ササクレサンタ

有濱小道

ササクレサンタ(脚本)

ササクレサンタ

有濱小道

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〇川に架かる橋
  皆さんはなぜサンタが真っ赤な姿をしているか知っていますか?
  今日は皆さんにその理由をお話しします
水野誠也「寒いと思ったら、雪降ってるじゃん」
水野誠也「クリスマスの夜もバイトで、後は帰って寝るだけか」

〇一人部屋
水野誠也「今年も何もなんもなかったな」
水野誠也「寝るか・・・」
日向梓「いい子にしてたかな! サンタさんがプレゼントを持ってきたよ!」
水野誠也「何ですか、アンタは! 急に窓から入ってきて」
水野誠也「け、警察に通報しなきゃ・・・」
日向梓「ちょっと! サンタだって言ってるでしょ!」
水野誠也「どこがだよ! サンタ要素ゼロじゃねえか!」
日向梓「色々と事情があるのよ! 素材とかの・・・」
水野誠也「おまわりさん!」
日向梓「つ、通報はやめて! 今から証拠を見せるから!」
  女、自身の指のささくれをめくり、床に放り投げる
水野誠也「ちょっと! 人んちで何してんだ、汚ねえな!」
日向梓「まあ見ててよ」
  床に落ちたささくれが徐々に大きくなっていき、サッカーボールに変わる
水野誠也「へ?何?」
日向梓「私たちサンタは、自身のささくれをプレゼントに変える魔法が使えるの」
水野誠也「イヤな魔法だな」
日向梓「ほらマンガとかであるでしょ、自分の指先を噛みちぎって血を使って魔法を発動するやつ。あれと同じ」
水野誠也「そう言われたら、あれも衛生的にイヤな気がしてきた」
日向梓「さあ井上洋太くん8歳!プレゼントのサッカーボールよ。受け取りなさい!」
水野誠也「どう見ても人違いだろ、俺は水野誠也24歳。バイトを終えてこれから寝るところだよ」
日向梓「え、マジ?」
水野誠也「マジ」
日向梓「じゃ、じゃあ、失礼しますね・・・」
水野誠也「おい、サッカーボール忘れてるぞ」
日向梓「あっ、失礼。じゃあ、今度こそこれで」
水野誠也「なあちょっと」
日向梓「なんですか」
水野誠也「これ持っていきなよ、ハンドクリーム」
日向梓「え・・・?」
水野誠也「まあ、最初は気持ち悪いと思ったけど、子どもたちのために文字通りその身を犠牲にしてるんだもんな」
水野誠也「頑張って子どもたちにプレゼントを届けてくれよ」
日向梓「私、人から物をもらったの初めてです」
日向梓「あなた、その手・・・」
水野誠也「ああ、俺もいっつも指にささくれができるんだ。乾燥肌でな」
水野誠也「だからあんたの辛さもよくわかる」
日向梓「・・・」
日向梓「お願いがあります。誠也さん、サンタをやってくれませんか?」
水野誠也「はあ?」
日向梓「その優しさと、ささくれができやすい体質、サンタの才能があります」
水野誠也「えっスカウトってこと?」
日向梓「そういうことです。実はサンタ業界は後継者不足が問題となっていて・・・」
水野誠也「サンタって伝統芸能かなんかか?」
日向梓「お願いします!きっと誠也さんなら最高のサンタになれるはずなんです!」
水野誠也「そんなのやるわけないだろ!」
水野誠也「・・・普通だったらそう答えるんだろうけどな」
日向梓「じゃあ・・・!」
水野誠也「ああ、なんか面白そうだし、是非おれにサンタをやらせてくれ!」
日向梓「やった!よろしくね新米サンタさん! まだ名乗ってなかったね。私、梓!」
日向梓「ささくれ魔法の使い方はね・・・」

〇雲の上
水野誠也「そうして俺はサンタになった」
子どもたち「サンタさん、ありがとう!」
水野誠也「ささくれをはがすのは痛いが、それが子どもたちの笑顔になると思えば、少しも気にならなかった」
水野誠也「そうして1年経ち、2年経ち、サンタとして3年目のクリスマスを迎えた」
日向梓「私の目に狂いはなかったよ誠也君。君は今や若手のホープ、サンタ界の救世主」
水野誠也「そんないいもんじゃあないですけどね」
水野誠也「でも、まあ悪い気はしないです」
日向梓「ごめんサンタホットラインだ」
日向梓「えっ・・・! そんな!」
日向梓「そんなこと言われても・・・ どうしろっていうんですか!」
日向梓「わかりました・・・とりあえず向かいます」
  電話が切れる
水野誠也「何かあったんですか?」
日向梓「ええ・・・黒岩ダムってあるでしょ、国内有数の規模のダム」
日向梓「あのダムが崩壊寸前らしいの、この前の地震でヒビが入ってたところに、局地的豪雨で水量が増えて・・・」
日向梓「このままじゃ下流の町が水流に飲み込まれる」
日向梓「すぐ向かって対処しろ、ってサンタ協会の指令よ」
水野誠也「そんな、対処ってどうすれば・・・」
日向梓「とにかく、トナカイでダムに向かいましょう」

〇滝つぼ
日向梓「ひどい、穴が空いて崩壊が始まってる」
日向梓「もう時間がない、一体、どうすればいいの」
水野誠也「一つだけ方法があります」
日向梓「え?」
水野誠也「ささくれで、俺がダムを作ります」
日向梓「魔法で巨大なダムを生み出すってこと?」
日向梓「不可能だよ!一体どれだけ沢山の皮膚が、ささくれが、必要になるか・・・つま先から頭頂部まで皮膚を失うことになる」
日向梓「理科準備室に置いてある模型みたいになるよ!」
日向梓「いや、それどころか命すら落とすかも・・・危険すぎる!」
水野誠也「危険でも、やるしかない!」
水野誠也「これしかないんだ」
  誠也、トナカイで飛び立ち、ダムに向かっていく
  それからしばらくして、辺りが光に包まれる
日向梓「なんて強力な魔法・・・誠也君、あなたはやっぱりサンタの天才だよ」

〇滝つぼ
  梓の目の前に巨大なダムが出現する
日向梓「水が止まった・・・成功したんだね!」
日向梓「誠也君! やったよ誠也君!」
日向梓「誠也君、どこ・・・?」
日向梓「そんな、まさか誠也君、命と引き換えに・・・」
日向梓「神様・・・」
  遠くから、ベルの音が聴こえてくる
日向梓「この音は・・・!」
  遠くから、理科準備室に置かれてるやつみたいになった誠也が手を振りながら、梓の方に向かってくる
日向梓「誠也君!誠也くーん!!」
  皆さんもクリスマスの夜に空を見上げてみてください
  真っ赤な姿の誠也を見つけることができるかもしれません
  筋肉剥き出しですが、怖がらなくても大丈夫です。それは自らを犠牲に、人々を救ってくれた聖夜の奇跡なんですから

コメント

  • この発想はありませんでした…笑
    想像するだけで、痛い!
    いや…、うまくとれるささくれもあるし…。
    でも血が出ないと…プレゼントは生み出せない?!

  • 発想がすごいです、サンタの赤にそう繋がるんですね。どの作品もツッコミが冴えていて、コントとしてとてもおもしろいです。

  • 一般的なサンタクロースの概念をある意味変えてくれたお話でした。自分を犠牲にして皆に奉仕する姿は、言わばヒーローですね。梓は先見の明がありました!

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