どんでんぴーち現る!!(脚本)
〇何もないフロア
株式会社グローサリー 第一会議室
「・・・いやあ、今回のオーディションは レベルが高いなあ」
山野目 星尾「才能を持ったアイドルの卵たちばっかりだ」
山野目 星尾「俺が採用したアイドルグループが 大人気になったら、」
山野目 星尾「俺の給料も鰻登り! ・・・なんてなったりして!」
山野目 星尾「・・・えーと、次の 応募グループは、と」
山野目 星尾「「どんでんぴーち」 ・・・変わった名前のグループだな」
山野目 星尾「きっと個性派揃いのアイドルなのかな 楽しみだ」
山野目 星尾「はーい、どうぞー!」
「失礼します!」
〇ゆめかわ
「胃袋もダンスの技術も無限大!」
どん(戸内 舞)「戸内 舞、通称「どん」 参上ッス!」
「かわいさ、スタイル国宝級!」
でん(天明 祥子)「天明 祥子、通称「でん」 参りまぁ〜っす♡」
「若い子にはまだまだ負けない この美声!」
ぴーち(日仲 菊子)「日仲 菊子、通称「ぴーち」 さァ平伏しな!」
「3人揃って「どんでんぴーち」ですッ!!」
〇何もないフロア
山野目 星尾「・・・・・・えーと」
山野目 星尾「近所のおもしろ珍人間 とかではなく?」
どん(戸内 舞)「違うッスよ! 何の番組ッスかそれ!」
どん(戸内 舞)「私たちは正真正銘、 正統派アイドルグループッスよ!」
山野目 星尾「えぇ〜 正統派の意味絶対理解してないでしょ・・・」
山野目 星尾「あの、念の為確認しますけど」
山野目 星尾「あなた方が応募したのは アイドルオーディションなんですが、」
山野目 星尾「ホンットーにそれで 間違い無いんですよね?」
山野目 星尾「愉快なおてんば三人衆とかではなく──」
どん(戸内 舞)「しつこい男ッスね! 私たちはぷりちーアイドルだってさっきから言ってるッスよ!」
どん(戸内 舞)「さてはアンタ、 モテないッスね?」
山野目 星尾「やかましわ! お前に言われたくないわ!」
山野目 星尾(はぁ〜申し訳ないけど この子たちは「ナシ」だな)
山野目 星尾(テキトーに面接して さっさと帰ってもらうか・・・)
山野目 星尾「ええと、まずは このオーディションに参加した理由を聞かせてください」
どん(戸内 舞)「はいッス! 株式会社グローサリーと言えば、」
どん(戸内 舞)「大人気アイドルを多数輩出している 有名な会社ッス!」
どん(戸内 舞)「そこで私たちを プロデュースしてもらえれば、」
どん(戸内 舞)「グローサリーというブランドにあやかって トップアイドルになれると思ったッス!」
山野目 星尾「うわ正直すぎる理由出た! 他力本願すぎるだろ!」
どん(戸内 舞)「ほら、人という字は 人と人が支え合って〜〜みたいな意味ッスよね?」
どん(戸内 舞)「だから私たちは、 グローサリーに支えてもらうことにしたッス!」
山野目 星尾「それ、もはや支え合ってない! 寄りかかってるだけだっつーの!」
山野目 星尾(この子と話すの疲れるな・・・)
山野目 星尾「ええと、それでは次は でんさんに質問します」
山野目 星尾「アイドルを目指したきっかけは 何ですか?」
でん(天明 祥子)「ええ〜? そんなの決まってるじゃないですかぁ」
でん(天明 祥子)「名誉と金のため、ですよ♡」
山野目 星尾「こっちも素直すぎる! もうダメだこいつら!」
でん(天明 祥子)「大体、それ以外の理由で アイドルやる人なんているんですかぁ?」
山野目 星尾「普通にいるぞ! しれっとアイドルの株を下げようとするな!」
でん(天明 祥子)「へェ〜〜 でも結局、金のためにやるみたいなトコあるじゃないですかぁ」
でん(天明 祥子)「限りある人生、 無料奉仕サービスするほど暇じゃないっていうかぁ〜〜」
