花火でみえた少年と幽霊の『真実』

ヒムネ

1話 花火で幽霊(脚本)

花火でみえた少年と幽霊の『真実』

ヒムネ

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〇湖畔
「『今日は花火あるから一緒に観に行きたい人』 『いく』 『行きまするん』」
津西 大輔「今日は用事があるから見に行けないっと、ふぅただでさえ高校とグループLINEで一緒なのにこれ以上一緒なんてごめんだぜ」
津西 大輔「愚痴りつつたどり着いたのは人気のない林に囲まれた池のほとり、」
津西 大輔「まもなく始まる花火を静かに穏やかに観ることが出来るだけでなく西と東それぞれ別の花火を堪能できる隠れスポット」
津西 大輔「6時58分そろそろだな、スマホの電源は切ってと」
津西 大輔「今日は雲ひとつない紫色の空の東側を眺めていると花火が一発、二発と遅れて大きな破裂音がなる」

〇花火
津西 大輔「・・・癒やされる」
津西 大輔「耳に響く花火がオレの常日頃の疲れという波を穏やかな海にする」
津西 大輔「ほぼ毎日つきあわされる仲間のコミュニケーションと逃げ場のないネットワークには日々ストレスが溜まって心身が疲れてた」
津西 大輔「だからオレは夏恒例の花火を静かに過ごしたいと思い毎年夏休みにはここに来る」
津西 大輔「はぁーっ・・・あ、一旦終わりか」
津西 大輔「ほんとうに何か最近疲れたなと腰を下ろして体育座り。どうして子供ってこんなに大変なんだろう」
津西 大輔「どこまで頑張ればいい、テストやらスポーツやらと高1でまだ2年3年とあるしその間に友だちとの付き合いも続けなきゃいけない、」
津西 大輔「はぁ〜、ため息も付きたくなるよ・・・ほんとに」
津西 大輔「下を向くと今度は大きな牡丹の花火が鳴ったのでまた顔を上げ、また癒やされる」
津西 大輔「花火って大きいよな・・・ん?」
津西 大輔「気配、毎年この時間に人が居ることはないのだがと右に向いたら乗用車くらいの距離にショートカットの女の子が花火を観てた」
津西 大輔「オレと同い年っぽい見たことのない制服。ここに気付いた人が現れたって思っていたら向こうも気がついてオレはすぐ空を見上げた」
津西 大輔「だけど視線を感じる。じっと空を見上げて体感では5分くらい、でもまだ見られてる気がした」
津西 大輔「まだ見てる・・・このままじゃ花火に集中が出来ない。しかたないと、」
津西 大輔「こ、こんばんは」
津西 大輔(オレが挨拶をしたらなにやら相手の女の子は少し驚いてる顔をしてるような)
仁藤 葵「わたしが・・・こ、こんばんは」
津西 大輔「話す言葉も見つからず沈黙、そりゃするよ他人だもん」
津西 大輔「でも挨拶したしこれでいいだろ。そのとき大きな花火の音、と同時に明かりで互いの顔がはっきりと見えた」
津西 大輔「よ、よくここに来るんですか?」
仁藤 葵「え、ここに・・・来るっていうかなんていうか・・・はい、あの花火綺麗ですね」
津西 大輔「柳ですか、そうですね」
仁藤 葵「やなぎ? あれ柳っていうんだ」
津西 大輔「どうやらこの子は花火の種類を知らないみたいだとこのときオレは花火自慢スイッチが入って彼女に色々と説明してしまう」
津西 大輔「――あれは千輪菊ってやつで」
仁藤 葵「へー、花火に詳しいんですね」
津西 大輔「ってごめん、説明しちゃって」
仁藤 葵「うんうん、教えてくれてありがとう」
津西 大輔「・・・あのさ、オレ、津西(つにし) 大輔(だいすけ)、君どこの学校の生徒?」
仁藤 葵「あ、そっか〜そうだよね・・・私は仁藤(にとう) 葵(あおい)、じつは・・・幽霊なの」
津西 大輔「花火の話で盛り上がった熱が一気に冷めた。幽霊ってよく見りゃ彼女の膝から下の足がない、これはもしかしてピンチかも」
仁藤 葵「・・・おどろいた・・・よね」
津西 大輔「ふ、ふーん、そんなこともあるもんなんだね」
仁藤 葵「え、怖くないの?」
津西 大輔「驚いたけど、普通ってかんじ」
津西 大輔「オレは強がった。だって高1のオレが幽霊怖いとか言ってたらかっこ悪いって言葉が頭を走って、」
津西 大輔「だからズボンのポケットに手を入れて平気な顔をしてなんとか花火に目を向けた」
津西 大輔「ホラ、花火観ようよ」
仁藤 葵「うんそうだね」

