悪代官の密約

ガンダーラ磯崎

第3話「ゲット・ザ・マネー」(脚本)

悪代官の密約

ガンダーラ磯崎

今すぐ読む

悪代官の密約
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇屋敷の門
  飲食店のベテラン店員、坂田は、
  鬼ケ原が店に置き忘れた保険証を渡すため、
  愛菜と共に鬼ケ原の豪邸へ向かった。
坂田「行くでー!!」
愛菜「オー!!」
  ついでに、足りない分の飲食代を
  請求する覚悟を決めていた。
坂田「取ったるでー!」
愛菜「オー!!」
  第3話「ゲット・ザ・マネー」
  鬼ケ原夫人「はーい」
坂田「ごめんください。 河内食堂の坂田でございます」
  鬼ケ原夫人「はい、どういたしました?」
坂田「昨日、鬼ケ原さんがお店に保険証を お忘れになりましてね」
  鬼ケ原夫人「あらま!」
坂田「お届けに来たんです〜」
  鬼ケ原夫人「さようでございますか。
  では中へお入りください」
坂田「お邪魔いたします〜」
坂田「第一関門突破やな」
愛菜「ここからですね」

〇屋敷の大広間
鬼ケ原夫人「わざわざ亭主の保険証を届けて頂き ありがとうございます!」
坂田「いえいえ、とんでもないです」
鬼ケ原夫人「今、亭主が来ますんで、お茶菓子でも お召し上がりになってくつろいでください」
坂田「ご丁寧にすんません」
鬼ケ原夫人「失礼いたします」
坂田「感じの良え奥さんやな〜」
愛菜「これ15000円する高級チョコですよ!」
坂田「ホンマに?」
愛菜「これも1万円する高級マドレーヌ!!」
坂田「はあ〜、これだけで飲食代超えてるやん」
愛菜「せっかくなんで、いただきましょうか?」
坂田「ちょっと待って!」
愛菜「え?どうしたんですか?」
坂田「全部持って帰ったろ」
坂田「そのくらいしても良えやろ。 踏み倒しとんのやから」
愛菜(品がないわ〜)
坂田「品がない思ってる?」
愛菜「え?そ、そんなこと全然思ってません!」
鬼ケ原「お待たせ〜」
坂田「昨日はありがとうございました」
坂田「これ、お忘れになった保険証ですわ」
鬼ケ原「わざわざ持って来てくれたんか!」
坂田「連絡先が分からんので、  直で持って来た方が安全や思いましてん」
鬼ケ原「そんな気い使てくれて ホンマありがとな!!」
鬼ケ原「これ無かったら、医者にもろた薬 ぜんぶ自腹で払わなあかんからな」
鬼ケ原「高血圧の薬、頻尿の薬、胃薬、坐骨神経痛 膝軟骨、眼精疲労、痛風、食欲不振 絶倫薬、水虫、毛じらみ、いぼ痔、切れ痔」
鬼ケ原「めっちゃ健康やろ?」
坂田「鬼ケ原さんのような方が 来ていただけるだけで ありがたいですわ」
坂田「ビールやおつまみ、 ぎょうさん注文していただいて」
坂田「豪華なお誕生日ケーキも出させて もらいましたし」
鬼ケ原「あっ!」
鬼ケ原「ワシら、ちゃんと金払うたか?」
鬼ケ原「みんな酔うてて覚えてへんねん」
坂田「一応、2万ほど頂戴しました」
鬼ケ原「2万!?」
坂田「はい!たった2万ですわ。たった」
鬼ケ原「あんだけ呑み食いして2万かいな?」
愛菜(イケる!これイケる!)
鬼ケ原「ホンマ安くてええ店やな!」
鬼ケ原「これからは元旦だけやなくて、 チョイチョイ行ったるわ!!」
愛菜(店潰れちゃう!!)
鬼ケ原「ほな!」
坂田「・・・」
坂田「・・・あきらめよか」
愛菜「ここまで来てあきらめるんですか?」
愛菜「あきらめたらそこでアレですよ!」
坂田「どれや?」
鬼ケ原「忘れとったわ」
坂田「どうしました?」
鬼ケ原「こんなとこまでわざわざ 来てくれたんやから、」
鬼ケ原「ほれ!お車代や」
坂田「ちょ、ちょっとそれは!!」
坂田「うちの店、ハワイとちゃいますよ? すぐそこですよ?」
鬼ケ原「少し多すぎたか?」
坂田「これは、いくらなんでも」
坂田「よろこんで頂戴いたします」
鬼ケ原「どないやねんな!」
愛菜(ガ、ガメつい!!)
坂田「愛菜ちゃん、今ガメつい思たやろ?」
愛菜「はい、思いました!」
鬼ケ原「それじゃ、また今度行くわ!」
愛菜「あっ!鬼ケ原さん、 ちょっと待ってください!」
鬼ケ原「ん?お姉ちゃん、誰や?」
愛菜「河内食堂で働いてる愛菜と申します」
愛菜「昨日、鬼ケ原様の席にお食事を運ばせて いただいたんですが・・・」
愛菜「覚えてらっしゃいませんか?」
鬼ケ原「あ〜、あの可愛い店員さんか」
愛菜「そうです! 美人すぎる店員です!」
坂田「そこそこやろ」
愛菜「あのー、昨日、鬼ケ原様がおっしゃられた お誘いをお受けしたいと思ってまして・・・」
鬼ケ原「お誘い?何や?」
愛菜「鬼ケ原様、私に「孫の嫁にならんか?」 っておっしゃいましたよね?」
鬼ケ原「覚えてへんなあ」
鬼ケ原「なんか証拠でもあるんか?」
愛菜「ございますよ」
鬼ケ原「何や?証拠があんなら出してみい」
愛菜「じゃあこれ聴いてください」

