32話 邪魔したい(脚本)
〇屋敷の書斎
ナーヤ・ガーヤ「・・・俺がその、ギルド長だったんだよ だから居場所の情報を買うまでもなくアンタは会えてるし、交渉もできてる」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・き」
ナーヤ・ガーヤ「き?」
き、気まずううううううッ!!
本人に妄想聞かれたああああああ──!!
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ほ、本当に申し訳ございませんでした!!」
ナーヤ・ガーヤ「いや・・・まあ、別にいいけど」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「あの・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「貴方が元のギルド長なら、返事が聞きたい」
ナーヤ・ガーヤ「情報ギルドを終わらせなかったのは、あそこを居場所にしている奴らが多かったからだ」
ナーヤ・ガーヤ「俺が知る限りじゃ、もう別の居場所を見つけてる奴がほとんどで、今残ってるのはリンと少数人・・・」
ナーヤ・ガーヤ「全員が別の居場所を見つけたら、情報ギルドは終わる、だからそんな宣言はいらないと思ってた」
ナーヤ・ガーヤ「公爵令嬢がリンに協力してからは新しい人も増えてなぁ・・・。だから──」
ナーヤ・ガーヤ「もう俺の情報ギルドじゃなくて、あいつのギルドなんだって、何度も伝えた」
ナーヤ・ガーヤ「それでも諦められないんだよ 俺たちが戻ってきて、昔みたいに俺たちとワイワイ騒ぎたいんだ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺たち?」
ナーヤ・ガーヤ「情報も売ってたけど傭兵ギルドでもあったんだ。と言うかそれが本業だな 今は傭兵ギルドとして活動してるんだよ」
ナーヤ・ガーヤ「隠れながらな」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「何から隠れてるんだ?」
ナーヤ・ガーヤ「皇帝からだよ。俺たちは帝国の危機にもなる情報を売ってたし、雇われれば敵国の援軍としても動いた」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「何でそんなことしたんだ?」
ナーヤ・ガーヤ「ある病が流行ってたんだ。今は簡単に治せる病だけど、その頃は人がバタバタ倒れてく、そんな怖い病だった」
ナーヤ・ガーヤ「ギルドのメンバーも半分くらい掛かった 死んだ奴もいた。帝国の研究者や医者が各地を回ってた」
ナーヤ・ガーヤ「でも、治療してもらうのに莫大な治療費が必要だった 治療は身分の高い人たちが優先された」
ナーヤ・ガーヤ「みんなが苦しんで死んでいくのを見ていることしかできないんだ、みんながそう言ったし、思った」
ナーヤ・ガーヤ「そんな時、敵国に力を貸せば、帝国の治療費の半分でなおしてくれるって言われた」
ナーヤ・ガーヤ「別れたくなかった、どうしても」
ナーヤ・ガーヤ「その後にどんなに辛いことが待ってようと、みんながいるなら、支え合えるって信じたからだ」
ナーヤ・ガーヤ「実際、不自由はしてねえ 大人しくしておけば、何も起きねえから」
ナーヤ・ガーヤ「・・・?」
ナーヤ・ガーヤ「な、何泣いてんだよ!?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ご、ごめん・・・!! その頃の気持ちを考えたら涙が止まらなくてええ!!」
ナーヤ・ガーヤ「ほんと、想像豊かだよなぁ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「大丈夫か? 興味本位で聞いて、思い出させてごめん」
ナーヤ・ガーヤ「・・・やっぱり、そう言うことなのか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「何?」
ナーヤ・ガーヤ「何でもねえ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「聞いてもいいか? 俺たちがテルヌンドに行ってたことは知ってるんだよな? でもエンシェン・リンには偽情報を売った」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「どうしてなんだ?」
ナーヤ・ガーヤ「それは・・・」
ナーヤ・ガーヤ「・・・」
ナーヤ・ガーヤ「・・・・・・」
ナーヤ・ガーヤ「──言えないって、言ったら、あいつら怒りそうだよな。俺らしくないってさ」
ナーヤ・ガーヤ「一目惚れって奴だよ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・・・・・・・。 ・・・一目惚れ?」
ナーヤ・ガーヤ「アンタと、アンタの召使いの話聞いてただろ? あの時からアンタのことが気になってて・・・」
ナーヤ・ガーヤ「情報を売ったのも、”会ったばかりの奴に売るなんて珍しいな”とか、”何で売ったんだ?”とか、ニヤニヤしながら聞かれて」
ナーヤ・ガーヤ「よくよく考えたら、女の子をかわいいって思うことがあっても、初恋ってまだだなって・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・はつ、こい?」
ナーヤ・ガーヤ「アンタ、綺麗な顔してるだろ? で、なんか、ふわふわ〜って、してんじゃん?」
ナーヤ・ガーヤ「でもアンタ男だから、認めるのが難しくて。観察してたら──」
ナーヤ・ガーヤ「あいつらが”何見つめてんだよ”とか、”お前の初恋相手俺にも見せろ”とか、言ってきて・・・みんなで見てたら、見つかった」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・」
ナーヤ・ガーヤ「いつの間にか偽情報売ってたんだよ アンタのこと、好きだから」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺が好き?」
ナーヤ・ガーヤ「そう、アンタに一目惚れした。リンなんかじゃなくて、アンタに初恋した」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(理解が追いつかないんだけど? 今まで普通に話してて急に初恋って言われてもなぁ。て言うか、告白のトーンじゃない)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(本気なのかどうか全然わからない)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「冗談だよな?」
ナーヤ・ガーヤ「本気だってことを、教えればいいのか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(なんか近づいてきた・・・!!)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「な、何だよ。離し──」
ナーヤ・ガーヤ「好きだ」
ナーヤ・ガーヤ「──・・・」
な、何で目ぇ瞑って顔近づけてくんの!?
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ちょ、待って──」
ち、近い──
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「わ、わかった! 本気だってわかったから待って!!」
ナーヤ・ガーヤ「こんなチャンスを無駄にすると思うか? いやなら本気で抵抗しろよ」
ナーヤ・ガーヤ「あ、あああああ、危ねえな!? 殺す気か!?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「本気で抵抗しろって──・・・」
ナーヤ・ガーヤ「いいだろ、キスくらい」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ダメだ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「そう言うことは好きな人同士ですることだ・・・!」
ナーヤ・ガーヤ「んだそれ、かわいい・・・」
ナーヤ・ガーヤ「でもよぉ、情報代は払ってくれないと。今は金よりお前が欲しいから、報酬は俺のほっぺにキスでいい」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「す、好きな人にしかしたくない・・・」
ナーヤ・ガーヤ「リンには、解散しないで頑張ってくれ、とでも伝えるか」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(何だこの人、ズルイ──!!)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(うう・・・やるのか? やるしかないのか?)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(でもおお──!!)
ナーヤ・ガーヤ「・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ひえ!?」
ナーヤ・ガーヤ「チッ・・・あと少しだったのに」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「するから、そこでじっとしてろ──!!」
ナーヤ・ガーヤ「わかってるねぇ ・・・そうこなくちゃ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・」
ナーヤ・ガーヤ「・・・・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「目、瞑って・・・くれない?」
ナーヤ・ガーヤ「いやだね」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(耐えろ!! すぐ終わらせるんだ──!!)
ナーヤ・ガーヤ「ありがとうございました〜 またのご利用をお待ちしておりま〜す♪」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(む、ムカつく・・・こんなことしなきゃならないなら、二度と頼まない──!!)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「帰る!!」
ナーヤ・ガーヤ「くくっ・・・かわいい」