〇湖畔
津西 大輔「このあと花火はあっさり終わり・・・オレの気持ちの問題かもしれないけど、とにかく幽霊の葵(あおい)と別れて家に帰った」
津西 大輔「自分の部屋で今日一日の事を整理する。まさか幽霊と会うなんて、悪そうには感じないからよかったっちゃよかったけど」

〇湖畔
津西 大輔「そんな不安なオレだけど次の日も池で花火が観ることが出来る。観ないわけにはいかない、楽しみだから」
津西 大輔「そんなわけで午後6時頃に葵のことも気にしながら湖に行くとやっぱり同じ場所に彼女はいた」
仁藤 葵「あ、大輔(だいすけ)くん」
津西 大輔「や、やあ、今日も花火みにきたんだ」
津西 大輔「一度話したからか笑顔の葵、オレは~・・・正直自分の気持ちがまだよくわからない」
津西 大輔「ただせっかく花火を観るんだしそんなに警戒するのは損、だから楽しもうと、さっそく色とりどりの花火が上がる」

〇花火
津西 大輔「お、花火だ、ちょっと遠いか」
仁藤 葵「でも綺麗だね」
津西 大輔「昨日よりは小さく観える花火は準備のためだろう静かに」
津西 大輔「・・・待ってるこの時間がじれったいんだよな~」
津西 大輔「体感からして5分くらいにまた花火が今度は大きな赤い花火、尾を引いていない」
仁藤 葵「牡丹、だよね?」
津西 大輔「うん、そう、牡丹」
仁藤 葵「やった、私もわかってきたかも」
津西 大輔「楽しそうな横顔。オレとしては彼女が悪い幽霊だとは感じないし、いい子だ。なのになぜ幽霊になってしまったのか気にってくる」
仁藤 葵「ねぇ、あれはなにっ!」
津西 大輔「んあ? あぁ~あれはキャラクターの花火で」
仁藤 葵「ネコだよねっ、カワイイッ!」
津西 大輔「葵(あおい)はキャラクターの花火でテンションが上がって、このあともカエルとか牛とかの花火に興奮していた」
仁藤 葵「あ~終わっちゃった」
津西 大輔「また少し待てば」
仁藤 葵「ホント、じれったいね」
津西 大輔「え、うん・・・」
仁藤 葵「なに? さっきからジロジロみて」
津西 大輔「いや、別に」
津西 大輔「花火の音とともに彼女が緑色に」
仁藤 葵「フフッ、気になるんでしょ、私がどうして死んだか」
津西 大輔「あ、その・・・ちょっとね」
津西 大輔「優しくしてくれたからと葵は右手首の袖をめくると、」
津西 大輔「リスト・カット・・・」
仁藤 葵「うん、わたし自殺したの、15年前に・・・」
津西 大輔「痛々しい傷跡。オレは頭が真っ白でまるで時が止まったよう、それでも花火だけは鳴り続けた・・・」

コメント

  • 幽霊に出会った後の大輔の言動がリアルな感じで面白い。次の日もちゃんと同じ場所に行くのがいいですね。人生に疲れを感じている高校生と自ら命を絶った少女との出会いがどのような化学反応を起こすのか、これからの展開が楽しみです。

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