エピソード37(脚本)
〇奇妙な屋台
ザー ザー ザー
店主「あらーすごい雨ー!」
謎占い師「そうですね。 台風が来ているようでして、 しばらく大雨が続くようですよ」
店主「すごい雨が 降ってきちゃったから きょうはもう店じまいね!」
店主「天気ばかりは 仕方ないわよね」
店主「後はワタシが片付けるから、 あなた達も早くお帰りなさい」
店主「明日も雨が酷いようなら 開店見合わせるから。 後で連絡するわ」
謎占い師「わかりました。 では、お言葉に甘えて。 いきましょうマッチョさん」
謎マッチョ「うむ」
店主「じゃあねー 気をつけてね」
〇コンビニ
ザァーーーー
バシャバシャバシャ
ナヤミ「はぁ・・・ びっしょりだ」
ナヤミ「なんで俺 こんなツイテナイんだろう」
ナヤミ「いっそのこと、もう・・・」
「ねぇ」
ナヤミ「ん?」
マイコ「待ってたよ、おじちゃん」
ナヤミ「わっ びっくりした」
マイコ「こっち向いてよ。 ワタシだよ、マイコ。 忘れたの?」
ナヤミ「忘れるわけ、ないだろう?」
ナヤミ(恥ずかしくって 向けるかよ・・・)
マイコ「トニカク中に入ろうよ」
〇コンビニのレジ
ピロリロリローン
コンビニ「らっしゃせー」
コンビニ2「せー・・・」
マイコ「もー、土砂降りのせいで 服がぬれちゃったしー」
マイコ「ん?」
コンビニ2(か、かわいいぃ)
コンビニ2(しかし、 どっかで見覚えがあるな・・・)
マイコ「どした?」
コンビニ2「へ、へへへへ・・・」
マイコ「変なのー」
マイコ「おじちゃん! こっちにカムカムの最新号売ってるの! 見てみてー!」
コンビニ2(あ!雑誌に載ってた!)
ナヤミ「あー・・・」
コンビニ2(なんだ?あのオッサンは?)
コンビニ2(変な関係じゃないだろな?)
コンビニ「どした?」
コンビニ2「・・・」
コンビニ「無口だよね、君」
〇コンビニの雑誌コーナー
ザー
マイコ「ねー、これ! 載ってるよ!ワタシ」
マイコ「おじちゃんの作った雑誌じゃん!」
ナヤミ「俺じゃねぇよ・・・ もう他のヤツのものだからよ・・・」
マイコ「どういうこと?」
ナヤミ「取られちまったんだよ、全部。 借金のカタに。 事務所も機材も人も全部、な」
マイコ「ええー!」
ナヤミ「もうオシマイなんだよ、俺。 全てを注ぎ込んだモノを 全部奪われたんだ」
ナヤミ「もう疲れたんだよ・・・」
マイコ「そんなこと・・・言わないでよ。 ワタシで良ければ力になるよ?」
ナヤミ「・・・オマエは帰れよ。 家族が心配するだろ」
マイコ「心配なんかしないもん。 おじちゃんのが心配だよ」
ナヤミ「・・・」
〇コンビニのレジ
ピロリロリローン
謎占い師「ふぅ」
コンビニ「らっしゃせー」
コンビニ2「せー」
コンビニ2(すげぇマッチョだな)
謎占い師「あんなに降ってきてしまって 困ったものですね」
謎マッチョ「公園の近くに コンビニができて良かった」
謎占い師「商店街の人は足が遠のかないか 心配な方もいるらしいですよ?」
謎マッチョ「ここは、公園のオーナーが やってるところだから 商店街の一員だし 迷惑かけたりはしないだろう」
謎占い師「そうなんですね」
〇コンビニ
バシャバシャバシャ
強盗「・・・」
強盗「もうやるしかないんだ!」
〇コンビニのレジ
ピロリロリローン
コンビニ「らっしゃせー」
コンビニ2「せー」
コンビニ2「え?」
強盗「全員動くな!」
強盗「金を出せ!」
〇コンビニの雑誌コーナー
マイコ「きゃっ!」
マイコ「おじちゃん! あれ!あれみて!」
ナヤミ「んー?」
マイコ「あの人!包丁振り回してる!」
