クリスマス・エクスペリメント

美晴 ソラ

本編(脚本)

クリスマス・エクスペリメント

美晴 ソラ

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〇イルミネーションのある通り
  メリークリスマス!
  良い子のみんなへおしらせです
  サンタクロースが
  君たちにプレゼントをお届けします!
  君たちの頑張り次第で
  いいものをたくさん差し上げます!
  サンタはいつでも君たちを見ているからね!

  突如、公共の電波を通して映った映像。
  それを見て疑う者は誰一人いなかった。
  あたかも一瞬で洗脳されたかのように。

〇シックな玄関
  ピンポーン
伸弥の母親「はーい」
配達員「メリークリスマス!」
配達員「いつも良い子にしていた伸弥くんにプレゼントです!」
伸弥の母親「あら! 伸ちゃん、こっち来てー!」
伸弥「はーい」
配達員「フフフ、君のことはお母さんから聞いているよ」
配達員「生徒会長を務めていて、家の手伝いも欠かさず行っているようだね」
配達員「それに、この前のテストだって全教科満点だってね!」
伸弥の母親「あら伸ちゃん、ベタ褒めじゃない。良かったわね~」
配達員「それじゃ、良い子の伸弥くんに、これを」
伸弥「うわァ、立派な箱だ」
伸弥「中身は何だろう?」

  箱の中には小人サイズのサンタクロースが三体も入っていた。
  それを見た伸弥くんは──

〇シックな玄関
伸弥「や・・・・・・」
伸弥「やったーーーー!!」
伸弥「すごく欲しかったんだ!」
伸弥「小人サイズの奴隷!」
伸弥「それも三体!? こいつら好きにして良いってこと?」
配達員「もちろん!」
配達員「そのサンタクロースは君の命令を何でも聞いてくれるよ」
伸弥の母親「伸ちゃん、良かったじゃない~」
伸弥「僕ね、良い子にしていて本当に良かった!」
伸弥「おじさん、ありがとう!」
配達員「ハハハ、良い子にしていたら来年も届けるからね」
伸弥「よーし、さっそく使ってみるぞー!」

〇飾りの多い玄関
  ピンポーン
美佐紀「はーい」
配達員「メリークリスマス!」
配達員「良い子にしていた美佐紀ちゃんにプレゼントです!」
美佐紀「プレゼント? ひょっとしてサンタかな?」

美佐紀「一人しかいない」

〇飾りの多い玄関
配達員「良い子にしていたら来年はもっとたくさんのサンタさんを届けるからね!」
美佐紀「(地区大会で決勝で負けたかのが痛かったかな・・・・・・?)」
美佐紀「来年は良い子になれるように頑張らなきゃ!」

〇玄関の外
配達員「メリークリスマス!」
モブの学生1「待ってました!」
モブの学生1「さてさて、今年の奴隷はいかほど・・・・・・っと」

モブの学生1「おぉーっ! 二体入ってんじゃん、やりーっ!」

  クリスマスが終わり、しばらくが経った時の頃・・・・・・

〇男の子の一人部屋
伸弥「・・・・・・」
伸弥「サンタの奴、来ないなァ」
「ご主人様」
伸弥「おぉっ、待ちくたびれたぜ!」
伸弥「それで、どうだった?」
伸弥「おぉーっ! これこれぇ!」
伸弥「このカードとてつもなく強くて、」
伸弥「世界に一つしかないレア物なんだよ!」
サンタクロース1「鈴木始という子供がいる家で」
サンタクロース1「見つけた代物でございます」
伸弥「・・・・・・やっぱりか」
伸弥「あのヤロウ、裏庭でコソコソ隠れては何か見ているなと思ったら」
伸弥「こんな大層なモン持っていたとはな」
伸弥「やっぱサンタってすごいな!」
伸弥「それに引き換え鈴木君」
伸弥「毎日不登校じゃなければ、こんな優秀な奴隷君を手に入れたのかもしれないってのに」
伸弥「やり返される心配ないから良いんだけど」
伸弥「この調子で残り二体も盗みを働かせてやるか!」
伸弥「生徒会長の僕なら何したって許されるしね!」

