ep1(脚本)
〇体育倉庫
12月23日──
ここはある部活の部室(体育倉庫)
部長の瀬名ユリナ(2年)は
眼前で強く拳を握り
感極まっている様子だ
瀬名ユリナ「時は来たわ 明日は我が部最大の見せ場・・・」
田巻マキ「よっ、部長!」
氷芽アヤメ「・・・」
いつものようにユリナを
囃し立てる田巻マキ(2年)
そして、そのやり取りを意に介さず
本を読みふける
氷芽アヤメ(1年)の姿があった
瀬名ユリナ「野球部の夏に甲子園があるように・・・ あたしたちの冬には クリスマス・イブがある!」
瀬名ユリナ「そう、明日はついに 「サンタクロース捕獲大作戦」を 実行に移す時よ!」
田巻マキ「いえ~い! サンタ捕獲部に入って早2年 待ちに待ったよ~」
瀬名ユリナ「待たせてごめんね、マキ!」
田巻マキ「ぶちょお~!」
ユリナとマキはハグをして
互いにこれまでの労をねぎらっている
氷芽アヤメ「1ついいかしら・・・」
瀬名ユリナ「なによアヤメ?」
氷芽アヤメ「うちは郷土研究部であって サンタ捕獲部とかいう 珍妙な部じゃないわ」
瀬名ユリナ「ま~たそれか!」
瀬名ユリナ「郷土研究部がダミー サンタ捕獲部がマジだって 何度も言ってんじゃん」
氷芽アヤメ「だとしたら郷土研究部と思って入部した 私がバカだったわ」
田巻マキ「まあそういうことになっちゃうか~」
田巻マキ「って、もう100回はやったやり取りだね それでもアヤメちゅんは辞めないよねぇ」
氷芽アヤメ「・・・ こうして本を自由に読んでられるし 一応部室はあるしね」
氷芽アヤメ「でも先輩方がまさか本気で サンタがいると思い込んでて 作戦を実行するとは思ってなかったわ」
瀬名ユリナ「サンタはいるの!」
氷芽アヤメ「根拠は?」
瀬名ユリナ「カンタンよ サンタがいることを証明するのは 捕まえて連れてくればいいけれど」
瀬名ユリナ「いないことを証明するための すべての証拠を集めるのは 不可能だからよ」
田巻マキ「悪魔の証明ってやつだねぇ~」
瀬名ユリナ「だからあたしたちは サンタを捕まえるってわけ! わかったっしょ?」
氷芽アヤメ「ダメだ・・・ 意味が全然わからない」
瀬名ユリナ「疑問が万事解決したところで──」
氷芽アヤメ「してないけど」
瀬名ユリナ「明日の段取りについて 作戦本部長のマキに 説明してもらいましょー!」
氷芽アヤメ「そんな役職あったの・・・」
田巻マキ「まずこれ──」
瀬名ユリナ「なんだこれ?」
田巻マキ「うちが作った校内のドアロック解除用 偽造セキュリティカードよん 履歴が残らないように細工済み♪」
氷芽アヤメ「あんた何者なの?」
田巻マキ「それと、これ~」
瀬名ユリナ「これは校内のマップ?」
田巻マキ「ま~、それもあるけど 防犯カメラの位置と向きを 全部描いといたよ~」
氷芽アヤメ「あんた、やってたでしょ?」
瀬名ユリナ「ふっふっふ、でかしたわマキ! これで侵入経路はオール確保」
瀬名ユリナ「各自作戦に必要なアイテムを持って 明日の午後23時に学校に集合よ!」
田巻マキ「お~!」
氷芽アヤメ「・・・私も?」
〇学校の屋上
翌日、サンタ捕獲アイテムを持ち寄り
学校の屋上に集結した3人
氷芽アヤメ「虫取り網、スタンガン、投げ縄 ブーメラン・・・」
氷芽アヤメ「もしかしてバカなの?」
巨大なリュックの中身をガサゴソと
漁りながら地面に広げているユリナ
瀬名ユリナ「備えあればなんとやらよ 何が有効かなんて エンカウントしないとわからないわ」
