男装神父は妖精魔王だけど安心してずっとここにいてくれって言われたい

バニバニ王子

ヴィオブラッド(脚本)

男装神父は妖精魔王だけど安心してずっとここにいてくれって言われたい

バニバニ王子

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〇薄暗い谷底
コブン「なあヴィオブラッド 君の本当の顔はどこにあるんだ?」
コブン「昼は町に出て慈悲深い神父ごっこをする」

〇教会内
ヴィオブラッド「あなた方が パンになるでしょう」
ヴィオブラッド「ぶどう酒にもなるでしょう」
ヴィオブラッド「ぶどうの実である 喜びを知るでしょう」

〇薄暗い谷底
コブン「夜は大勢のニンフと放蕩騒ぎをする」

〇森の中の沼
ヴィオブラッド「私の血を呑め〜呑め呑め〜」
ヴィオブラッド「ぱーりら!」
ヴィオブラッド「イッキ! イッキ!」

〇薄暗い谷底
ヴィオブラッド「は? 私はいつもこの顔だ  やることが違うだけだ それがなにか?」
コブン「・・・掴みどころがない」
ヴィオブラッド「誰にも掴まれてたまるものか」
コブン「俺は掴んでみたいが」
ヴィオブラッド「ないものはない 本当の顔なんて 探すから病気になるんだ」
コブン「それもそうか」
ヴィオブラッド「私は私だ」
コブン「ヴィオブラッド たまにはきれいなドレスでも着て、俺と踊らないか」
ヴィオブラッド「はははっ 断る」
ヴィオブラッド「軟弱な女扱いなどされてたまるものか」
コブン「軟弱な女扱いなんてしない ただ似合いそうだと思っただけだ」
ヴィオブラッド「・・・」
コブン「ほら、見てくれ きれいな赤色だろう」
ヴィオブラッド「・・・っ」
コブン「君はきれいなものに目がないのは昔からだな」
コブン「いつからか男装趣味になってしまったが・・・」
ヴィオブラッド「うるさい そんなもの着ていたらばかにされる 第一、かっこよくない」
コブン「誰に?」
ヴィオブラッド「誰って・・・」
コブン「気にし過ぎだと思うぞ」
ヴィオブラッド「それもそうか」
ヴィオブラッド「着替えた」
コブン「いいじゃないか〜 ああ俺のヴィオブラッド」
ヴィオブラッド「誰がお前のものだ 私は私のものだ」
ヴィオブラッド「ああそうか思い出したぞ」
ヴィオブラッド「可愛らしいドレスなんぞ着てたら 父にそのようなことを言われて 腹がたったから、ドレスを嫌いになったのだ」
コブン「そうだったのか。 たしかに、男がタキシードを着ていても 俺のものだとか、所有物扱いは、あまりされないかもしれない」
コブン「父王から愛されているな ヴィオブラッド」
ヴィオブラッド「・・・」
ヴィオブラッド「好意は嬉しいが誰のものにもなりたくはない 私は自由だからだ」
コブン「それは誰でも同じだ 父王も悪気はなかったはずだ」
ヴィオブラッド「そうか」
ヴィオブラッド「・・・男は女から私のものよと言われたら嬉しいか?」
コブン「ヴィオブラッドから言われたら嬉しい」
ヴィオブラッド「は?  私は所有欲が薄いぞ」
コブン「俺は所有欲が強い」
ヴィオブラッド「何を言っとるんだ」
コブン「本当の顔が見たい」
ヴィオブラッド「私はいつも本当の顔だ お前の望み通りの顔になんかならないぞ」
コブン「ならなくていい」
ヴィオブラッド「・・・」
コブン「おいで、ヴィオブラッド」
ヴィオブラッド「耳元でささやくな」
  コブンはヴィオブラッドに手を差し出す
コブン「俺の手を取るまでやめないぞ」
ヴィオブラッド「じゃかしい 私は男役しか踊れないぞ」
コブン「かまわんさ 本当の君で」
  妖精のワルツの中で
  二人はデタラメなステップを踏む
ヴィオブラッド「所有されたいような依存したいような気分があるのが惨めだ」
コブン「そういう気持ちがなかったら、味気ない世界にならないか? 惨めになるまで気を張らなくていいんじゃないか?」
ヴィオブラッド「・・・味気があろうがなかろうが、どうでもいい」
コブン「よしよし、ヴィオブラッド 安心してずっとここに、俺の胸の中にいてくれ」
ヴィオブラッド「・・・?!」
ヴィオブラッド「あ。すまない 突き飛ばしてしまった」
ヴィオブラッド「わたしはどこにもいたくない いてはいけないのだ」
コブン「そんな酷いこと誰に言われたんだ?」
ヴィオブラッド「・・・」
コブン「泣いてもいいさ」
コブン「酷いこと言うやつのことなんて信じなければいい」
ヴィオブラッド「そう、だな・・・」
ヴィオブラッド「・・・アハハッ」
コブン「立ち直るのが早いな」
ヴィオブラッド「しょげてたら私らしくない」
コブン「無理はするなよ?」
ヴィオブラッド「そのときは胸を貸してくれ」

コメント

  • ヴィオブラッドを崇拝しているようでいて自分のペースに巧みに引き込んでいくコブン。ちょっとのバランスで力関係が入れ替わるような、恋のシーソーゲームですね。ギクシャクしたワルツのステップのように、読んでる方もハラハラドキドキしました。

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