ナヤミ「あーそう」
マイコ「おじちゃん!?」
ナヤミ「俺もうオシマイだからな。 それもいいかもしれない」
マイコ「何言ってんのよ、おじちゃん! ダメだよ!」
〇コンビニの店内
謎占い師「ん?なんか向こうが 騒がしいようですね」
謎マッチョ「こっそりと見てみるか」
〇コンビニのレジ
コンビニ2「センパイ・・・」
コンビニ「こ、こういうときは 非常ボタン・・・」
強盗「動くなって言っただろう! 刺されたいのか!」
コンビニ「ヒエッ」
強盗「そうだ!手を上げておけ! 余計なものを触るんじゃねえ!」
強盗「おい!そこの女! コッチへ来い!」
〇コンビニの雑誌コーナー
マイコ「あ、あたし!? 呼ばれてる!?」
ナヤミ「ハッハハハッ」
フッ
マイコ「あっおじちゃん!」
〇コンビニのレジ
強盗「な、なんだ?」
ナヤミ「ハッ 俺を人質にしろよ。 他のやつは開放してくれ。なっ」
強盗「オマエじゃダメだ。 あの女じゃなきゃな」
ナヤミ「なんで俺じゃダメなんだい? 奴らはタダの貧乏な学生だぞ?」
ナヤミ「人質なら価値のある方が、 いいだろう?俺を人質にすれば、 マスコミが動くぜ」
ナヤミ「要求を示したいなら 俺を使えよ」
ナヤミ「このスマホなら、 あらゆるマスコミや企業の偉いさんに 直電できるぜ。 そういう仕事だったからな」
ナヤミ「しかもこの中には 重要機密書類も含まれている。 これはかなり高価なネタになるだろう」
ナヤミ「もう俺には必要ねえけどよ・・・ これには価値がある。 どうだ?悪くないだろう?」
ナヤミ(それのせいで 命も危ないんだけどな)
ナヤミ「お前の要求はなんだ? 金だけか?」
強盗「そ、そうだ、金だ。 あるだけの金を出せ」
強盗「あと飲み物と食べ物をよこせ!」
強盗「後は、 俺を笑った奴らに ひと泡、吹かせてやりたいんだ」
ナヤミ「そうか・・・」
〇コンビニの店内
謎占い師「強盗のようですね。 どうします?マッチョさん」
謎マッチョ「捕まえるのは簡単だが、 他の人がいるし もう少し様子を見る」
謎マッチョ「他の人を逃して 犯人の足止めは、できないかな?」
謎占い師「わかりました。 店全体をロックしましょう。 他の人には怪我のないように ガードをしておきます」
謎マッチョ「ひとまずそれでよろしく頼む」
謎マッチョ「うむ、ありがとう」
〇コンビニの雑誌コーナー
マイコ「おじちゃん・・・」
〇コンビニのレジ
ナヤミ「なぁ頼むよ・・・ 奴らを開放してくれ」
強盗「うるせえ!」
ビクッ
強盗「このバッグに金を詰めろ!」
強盗「早く!」
ナヤミ「わかったよ」
ナヤミ「あ、あぁ・・・あぁ」
強盗「お、俺まだ何もしてねぇ・・・」
マイコ「おじちゃん!」
ナヤミ「は、ハハハ」
シュウウウウウ
バターン
マイコ「おじちゃん・・・」
強盗「大人しく言う事を聞くんだ! お前らもあぁなるぞ!」
マイコ「うぅ・・・」
コンビニ2「う・・・うぅ」
コンビニ2「そ、その子の手を離せ!」
コンビニ「お、お前・・・ 声出せるんじゃん・・・」
強盗「お前いい度胸だな! ひとりやったら 何人でも同じだ!ええい!」
シュッ
ガシッ
彼は犯人の腕を掴んだ!
コンビニ2「は、早く逃げて・・・」
マイコ「う、うん」
カランカラン
コンビニ2「くっうううぅ」
強盗「くそー離せ!」
コンビニ2「死んでも離すもんか!」
〇コンビニの店内
謎占い師「マッチョさん!」
謎マッチョ「うむ!」
〇コンビニのレジ
コンビニ2「くうぅぅぅ〜」
スッ
ガシッ
マッチョさんは男を
後ろから羽交い締めにした!
