マルヒとデカ

キリ

オリジナル(脚本)

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〇渋谷の雑踏
  夜の街には、良からぬことを企み
  憧れだけで留まれば、警察が動かなくて
  済むことを、なぜか実行しやがる、
  まぬけな輩が動き出す──
  そんな奴らを、今夜も
  お縄 頂戴してやんぜ?
  窃盗容疑で指名手配中の
  為里 怜臣容疑者が、○区5丁目で
  目撃されたとの通報あり
  近隣の警察官は、至急応援に向かってくれ
刑事「了解」
刑事「この近くか」
刑事「よし」

〇渋谷の雑踏
刑事「お」
  デカが見つけた容疑者は、通行人の
  服のポケットに入っていた財布を
  目にも止まらぬ早業で抜き取り
  嬉しそうにしながら歩く姿を
  目の当たりにした
刑事「あいつ!間違いねえ」
刑事「ちょっと良いか?」
ぼくたん「え、なに?」
ぼくたん「って、サツ? ? !」
ぼくたん「ひぃっ!」
刑事(フン、逃走は想定内だ)
刑事「待て!」

〇渋谷の雑踏
刑事「待てええええええーー! ! !」
ぼくたん「へへっ待つかよ♪」
ぼくたん「そらよっと」
刑事「うっ!」
  男は警察の追跡を止めようと
  その場にあったダンボールを崩した
刑事「・・・」
刑事「くっ、フリーズしちまっただろうが 驚かすな」

〇渋谷の雑踏
刑事「ハァハァ・・・」
刑事「くっそ、噂通り足が早えな・・・」
刑事「こうなったらっこっちに!」

〇渋谷の雑踏
ぼくたん「あっれえ〜」
ぼくたん「いつの間にか追ってきてないやんけ」
ぼくたん「あっけなwww」
刑事「警察をナメるな!」
ぼくたん「えええっ!」
刑事「午後8時23分、為里 怜臣、通称ぼくたん!」
刑事「窃盗罪で逮捕!」
ぼくたん「えええ? ? ? ? ちょちょちょ待って?」
ぼくたん「え、俺のことなんつった?」
刑事「あん?」
刑事「為里 怜臣だろ?」
ぼくたん「いやそのあとよ!そ・の・あ・と!」
刑事「通称ぼくたん」
ぼくたん「は?」
ぼくたん「なんじゃそれ?」
ぼくたん「カワイイんだが〜〜」
刑事「喜べ?女の警察官が名付けたんだ」
刑事「ぼったくり犯だから、通称ぼくたんだとさ」
ぼくたん「へえ〜いいな〜」
刑事「んなことより、窃盗罪で逮捕」
  デカはぼくたんの右手に手錠をかけた
  左手に手錠をかけようとした その時──
  男性の悲鳴が二人の耳に入った
ぼくたん「い、今のって悲鳴?」
ぼくたん「空耳じゃあ・・・無いよな?」
刑事「・・・」
ぼくたん「おい警察!空耳じゃねえよな?って 俺聞いてんだけど? ?」
刑事「・・・っ」
刑事「お前、なんてことしやがる・・・」
ぼくたん「な、なに怒ってんの?」
刑事「お前が手錠をかけようとした左手を 急に動かしたもんだから」
刑事「俺の左手に手錠付いちまったじゃねえか!」
ぼくたん「はあ?」
ぼくたん「んなことで焦るこたねだろ!」
ぼくたん「付いたなら外せばいいだけじゃん!」
刑事「・・・」
刑事「手錠ってのはな、犯人に違法行為を させまいと厳重なんだ!」
刑事「そんな簡単に外せるもんじゃねえんだよ!」
ぼくたん「知るかよ!じゃあどうすんだ?これえ!」
刑事「チッ・・・」
刑事(男の悲鳴が気になる・・・)
刑事(速く現場に急行したい・・・っ)
刑事(この状態ではあるが、 聞き手(右手)の自由はきく)
刑事(いざって時が来たら、銃をとって 片手だけで発砲できる)
刑事(ぼくたんと繋がられてる今、 こいつが何を盗ろうが逃走できまい)
刑事(よし、冷静に現場を対処できる!)
ぼくたん「・・・っ?」
刑事「お前、足の速さに自信があるんだよな?」
ぼくたん「まっまあな、学生時代は サッカーやってたし、走ることは得意だ」
刑事「じゃあ、これから走ることがあれば 俺の手首が壊れるとか思うな、迷わず走れ」
刑事「事件解明が何よりも最優先だからな」
ぼくたん「要はそれって・・・」
刑事「行くぞ!」
ぼくたん「犯人逮捕に強要・・・うわああっ!」

