魔王の娘、おつかいに行く(脚本)
〇謁見の間
異世界、ウルディアス。
そこでは魔物と人間が熾烈な戦いを繰り広げていた。
そんな中魔王アフトは愛娘イーリアを呼び出していた。
アフト「イーリアよ、何故呼ばれたのか分かるか?」
イーリア「えー? あたしがとっても可愛過ぎるから?」
アフト「否定しないが、そうではない」
アフト「お前に試練を言い渡す。 そのために呼んだのだ」
イーリア「試練!?」
アフト「お前ももう5歳だ。よって、王家に伝わる試練を受けてもらうぞ」
イーリア「でもパパ、こんないたいけなあたしに試練なんて・・・」
アフト「これは決まりなのだ。つべこべ言わずに受けてもらうぞ」
アフト「試練のお題・・・それは」
アフト「”おつかい”だ!!!!」
イーリア「・・・・・・」
イーリア「え?」
アフト「城下町の八百屋で次から言うものを買ってこい。お小遣いは渡してやる」
イーリア「え?パパ?」
アフト「ほら、メモしなくていいのか? 一つでも買い忘れたら試練失敗だぞ」
イーリア「え、あ、わかったわ!!」
アフト「八百屋で人参、玉葱、ジャガイモ。 肉屋で牛肉を買ってくること。 お小遣いが余ったらお菓子を買ってもいい」
アフト「それと、これが一番大事だ。 時計が6時を指す前には帰ってきて、私に報告すること。いいな?」
イーリア「ねぇパパ、そんなの魔法を使えば簡単よ? わざわざ試練にしなくても・・・」
アフト「魔法禁止だ」
イーリア「えっ!? じゃあメイド達に行かせれば・・・」
アフト「自分で行け」
イーリア「ぐぬぬ・・・」
イーリア「こーんなに可愛くてこーんなに高貴なあたしが誘拐されたらどうするのよ!!」
アフト「安心しろ、二人だけ連れて行ってもいい しかしその二人に買い物をさせるのはダメだぞ 見てるからな」
イーリア「むうう・・・」
〇商店街
魔界はずっと夜。
なのでずっと暗いままである。
イーリア「なんであたしがこんな事・・・」
ラハン「まぁまぁ姫様、いいじゃあないですかぁ お買い物、楽しいですよぉ?」
ランケン「そうです、イーリア姫。 ですが油断はなりません。これはあくまでも試練なのですから」
イーリア「ふん!こんな試練、すぐ突破してやるんだから!!」
保護者枠として引き連れた二人の従者に見守られながら、イーリアは八百屋に辿り着いた。
イーリア「そこの者!!」
ランケン「ちょっと!!いきなりそんな高圧的に・・・」
八百屋さん「おお、お嬢さん 何か探しものかい?」
ランケン(温厚な方で良かったわ・・・)
イーリア「あたしに相応しい・・・」
イーリア「・・・えっと・・・」
八百屋さん「?」
買ってくるものを忘れてしまいもじもじとするイーリア。
するとイーリアの脳裏にメモのことが思い浮かんだ。
イーリア「そうだわ!!」
イーリア「えっと・・・ 人参、玉ねぎ、ジャガイモをくださる?」
八百屋さん「なるほどねぇ これでいいかい?」
イーリア「あら、ありがとう!!」
八百屋さん「お代は240ゴールドだよ」
ラハン「少し値切ってみます?」
ランケン「こら、ラハン まだ値切りは早いわ」
イーリア「240ゴールドね・・・ はいどうぞ!」
八百屋さん「どうもありがとねぇ」
イーリア「ふん!当然のことよ!!」
八百屋での買い物を終え、ご満悦のイーリア。この調子で肉屋での買い物も終え、イーリアは駄菓子屋にいた。
ラハン「・・・ランケン、イーリア様は無事に買うべきものを買えたみたいだねぇ」
ランケン「ええ。けれどここからが本題よ。 ちゃんと6時までに帰れるか・・・」
イーリア「ふたりとも見なさい!!あなた達のぶんもクッキーを買ってあげたのよ!!」
ラハン「わぁ、ありがとうございますぅ」
ランケン「大切に食べますね ですが良いのですか? そろそろ6時に・・・」
イーリア「え?」
時計を見ると、既に5時30分を回っていた。
イーリア「急がなきゃ〜!!!!」
走り出すイーリア。
しかし少し走ると前にいた人にぶつかってしまった。
イーリア「あっ、な、何よ!! 退きなさい!!」
暴れん坊な魔物「あ゛?」
イーリア「きゃあ!!」
暴れん坊な魔物「お前見ない顔だな ちょっとツラ貸せや!!」
イーリア「な、なんて野蛮な・・・」
ラハン「姫様!!ここは僕達に任せてください!!」
ランケン「こいつは食い止めます!!」
「姫様は先に行ってください!!」
イーリア「なんだか死亡フラグな気がするけど・・・ 絶対負けないでね!!」
イーリアは走り続けた。
一人で、暗い道を。
途中転んだけれど、
彼女は諦めなかった。
そして・・・
〇謁見の間
アフト(もう少しで6時・・・ さて、イーリアは・・・)
イーリア「た、ただいま帰りました!!」
アフト「うむ では買い物の成果を見せてもらおう」
イーリア「はい!!」
アフト「・・・おお 合格だ」
イーリア「本当に!? やったわ!!」
アフト「ラハンとランケンも守ってくれたようだな」
アフト「死亡フラグは建てたが」
イーリア「ふふ、あたしの自慢の従者よ!!」
イーリア「さーて、ママにカレー作ってもらいましょ」
アフト(危ないときは仲間を頼り、 お金の使い方を覚え、 民と関わり合う・・・)
アフト(これらは良き王になるためにも 必要なことだ)
アフト(イーリアは無事にそれを身に着けたようだな)
イーリア「コック長!!今すぐあたしに超高級チョコを献上なさい!!」
アフト(身につけた・・・のか?)
終わり
試練……という名のはじめてのおつかい感が強くて、ほっこり笑ってしまいました!
イーリア姫様、これは愛すべきキャラクターですね!
一人で買い物するのはやっとこさだけど、憎まれ口だけは一人前なイーリアちゃん、なんだかものすごく可愛いですね。死亡フラグが立ったまま帰ってこないラハンとランケンがなかったことになってて(笑)。
5歳でちゃんとおつかいできてとても偉いなあと思いました👏
しかもお菓子を買う時に付き添いの2人にまで買ってあげるなんて、優しい子でほっこりしました☺️