〇黒背景
愛菜「お待たせいたしました!」
愛菜「おつまみ3種盛り合わせになりまーす!」
鬼ケ原「姉ちゃん可愛いのう」
愛菜「あ、ありがとうございまーす!」
鬼ケ原「孫の嫁にならんか?」
愛菜「え、そ、そんな・・・」

〇屋敷の大広間
愛菜「ね?おっしゃってましたでしょ?」
鬼ケ原「言うとるな・・・」
坂田(何やこの子?うさんくさいわ〜)
鬼ケ原「この録音は、他の会話も録ってんのか?」
愛菜「いいえ。録っておりません」
愛菜「鬼ケ原様のお誘いだけを ありがたく録らせていただいたんです」
坂田(何やこの子?うさんくさいわ〜)
鬼ケ原「ホンマやろうな?」
愛菜「はい!神に誓ってホンマです!」
鬼ケ原「なかなか根性すわっとるやないか」
鬼ケ原「ほしたら、今度うちの孫と食事でもしよか?」
愛菜「え!?ほんとですか!?」
鬼ケ原「ホンマも何もホンマやないか!」
愛菜「はい!お願いします!!」
愛菜「鬼ケ原様、ほんとに優しんだけどー!!」
愛菜「器デカいし、ダンディだし、 最高なんだけどー!!」
鬼ケ原「君ええなあ!!」
鬼ケ原「ワシの嫁にしたいくらいやわ!」
愛菜「めっちゃうれしんだけどー!!!!」
坂田(何やこの子!ホンマにうさんくさいわ〜)

〇屋敷の門
愛菜「坂田さん?」
坂田「何や?」
愛菜「私のこと「何やこの子、うさんくさいわ〜」って、思ってました?」
坂田「当たり前やろ!」
坂田「何でお客さんの会話を録音してんねん!」
愛菜「あれは、店長さんが元旦の店内を動画で 録っといてくれって言われて」
愛菜「たまたま会話が残ってただけです!」
愛菜「もし訴えられるなら、店長さんの責任に なりますよ!」
坂田「まあ、それはええとして・・・」
坂田「あんな偉い人にグイグイ入ったらアカン! ヒヤヒヤしたわ!!」
愛菜「でも一か八かで「一」に転んだでしょ?」
坂田「んなもん、たまたまや!」
坂田「あんまり勘違いしたらエラい目合うで! 気をつけや!!」
愛菜「玉の輿に乗るには、リスクから逃げる事は 出来ないんです」
愛菜「たった1度のチャンスを掴みたいんです!!」
坂田「あんた、あの人が何モンか知ってたんか?」
愛菜「なんとなく偉い人って事だけは 気づいてましたけど・・・」
愛菜「鉄道会社の重役さんと知ったのは、 自宅に入った時の・・・」
愛菜「賞状や記念品で知りました」
坂田「なんや。 完全に狙い打ちしてるんか思てたわ」
愛菜「ぼんやりとしか教えてくれなくて・・・」
坂田「え?誰が?」
愛菜「いや、な、何でもないです!」
愛菜「そろそろお店の準備しなくちゃ!」

〇屋敷の大広間
鬼ケ原「もしもーし!」

〇田舎駅の改札
鬼ケ原優希「もしもし?爺ちゃん?うん、うん、 え?ホンマに?」
鬼ケ原優希「そんな可愛いなら1度会ってもええよ」
鬼ケ原優希「うん、じゃあまた連絡してやー」
駅員 里中「駅長!」
鬼ケ原優希「どないしたんや?」
駅員 里中「ちょっと酔っぱらいの男がホームで 暴れとるんですが」
駅員 里中「警察呼んでもよろしいでしょうか?」
鬼ケ原優希「知らん」
駅員 里中(ホンマどうにもならん奴やで!!)

〇古民家の居間

〇研究機関の会議室
兵頭「もしもし?お疲れ様です」
兵頭「ええ、昨日の店員さんを調べれば よろしいんですか?」
兵頭「他にもある?何でしょうか?」
兵頭「ええ、ええ。それは可能ですよ」
兵頭「はい、それではまたよろしゅうたのんます」
  ────────つづく──────

コメント

  • 相変わらずボケツッコミのテンポがいいですね。鬼ヶ原の最初の移動、必要なのかと突っ込みたくなる謎の出現エフェクトも楽しかったです。
    そして後半一割くらいのところで急展開がだだだっと差し挟まれて「次回!」ってなるのも楽しいですね。

    そういえば病気の名前が並んでるとこ、二行目はAndroidだと二文字オーバーで改行されます。もし気にされるなら。

  • 笑い声の効果音のピッタリの会話が繰り広げられる中での、曲者だらけのキャラクターときな臭いストーリー展開がたまりませんね!濃ゆいキャラたちの群像劇、最高です!

  • 1話の居酒屋の描写が本当に楽しそう&黒い感じの演出が自然でお話の世界に入り込みやすかったです😆
    「反社なのか、そうじゃないのか、本当にいい人なのか……?どっちだ?!」のぶん回しが巧みで楽しいっす……!

成分キーワード

ページTOPへ