強盗「あっ」
謎マッチョ「ワタシが抑えてますから 縛ってください」
コンビニ2「ハイ」
コンビニ2(た、助かった・・・)
強盗「くそー 離せー!」
コンビニ2「よし! 縛りました!警察に連絡してきます!」
バサッ
謎マッチョ「ん?」
謎マッチョ「これは家族写真? 家族がいるのに、こんなことをしたら ダメだ、家族が悲しむじゃないか」
強盗「うるせえ! もう悲しむ家族なんか、いねーんだよ! 金がなくなったら出ていったよ! うぅ〜」
強盗「みんな金!金!金! ちきしょう〜!」
ナヤミ「俺と同じじゃねえか。 いや、俺よりマシだろう。 家族がいるんだからな」
強盗「アンタ・・・」
ナヤミ「俺から金を奪っていったろう? お前が奪ったのは 金だけじゃねぇんだわ」
バサッ
ナヤミ「お前の声を聞いたときから わかってたよ。 どんなに変えてもな」
ナヤミ「俺のせいで危ない橋を渡らせて すまなかったな。 俺も何もかも なくなっちまったよ」
ナヤミ「この汚職事件を追ってたばかりにな・・・」
ヨシト「は、ははははは」
ヨシト「僕はその政治家の手下でしてね」
ヨシト「アナタを騙して情報を手に入れるつもりが、 僕の方がダメになるなんて思わなかった」
ヨシト「自宅は火事にあいました。 幸い家族は無事だったのですか 実家に戻ってしまいました。 仕事ばかりの俺に愛想尽かして」
ヨシト「この仕事が終わったら 大金が入って静かに暮らすつもりだったんですけどね・・・」
ナヤミ「俺もな・・・」
ピロリロリローン
コンビニ2「交番から来てくれましたよ」
ナヤミ「やっと来たか」
スッ
コロロロ
ナヤミ「あっ、落ちましたよ」
ナヤミ「ハイ」
謎マッチョ「ええ。ありがとう! お巡りさん? 今の見てましたよね?」
警官「ハイ?」
謎マッチョ「落とした宝石を拾っていただいたのです」
謎マッチョ「落とし物は1割受け取る権利があるわけですよね?」
ナヤミ「アンタまさか・・・」
謎マッチョ「こちら1割です。そしてこれは書類です。 よろしくお願いいたします」
警官「確認いたしました。 そちらは、おまかせします。 強盗未遂犯は、事情聴取のために連れていきますね」
ピロリロリローン
ナヤミ「アンタ わざと落としたろ?」
謎マッチョ「偶然ですよ。 では失礼します。 彼女は送らなくていいんですか?」
マイコ「おじちゃん・・・」
ナヤミ「帰るか」
マイコ「うん」
コンビニ2「あっ」
コンビニ2「よかったらこれ・・・」
コンビニ2「また降るかも・・・」
マイコ「あぁ、アナタありがとう。 アナタのお陰で助かったわ。 後でまたお礼に来るからね」
マイコ「変な人って言ってゴメンなさい。 じゃあまた」
コンビニ2「ハイ」
〇コンビニ
謎占い師「ちょうど、雨もやみましたね。 でもまた降るかもしれません。 早く戻りましょう」
謎マッチョ「うむ」
〇奇妙な屋台
あの〜
店主「こんな時間になにかしら?」
娘「この人を探しているのです」
娘「私の父なのですが、突然思い詰めた顔で 出て行ってしまって。 ずっと探しているのです」
店主「あらそう。 では交番に行ってごらんなさい。 気をつけてね」
店主「あと、こちらをお持ちなさい」
娘「ありがとう。 行ってみますね」
店主「おやすみなさい 雨のふらないうちにね」
ナヤミさんの渋みのあるイケオジ感と、マッチョさんの溢れんばかりの漢気が際立っていますね!ステキなお話の中、店主さんの出番が……
雨の日は心が危うくもなるし心が優しくもなりますね。雨だからといって家の中だけにいないで、私も外に出てマッチョの涙が落ちてないか探してみようかな。
ナヤミさんもマッチョさんもかっこいい…っ!
立ち絵を出演させてくださってありがとうございます!(´▽`)