Kennel 3

wakakasa

エピソード1(脚本)

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〇水玉
  女優の卵で劇団員のみどりさんは
  最近忙しい

〇キャンディ
  朝ドラのオーディションに受かったからだ

〇川沿いの公園
  今朝も早朝、散歩に連れて行ってくれた後

〇玄関内
みどりさん「今日はクリスマスだから、撮影のあと、どうしてもシフトに入らなければいけないの」
みどりさん「ごめんね」

〇綺麗な部屋
  と、録画のセットをすると
  急いで出かけて行った
  録画?
  そう
  今日は朝ドラに
  みどりさんが出演するシーンが
  初めて放送される日なのだ

〇中規模マンション

〇黒
  みどりさん曰く
  撮影というのは大変だそうだ

〇公園のベンチ
みどりさん「ロケだったんだけど」
みどりさん「天気が悪くて別日になっちゃった」

〇黒
  とか

〇コンサートの控室
みどりさん「朝、スタジオに入ったのに」
みどりさん「ずっと待って」
みどりさん「結局撮影したのが夜だった」

〇赤(ライト)
  とか愚痴ってるけど
  みどりさんの表情は
  明るく楽しそうだ

〇keep out
  でもその度に
  バイトに入れなくなる日が多くなり

〇アパートのダイニング
  みどりさんの冷蔵庫の中身が
  日に日に寂しさを増してゆく
  ここ数日は、買い置きの
  冷凍のご飯と納豆だけとか
  カップ麺だけとか
  みどりさんの食事も
  どんどん寂しくなってゆく

〇食器
  何でも、出演したギャラっていうものは
  数か月先にしか入ってこないらしい

〇パチパチ
  それと、新人であるみどりさんのギャラは
  驚くほど安いみたい

〇緑(ライト)
  それでも僕にはいつもと変わらない食事を与えてくれる
  どんなに忙しくても、
  きちんと散歩に連れて行ってくれる
  何だか心苦しい

〇空

〇綺麗な部屋
たっくん「頑張っているみどりさんの晴れ姿を見なければ!」
  みどりさんが出かけると、
  僕はすぐにテレビの前に陣取った
  そしてみどりさんがするように
  リモコンの赤くて丸いボタンを押した
  チャンネルのことはわからないけど
  録画のセットをしたら
  時間が来たら、そのチャンネルに勝手に切り替わるみたいだ

〇ポップ2
  テレビが点いた
  あとはその時間を待つだけだ

〇空

〇綺麗な部屋
たっくん「がーん!」
  窓の外を見ると、
  陽はだいぶ高くなっていた
たっくん「寝てしまった!」
  僕は何という失態をしでかしてしまったんだろう
  みどりさんの晴れ姿を見ることなく
  眠ってしまうなんて!
  いや、待てよ
  まだチャンスはある

〇市松模様
たっくん「たしかこの番組は、 お昼にもう一回放送されるはずだ!」
  今が何時なのかわからないけど、
  僕は瞬きもしないで
  ずっとテレビの画面を見つめた
  のどが渇いても、
  水を飲みに行くことはしなかった
  また眠気が襲ってきても
  目を瞑ることはしなかった
  そしていよいよそれは始まった

〇綺麗な部屋
  みどりさんが持っていた台本と
  同じ文字がテレビに映った
  僕は目を皿にして画面を見つめた

〇黒
  そしてあっという間にそれは終わった

〇パチパチ
たっくん「え?」
  みどりさんは?
  僕は目を開けて眠っていたのか?
たっくん「え?」
たっくん「きっとそうだ! 僕はまた眠ってしまっていたんだ!」
たっくん「何という愚か者なんだ、僕は!」

