読切(脚本)
〇勉強机のある部屋
夜。
動画を見ているカズマ。
「残業代未払い、 休日出勤、 現代日本のブラック企業。 今後どう改善されていくのか・・・」
カズマ「ブラック企業って言うのか 良くないな、こういうの」
カズマ「もうこんな時間か、 そろそろ寝ないと」
〇勉強机のある部屋
「ぐー、ぐー」
「・・・」
ガタガタ、ゴトン!
「なんだ!?」
〇勉強机のある部屋
カズマ「人?」
カズマ「おじさん誰っ?」
おじさん「いや、怪しい者じゃなくて」
カズマ「じー」
おじさん「ごめん、もう出て行くから! 痛! 足が」
カズマ「ねえ」
おじさん「別にやましいことは」
カズマ「おじさんもしかして・・・」
カズマ「サンタ?」
〇クリスマスツリーのある広場
12月24日
〇イルミネーションのある通り
そう、今日はクリスマスイヴ。
12時を回るか、回らないか。
そんな頃。
〇勉強机のある部屋
おじさん「いったい俺のどこがサンタに見えるんだっ!?」
カズマ「クリスマスにやってくるおじさんなんて、 サンタか、間抜けな泥棒か、 相場が決まってるでしょ」
カズマ「おじさんは泥棒っぽくないし」
カズマ「もしサンタじゃないなら、泥棒ってことで通報しちゃうよ」
カズマ「住居侵入なら3年以下の懲役もしくは罰金、 窃盗なら10年以下の懲役もしくは罰金、 だね」
おじさん「わ、分かった 白状する! 君の言う通りサンタだっ! ああ、なんてミスを・・・」
カズマ「証明できる?」
カズマ「おお!」
おじさん「制服持っててよかった」
〇勉強机のある部屋
現代のサンタは、
僕達が思い描いている姿とは、
かなり違うらしい。
サンタは沢山いるようだ。
大きな会社だったり、
個人だったり。
おじさん「サンタで驚いた?」
カズマ「別に。 そもそもクリスマスは好きじゃない、 プレゼントだっていらない」
おじさん「寂しいな・・・ ってか、親御さん起きてこないよな」
カズマ「大丈夫、父さんも母さんも仕事で家にいないから」
おじさん「クリスマスなのに」
カズマ「会社経営してるからね 年末は忙しいんだって」
おじさん「へえ」
カズマ「だから小さい頃からいつもクリぼっちだよ」
おじさん「(それで、クリスマスが嫌いなのかな)」
おじさん「そろそろ行かなきゃ まだ沢山運ばなきゃいけないんだ」
カズマ「頑張ってね」
おじさん「うん・・・。 痛っ!」
カズマ「大丈夫?」
おじさん「挫いたみたいで」
カズマ「病院いけば?」
おじさん「そんな余裕はないよ」
着信音
おじさん「はい」
カズマ「電話の向こう、怒鳴り声?」
おじさん「はい!すいません!急ぎます!」
電話終わり
カズマ「上司?サンタの?」
おじさん「うん。 俺はあんまり仕事ができなくてね、怒られてばかりなんだ」
おじさん「言われた量配り切らないと、 給料を減らされてしまうんだよ」
カズマ「ねえ、おじさんの会社って、 残業代出てる?」
おじさん「基本は出てないかな」
カズマ「休みは?」
おじさん「週1回休めればいい方で」
カズマ「それ、ブラック企業じゃない?」
おじさん「どうだろう」
カズマ「絶対そうでしょ!」
カズマ「従業員を大切にしない会社は最悪だって、父さんも母さんも言ってた」
おじさん「素敵なご両親だ」
おじさん「でも、 俺はサンタだから。 子どもの笑顔の為に働いているんだから、 ちょっとくらい無理しなきゃ」
カズマ「そういうのを やり甲斐搾取 って言うんだよ」
カズマ「労働基準法違反もしてるし、 そんな所辞めるべきだよ」
おじさん「でも歳も歳だし、 今から新しい仕事始めるのは難しいんだ」
おじさん「他のサンタの会社も調べたりしたんだけど、中々ね」
カズマ「じゃあさ、今の会社にもっと良くしてくれるよう言おうよ!」
おじさん「え?」
カズマ「僕が手伝ってあげるから! ほら!」
