希を抱きしめる芝。

コメント

  • 異教徒の魔女狩りを彷彿とさせるようなスリルとサスペンス でした。いったい何のための誰のための法律なのか本来の意義を完全に見失っている法律って我々のいる並行世界にもたくさんありますね。

  • 禁止して子どもの能力が上がるかは、また別問題ですよね。
    会話の掛け合いのリズムが良くて、一気に読めました。
    でも、最後は何ともなくてよかったなぁ…と。

  • サンタクロース禁止法があって、サンタ信者が悪者だなんて、子どもたちはクリスマスが楽しくなくなっちゃいますね。やっぱりサンタさんはいてほしいな〜!

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