〇田舎の学校
  地区大会決勝──
「すいませーーん!」
モブの顧問2「田淵さんが、さっき車に轢かれてケガを・・・・・・」
モブの顧問2「えぇっ!?」
モブの顧問2「そ、それで決勝の方なんですが、我々は棄権するという形で──」
「大丈夫、です・・・・・・」
モブの顧問2「田淵さん!」
モブの顧問2「安静にしないとダメじゃないの!」
田淵「ほんの、かすり傷ですよ・・・・・・」
田淵「それに、」
田淵「私、試合で勝ちたいんです・・・・・・」
???「良いんじゃないですか?」
美佐紀「私も貴女と戦って、勝ちたいの」
美佐紀「お互い、全力を尽くしましょう?」
田淵「草野さん、ありがとう・・・・・・」
  当たり前よ、だって──
  大勢の前で、あんたに恥をかかせてやりたいし。それに、
  弱い私を相手にするなら、
  少しのハンデは背負って貰わないと

  サンタさん
  バレないように轢いてくれてありがとね♥️

〇空き地
モブの学生1「こらそこ、サボってないで仕事仕事」
モブの学生1「他のヤツらに負けないように、お前らも貢ぎ物してこいよ!」
サンタクロース1「何を」
サンタクロース2「ご所望で?」
モブの学生1「んー、そうだなぁ・・・・・・」
モブの学生1「金とかゲームは他のヤツに頼んだから──」
モブの学生1「パン買ってきて」
「かしこまりました」
モブの学生1「・・・・・・しかし、」
モブの学生1「自分の王国作るのって」
モブの学生1「気持ちいいーー!!」

〇研究所の中枢
  サンタクロースに搭載されたカメラ機能により、
  僕たちはモニター越しで子供たちの様子を閲覧していた。
  彼等の行動の全てをノートに書き留めていた。
先輩「いやぁ~~」
先輩「子供ってすごいねぇ」
先輩「力を得た瞬間、欲しいものや叶えたい夢の為なら、」
先輩「いかなる禁忌を犯すのも厭わなくなるからねぇ」
先輩「真面目に勤勉に生きるよう教育されたお陰で誤魔化されているだけで、」
先輩「実態は結構残酷なのって、」
配達員「間違ってなかったりするかもな」
配達員「・・・・・・あの、先輩」
先輩「どした?」
配達員「先輩の目的って人間の子供を観察することで、」
配達員「彼等に奴隷と称して、」
配達員「小人サイズの奴隷を送りつけたということですよね?」
先輩「そうだよ」
配達員「何で、サンタクロースにしたんですか?」
配達員「デザインしたのは、先輩ですよね? 何か意味があるんですか?」
先輩「俺の趣味さ」
配達員「へっ? しゅ、趣味?」
先輩「プレゼントの中身が、奴隷というやべーモン入っていて、」
先輩「その奴隷を何の為に使うか、ってのを考える」
先輩「つまり、子供たちは俺たちにねぇ」
先輩「最高のエンターテイメントを提供してくれるってことだよ!」
先輩「娯楽の少ない俺ら宇宙人にとって、まさに素晴らしいクリスマスプレゼントだよ!」
  子供のように曇りない瞳で笑う先輩を見て、僕は思った
  残酷なのは宇宙人だって同じだろう、と

コメント

  • かなり切れ味の鋭いダークファンタジーに驚きました。人間、そして子供というものを細やかに観察して生々しく描いた作品ですね。

  • 皆に優しい善良なイメージのサンタさんを奴隷にという発想が、パンチがきいたブラックユーモアで面白かったです。子どもって純粋だからこそ、欲求にも素直で、怖いっていう一面もあるんですね。

  • 夢があるようなないような、そんな子どもたちのクリスマス。最後のオチで理由が納得いくようないかないような、、、(笑)でも楽しいストーリーで最後まで楽しませて頂きました。

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