田巻マキ「うちはモノポリー持ってきたよ~ 夜は長くて退屈だろうし~」
氷芽アヤメ「あんたもしかして サンタ信じてないでしょ?」
瀬名ユリナ「よっしゃー、テント設営OK! 寝袋もあんたたちの分用意したわ」
田巻マキ「ほ~い!」
氷芽アヤメ「いつの間に・・・」
氷芽アヤメ「ところで、この作戦って 何をどうするつもりなの?」
瀬名ユリナ「見たらわかるでしょ?」
瀬名ユリナ「枕元に靴下を置いて寝袋で寝る」
瀬名ユリナ「ノコノコとプレゼントを持ってきた サンタをとっ捕まえるのよ」
氷芽アヤメ「いろいろウソでしょ・・・」
瀬名ユリナ「ははぁ~ん、アヤメ あんた今こう思ったでしょ」
瀬名ユリナ「サンタはプレゼントを置いて 一瞬で去ってしまうだろ、と」
氷芽アヤメ「思ってないわ」
瀬名ユリナ「サンタを手こずらせるために あたしが事前にお願いしたプレゼントは 業務用コピー機よ」
氷芽アヤメ「何お願いしてんのよ」
田巻マキ「でもプレゼントは子供優先だろうから そんなもんお願いする部長のとこには サンタ、来ないかもねぇ~」
瀬名ユリナ「・・・優先度低くても 1人くらい来るでしょ」
氷芽アヤメ「えっ? 1人くらい? サンタって複数いる設定?」
瀬名ユリナ「そりゃ~そうでしょ!」
瀬名ユリナ「あたしは見たことあるんだから 夜空をたくさんの黒い影が飛んで・・・」
氷芽アヤメ「それってカラスかなにかでしょ?」
瀬名ユリナ「違うわよ、コウモリだって!」
田巻マキ「コウモリって言っちゃったじゃん」
氷芽アヤメ「サンタは1人しかいないってのが 世間の常識なんじゃない?」
瀬名ユリナ「ふふ・・・甘いわねアヤメ 世界中の子どもたちに 1人でプレゼント配るのは無理よ」
瀬名ユリナ「世界に子供が20億人いるとして 1人あたり1秒で配れたとしても 約63年かかる計算になるもの」
氷芽アヤメ「こういう時だけ 妙に計算早いわよね・・・」
瀬名ユリナ「よってサンタは複数人いるって 考えるのが妥当なんじゃないかしら?」
氷芽アヤメ「まあ・・・異論ないわ」
瀬名ユリナ「わかったらさっさと準備を手伝う! そして、できるだけポンコツサンタが 来るように祈るのよ!」
氷芽アヤメ「仕方ないわね・・・付き合うわよ」
田巻マキ「うふふふ、アヤメちゅんも すっかりハマって来てるねぇ~」
〇開けた景色の屋上
田巻マキ「ま、こういうところが面白いんだよね この部活って・・・」
こうして
一夜を明かしたユリナたちであったが
サンタを捕まえることはできなかった
〇綺麗な一戸建て
しかし翌朝──
〇シックな玄関
瀬名ユリナ「ただいま~」
〇明るいリビング
瀬名ユリナ「ってなにこれ?」
瀬名ユリナ「業務用コピー機? お母さんこれどうしたの!?」
「父さんの会社で使わなくなったやつ もらってきたんだって」
瀬名ユリナ「なるほどね、偶然か・・・」
瀬名ユリナ「いや、もしかして サンタクロースの正体って お父さんだったとか・・・?」
みんなが純粋で可愛らしかったです。会話のテンポもよくてスムーズにタップしながら読み進めさせて頂きました。最後の「まさかお父さん?」可愛らしいですね。
アヤメさんのツッコミが楽しかったです。
ユリナさんは本当にサンタさんを信じてたみたいですね。
本当にコピー機がきて、サンタさんはお父さん?ってなるところがかわいいです。
純粋な部長さん本当に願いが叶ったときにサンタクロースの本当の正体はお父さん?となってしまうシーンが特に好きです!なんだかんだ言いながら最高のトリオでした!