新米なるサンタへ

ヤマキ

読切(脚本)

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〇月夜
サンタ「じゃあ、これからよろしくね」
  ──クリスマスの夜、白く彩られた世界の中で
  彼女の笑顔はとても輝いていた

〇住宅街の道
  ──確か今日はクリスマスだった。家族連れやカップルを多く見る
  どうせなら雪でも降らないものか。と空を見上げると
  ──いつの間にか目の前に少女が立っていた
  驚きながら少女を見ると、少女は軽い足取りで近寄り、こちらの手を握る
サンタ「こんばんわ。サンタがプレゼントを届けに来たよ」
  いきなり知らない女性に手を握られるという状況に頭がついていかない、しかも今彼女は──
カケル「・・・サンタ?サンタクロース?」
サンタ「イエス!アイアムサンタ!」
  いきなり現れた女性は笑顔で自らをサンタと名乗った
  サンタといえば赤い服に白髪の、そもそもおじいさんのはず。そう思い彼女を見てみる
  ──なぜ半袖の寒そうな格好になってしまったのか
サンタ「じゃあ行こっか」
カケル「いや行くってどこに!?」
サンタ「クリスマスなんだから楽しまなくちゃ!」
  そう言って彼女は握った手にわずかに力を入れると地面を蹴る
  ・・・浮遊感、離れていく地面。
  クリスマスの奇跡なのか魔法なのか
  ──気が付いたら空に浮いていた

〇大衆居酒屋(物無し)
カケル「・・・で、なぜ居酒屋に」
サンタ「まずは腹ごしらえでしょ」
サンタ「あ、店員さんラーメン2つお願いしまーす」
カケル「・・・」
  選択権もないのも気になったが、彼女のことで頭がいっぱいだった
  クリスマスに現れ、サンタと名乗り、空を飛ぶ
カケル「えーと、サンタ、さん?質問いいです?」
サンタ「はいはい、なんでしょー?」
カケル「俺は君に会ったことあったっけ?」
サンタ「ないよー」
カケル「君はホントにサンタ?」
サンタ「サンタですよー?」
カケル「・・・じゃあ、空を飛んだのは?」
サンタ「ソリだって気分次第だしトナカイだってフラダンスで忙しいことだってあるしね。お、来たんで頂きますか」
  彼女を見ると美味しそうにラーメンをすすっている。見た目は普通の女の子だ
  とりあえずラーメンを食べてからまた話をするしかないようだ
カケル「・・・ちなみにお金は・・・?」
サンタ「先に払っといたから大丈夫よー?」
カケル「・・・面目ない」
サンタ「美味しい?」
カケル「うん」
サンタ「それは良かった。食べたら次行こっか」
カケル「は?次って・・・?」
サンタ「食べてからのお楽しみ」
  いたずらっぽく笑う彼女。その笑顔につられて自然と笑っていた

〇体育館の中
サンタ「というわけで体育館に来ましたー、パチパチー」
  2度目の空中移動に何とか慣れた頃、サンタが引っ張ったのは近くの学校の体育館だった
  なぜかサンタが手をかざすだけで引き戸が開き、そして指を軽く曲げるだけで明かりが点く
サンタ「──ドヤァッ!」
カケル「ここへは何をしに?」
  !?
サンタ「お腹ごなしの1on1などどーでしょうかー?」
  さすがに2度も空を飛んだのだから大抵のことは驚かない
  どこからともなく出したバスケットボールで1on1をする。夜の体育館に二人の笑い声や足音、ボールを操る音が響いた

〇見晴らしのいい公園
カケル「で、次はここですか」
サンタ「そうだね。夜景、いいでしょ?」
  次にサンタが連れてきたのは、町が一望できる公園だった。ほのかに雪が降っている
  夜景を背にして微笑む彼女に思わず息をのむ
サンタ「ねえ。今日は楽しかった?空も飛んでご飯食べて夜の学校で遊んで?」
カケル「うん。楽しかった」
サンタ「まあロマンチックなことは全然してないけどねー」
  頭を掻いて困ったように笑うサンタが歩み寄ってくる
  夜景とホワイトクリスマス、二人きりという展開にあらぬ想像をしてしまい、心臓が高鳴るのを感じてしまう
  サンタの顔に目を奪われる。整った顔つきにほのかに赤く色づいた頬はとても魅力的だった
  ──思わず抱きしめようとしたとき、鋭い痛みが走った。彼女が手に持つのは一振りのナイフ
  手足からは力が抜け、仰向けに倒れてしまう。サンタとあった場所が映る
  その場所、そこにいた理由が一瞬のうちに現れては消えていく
  ──ああ、そうだ
  俺はすでに死んでいたんだった

〇月夜
  ──ッ!?
サンタ「や、お目覚め?」
  目の前には雪の降る夜空、そしてサンタが目の前で座っていた
カケル「き、君は一体?」
サンタ「あー、今はナイフもフォークもスプーンももってないから」
サンタ「説明するから黙って聞くよーに」
  ひとまず頷く外無かった
サンタ「まず、君は地縛霊」
サンタ「で、私は地縛霊を成仏させることがお仕事。ずっといられるとパワースポット化しちゃうから。ok?」
  頷く
サンタ「で、サンタも偽名。クリスマスは皆頭お花畑になるしキリスト?の誕生日を祝う?らしいから君みたいのの成仏にいいの」
サンタ「色々楽しませたのは後の面倒を避ける、のと・・・人手不足なんだよね」
カケル「人手不足?」
サンタ「そう。強制的に成仏させたら怒って暴れるって危険性もあるから」
サンタ「私みたいに成仏のために色々やれるようにして、ある程度成仏させたら天国行きにしようって考え。もちろん監視ありだけど」
サンタ「なので私みたいに色々できるようになる?てかなって?よし決定」
  拒否権はないようだ
カケル「分かりました。やりますよ。えーと、ホステス業?」
サンタ「止めろ!?」
サンタ「・・・じゃあ名前教えて?」
カケル「──う」
カケル「・・・ミタ、カケルです。漢数字の三に田んぼの田、後は、駆けるの字で」
サンタ「・・・ホントに?」
サンタ「──サンタ、クロス(カケル=×)!?」
  サンタ(偽名)の笑い声が響き渡る
サンタ「──いやあ、お腹痛い」
サンタ「じゃあ、これからよろしくね、サンタ、君」
  ──クリスマスの夜、白く彩られた世界の中で
  彼女の笑顔はとても輝いていた

コメント

  • 途中で彼が刺された時、やばい女につかまって可哀そうと思ったのもつかの間、地縛霊救済運動のサンタさんだったんですね。ミタカケル=サンタクロス、最高です!

  • かわいいラブストーリーかと思って読んでいたら、全然違っていていい意味で裏切られました。笑
    まさかの展開後もすごく良かったです!

  • 不思議なファンタジー系のラブストーリーかと思いきやまさかの結末にびっくりと面白さがありました。テンポ感もよく彼女の可愛さが素敵でした。

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