〇銀行
刑事「うっ! ! ! !」
  悲鳴が聞こえた方向には、銀行が建ち、
  悲鳴の主は、おそらく出入り口で
  負傷している人物だろう
  変わり果てた姿を、二人は目撃した
ぼくたん「俺 初死体」
刑事「俺は日常茶飯事だ」
ぼくたん「ああ〜ハハッ だからフリーズしないんだぁ〜」
刑事「っどういう意味だ?」
ぼくたん「あんた、突拍子も無いことが起きると フリーズしちまうタチだろ?」
刑事「(ギクッ)」
ぼくたん「ここに来るまで、びっくりすることが 起こるとフリーズしてるもんバレバレ」
刑事「・・・乗り込むぞ」
ぼくたん「おいおいおい!」
ぼくたん「あんた無謀だろ、策はあんの? ましてや左手の自由利かないくせに」
刑事「ああ、ある」
ぼくたん「かっこよ✨」
ぼくたん「って!それでもあんたが行動すんだから 俺も行かなきゃなんないじゃん!」
ぼくたん「俺は嫌っ!」
ぼくたん「いや〜〜〜〜〜!」

〇グレー
刑事「警察だ!なにやってる こんな夜遅くに」
犯人「黙れえぇ! ! !」
犯人「お前ら!警察呼びやがったな! !」
刑事「偶然通りがかっただけだ、だから 誰も傷つけるな!」
犯人「警察が嘘つくんじゃねえよ! んな偶然あるわけねえ!」
刑事「ぐっ」
刑事(ごもっともか、興奮状態のあいつには 説得が無さすぎるか)
ぼくたん「このサツの言うことに、間違いはねえよ」
犯人「ああ?誰だてめえ!」
刑事(しめた!)
刑事「うおおおりゃあ!」
ぼくたん「アァァァアァアァァァアァ!」
犯人「ぅぐはあっ!」
  犯人の注目が、刑事からぼくたんに
  変わった一瞬の隙をつき、
  刑事は、ぼくたんを両手で掴んで
  身体ごとぶん回した
  勢いと共に、犯人の脇腹をぼくたんの
  両足キックがヒットした
刑事「よし、ナイフを・・・!」
ぼくたん「あーそりゃもうOK」
ぼくたん「ほれっ」
刑事「え・・・」
ぼくたん「蹴飛ばしたのと同時に盗んでやった」
ぼくたん「ほら、俺ってば ぼったくり犯だから?」
刑事「・・・」
刑事「やるじゃねえか」
刑事「さすがサッカー部所属」
ぼくたん「いやサッカー関係ない!」
ぼくたん「なんなら俺ボールの気持ちになったわ!」

〇銀行
  ナイフを持っていたのは銀行強盗犯で
  恐喝及び公務執行妨害の罪で逮捕された
  ぼくたんはというと、窃盗罪のみで
  現行犯逮捕となった
刑事「はい、外れましたよ」
刑事「助かった、ありがとう」
刑事「ようやく、お前の左手にかけられるわ」
ぼくたん「あーーー嬉しいなあーーー」
刑事「・・・」
刑事「逮捕だ」
ぼくたん「なあ、いつ自由になれるんだ?」
刑事「裁判次第だな」
刑事「だが、」
刑事「お前のぼったくりのお陰で、 銀行強盗を抑えることができた」
刑事「例を言うぞ」
ぼくたん「っ!」
刑事「刑が軽くなるとも言えないが、今回のことは署で良いように報告しといてやる」
ぼくたん「あんたってさ、」
ぼくたん「見かけによらず、素直なのね〜」
刑事「何がだ?」
ぼくたん「無自覚かよっ!」
  こうして、夜の事件簿は
  ピリオドを落とした──

〇車内
ぼくたん「なあ」
刑事「なんだ」
ぼくたん「俺にぼくたんって付けた女警察官、 紹介してくれよ」
刑事「あ?」
ぼくたん「いいだろ〜?」
刑事「・・・」
刑事「もう遅いし、明日にしろ」
ぼくたん「あ!約束したな!」
ぼくたん「警察は逃げるは無しな? ちゃーんと約束守れよ?」
刑事「分かったから黙れ」
「わたしに会いたいの?」
「いいよ〜」
「まあ〜嬉しいこともあるもんだね」
「わたし御年86だけど」
「ぼくたんが会いたいなら、喜ばしや〜」
「お化粧しなきゃねえぇ」
「あら、お肌荒れてるわ──」
ぼくたん「誰だよ? !このババア!」
刑事「俺の祖母」
刑事「現役なんだ」
ぼくたん「警察にだまされるなんて・・・」
ぼくたん「もういい、牢にぶちこんでくれぃ」

コメント

  • ぼくたんってニックネーム可愛らしすぎてキュンでした😂💕
    最初は警察とぼったくり犯というだけの関係性だったけど途中からいいコンビになっていておもしろかったです😁

  • 通称ぼくたん(笑)。おばあちゃん、ネーミングセンスありますね。刑事と犯人がまさかの一心同体のボディ、じゃなくてバディになった瞬間でしたね。手錠で繋がれている時だけなぜか協力して犯人逮捕に至るドタバタバディものとしてシリーズ化してほしいくらいです。最後、刑事さんがぼくたんにこっそり拳銃抜き取られてないか心配。

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