〇炎
  自己嫌悪に陥った僕は
  テレビに体当たりし、
  ドロップキックを見舞った

〇綺麗な部屋
  テレビはプイと横を向いた
  画面に変な線が入り
  映りがとても悪くなった

〇血しぶき
たっくん「がーん!」
  僕はテレビを壊してしまった
たっくん「ぼくはみどりさんに 何て謝ればいいんだ!?」

〇黒
  失意の中、
  僕はまた眠りに落ちて行った
  このまま目覚めなければいいのに
  とまで思いながら

〇空

〇綺麗な部屋
  夜になっていた
  玄関の鍵を開ける音が聞こえる
  みどりさんが帰ってきた
  ふとテレビを見ると
  画面には何も映っていなくて
  音声だけが聞こえてくる
  やはりテレビは壊れていた
  卑怯にも僕は
  慌ててリモコンの赤いボタンを押し
  証拠隠滅を図った
  そして

〇玄関内
  玄関にみどりさんを迎えに行った

〇川沿いの公園
  みどりさんは疲れているのに
  すぐに僕を散歩に連れて行ってくれた

〇空

〇中規模マンション
  散歩から帰ると

〇綺麗な部屋
みどりさん「さ、ごはんにしよう 今日はちょっとご馳走だぞ」
  みどりさんはバイト先からもらってきた
  チキンをぼくの前に置いてくれた
  そして
  テレビをつけようとした

〇黒
  僕の胃はきりきりと痛んだ

〇綺麗な部屋
みどりさん「あれ?壊れちゃったのかな?」
みどりさん「音は出るけど、映像が映らない・・・・・・」
みどりさん「ま、いいや」
  なぜだか、みどりさんは元気がなかった
みどりさん「お母さんから連絡あったんだけど・・・・・・」
みどりさん「あんた、出てなかったよって・・・・・・」
たっくん「!」
みどりさん「編集でカットされちゃったみたい」

〇緑(ライト)
  僕は、安堵と不安の入り混じった目で
  みどりさんを見つめた

〇綺麗な部屋
みどりさん「ま、よくあることみたい。尺の問題でね・・・」
みどりさん「まだまだ出番はあるんだし・・・・・・」
  みどりさんは少し寂しそうだった

〇空

〇宇宙空間

〇綺麗な部屋
  音だけ流れるテレビでは、
  「なんちゃらサンタ」
  という番組が始まっていた
  しばらくすると
  みどりさんに電話がかかってきた
サンタ1「お名前をどうぞ」
みどりさん「みどりです」
サンタ1「職業は」
みどりさん「女優の卵です」
  あれ?みどりさんの声・・・・・・
  テレビからも聞こえてくるぞ
サンタ1「どんな不幸があったんですか」
みどりさん「今日、初めて自分の出演シーンが流れる予定だったので、両親や友達に見てねって宣伝したんです」
サンタ1「ほー、そんで?」
みどりさん「出番、カットされてたみたいです」
サンタ1「みたいって、 自分で確かめへんかったん?」
みどりさん「録画してたんですけど・・・・・・ 家に帰ったらテレビが壊れていて 見れませんでした!」
サンタ1「ごうかーく!」
  テレビから鐘の音が聞こえてきた
サンタ1「そんな不幸なあなたに 大型テレビとブルーレイのセットをプレゼント!」

〇カラフルな宇宙空間

〇カラフルな宇宙空間
  クリスマス
  僕は、神様の存在を少し感じた

コメント

  • 飼い主が犬を大切にする気持ち、それに応えようと張り切る飼い犬の関係が温かく、それこそが本来家族一緒にキリスト誕生の祝うこの日にとても相応しいストーリーでした。

  • 女優の卵さんは生活が大変ですね。でも、彼女はこれっぽっちも弱音を吐かず、明るく気丈に頑張っている姿がとても好印象です。

  • 自分が出演するからと宣伝して、尺のせいで切られた…は実際よくある話ですよね。
    みどりさんも気落ちしてただろうに、ちゃんとシャキッと出来てるところがすごいなと思いました。
    最後、良かったですね笑

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