カズマ「僕、法律勉強してるんだよ!」
カズマ「法律に違反してるって言えば、きっと改善してくれるよ!」
おじさん「・・・」
おじさん「そうだね。 ちょっと考えてみるよ!」
カズマ「そうだよ! 絶対もっといい会社があるよ!」
おじさん「じゃあ、プレゼント配り終わったら、 また戻ってくるから、 相談させてくれるかい?」
カズマ「勿論! じゃあそれまで起きてるから! それと、その後病院に行った方がいいよ!」
おじさん「そうだね、ありがとう。 そうだ、お名前は?」
カズマ「カズマだよ!」
おじさん「カズマ君。 じゃ、また後で!」
カズマ「おじさん、足引きずってたな 痛いのかな」
カズマ「よし、おじさんが戻ってくるまでに、 労働の法律もっと勉強しとくか」
カズマ「・・・」
〇勉強机のある部屋
カズマ「あれ!?朝!?」
カズマ「おじさんは!?」
カズマ「なんだこれ」
カズマ「手紙か」
昨日はありがとう。
あの後、考えてみたけど、
会社に待遇改善を求めるのは、
やめておくことにしたよ
何故なら、俺には子どもがいるから。
訳あって2人の子を一人で育ててるんだ
万が一仕事を失ってしまったら、家族が露頭に迷ってしまう。
〇古いアパートの部屋
息子「””」
娘「””」
〇勉強机のある部屋
カズマ「・・・」
夢を与えるはずのサンタが、
こんな体たらくでごめんね
ありがとう
カズマ「そっか」
それと
メリークリスマス
カズマ「・・・」
カズマ「ありがとう サンタさん」
〇勉強机のある部屋
カズマ「・・・」
母さん「どうしたんだろ、 こんなところで寝て」
「どうした?」
母さん「いや、カズマがさ・・・」
〇明るいリビング
僕は、
帰ってきた両親に、
サンタのおじさんの話をした
まあ、
両親は夢でも見たんだろうって言ってたけど
〇公園のベンチ
おじさん「ふう・・・」
「あの」
おじさん「?」
父さん「うちに来てくれたサンタさんですか?」
おじさん「え?」
父さん「えーと、私カズマの父でして」
おじさん「あーカズマ君の」
おじさん「そうですね、自分がそのサンタです 本当は姿を見られることすらダメなんですが」
父さん「まあ、あの子が無理を言ったんでしょう。 好奇心の強い子だから」
父さん「あなたとのことを色々話してくれました 足を怪我しながらもプレゼントを運びにいったと。 素晴らしいサンタさんだ 今時珍しい」
おじさん「いえいえ」
父さん「あの、急ですが、 お一つ提案というか、 お願いなんですが、」
父さん「─ ─」
おじさん「えっ?」
〇古いアパートの部屋
〇遊園地の広場
〇勉強机のある部屋
一年後のクリスマスイブ
カズマ「あれから一年か」
カズマ「おじさん、まだブラック企業でサンタしてるのかな」
カズマ「まだサンタ続けてるのかな」
カズマ「今年も来てくれるかな」
カズマ「・・・」
〇勉強机のある部屋
(カズマくん)
(君のおかげで、 今は凄く素敵なサンタの会社で働けてるよ とっても社員思いで)
(メリークリスマス)
〇クリスマスツリーのある広場
カズマくん、めちゃ法律に詳しくてびっくり!
でも、実際のところこのおじさんのように、ブラック企業で疲れてると、新しい職場を探すこともできないんですよね。
おじさんは新しいところにいけてよかったです!
こんな法律に詳しくてしっかりとした子供がいたら少し怖いけど、子供らしい一面もあってほっこりしました!
労働環境…ブラックで働く人はそれが当たり前になってしまうものなのかもしれません…。
サンタさんをするお仕事があるなんて、夢があるようなないような。しかもブラック企業(笑)しかも子どもにそれバラしちゃう(笑)子どもがそんなおじサンタを救うために頭を働かせ、結果ふたりとも幸せになれたハッピーエンド、くすっと笑えて心あたたまるよい話でした♪