山野目 星尾「ぐ、 確かにそれは一理あるが・・・」
でん(天明 祥子)「大体あなただって、 給料もらってるから仕事やってる訳でしょう?」
でん(天明 祥子)「明日からタダ働きしろって言われたら 続けませんよね? 今の仕事」
山野目 星尾「ぐぅ〜〜肯定したいが ここでこいつの思い通りに頷くのは絶対嫌だ!」
山野目 星尾(この子、黙ってれば ザ・アイドルなんだけどなあ・・・)
山野目 星尾「ええと、では今度は ぴーちさんに質問しますね」
山野目 星尾(明らかにオバハンなんだよなあこの人)
山野目 星尾(よりによって何でこの人の愛称が 「ぴーち」なんだよ)
山野目 星尾「今後、アイドルとしてどのように 活躍したいですか?」
ぴーち(日仲 菊子)「ん〜〜そうねえ・・・」
ぴーち(日仲 菊子)「やっぱり、目指すのは 武道館でコンサートを開くことよねェ」
山野目 星尾「い、意外とまともな答えが・・・」
ぴーち(日仲 菊子)「あっはっは、何言ってるんだい!」
ぴーち(日仲 菊子)「アイドルなら、ステージで輝くことが 一番の憧れであり喜びじゃないか!」
ぴーち(日仲 菊子)「あたしゃそのために 毎日ボイトレしてるんだからねェ」
山野目 星尾「なッ・・・この歌声・・・ ぴーちさんが発してるんですか!?」
山野目 星尾「見た目はただの 大阪のおばちゃんなのにッ・・・! スキル高ぇ!」
ぴーち(日仲 菊子)「あっはっは! アンタ、私のこと馬鹿にしすぎでしょ!!」
山野目 星尾(このオバハン・・・ 顔を出さなければ結構人気出そうだぞ)
山野目 星尾(顔を出さないミステリアス系アイドル ・・・良いじゃないか!)
山野目 星尾「ええと、ぴーちさん 素晴らしい歌声でした ありがとうございました」
山野目 星尾「ちなみになんですが──」
山野目 星尾「今のところ、どんさんとでんさんは 良いところが一つもありません」
「イヤハッキリ言い過ぎでしょ!!」
山野目 星尾「だって事実ですし・・・」
どん(戸内 舞)「やっぱりアンタ、 今まで彼女いたことないッスよね?」
山野目 星尾「いたわ! 幼稚園の時に!」
でん(天明 祥子)「幼稚園〜〜? 正直ィ、その頃の恋愛はほぼノーカンだと思いますぅ」
どん(戸内 舞)「そうッスそうッス! 付き合ってたっていうのも、この男の妄言に違いないッス!」
山野目 星尾「ンな訳ねえだろ!」
山野目 星尾「はあ、と、とにかく、 話を元に戻しますよ」
山野目 星尾「やはりアイドルたるもの、 何かしらの強みを持っていることが重要です」
山野目 星尾「あなたたちは、得意なことはありますか?」
でん(天明 祥子)「んー、強いて言うなら、 悪口を言うこと?」
でん(天明 祥子)「ほら、毒舌キャラって奴ですよォ」
山野目 星尾「・・・いやあ、君の場合は ただウザがられるだけだと思うけどなあ」
でん(天明 祥子)「ちぇー トーク番組で毒付きたかったのにぃ」
山野目 星尾「トーク番組に出れるテイで話すな!」
山野目 星尾「じゃあどんさんは? 何かある? 無いなら無いで良いけど」
どん(戸内 舞)「あるッスよ! 人を勝手に「何もできない奴」認定しないで欲しいッス!」
どん(戸内 舞)「はああ、こんな決めつけ野郎が 採用担当なんて・・・ この会社も落ちたッスねえ・・・」
山野目 星尾(お前にだけはそれを 言われたくねええええええええええ)
どん(戸内 舞)「私は踊りが得意ッスよ」
どん(戸内 舞)「「踊りのどんちゃん」とは私のことッス」
山野目 星尾「いや初耳だよ 「踊りのどんちゃん」なんて」
山野目 星尾「踊りって何? 腹踊り?」
どん(戸内 舞)「違うッス! ヒップホップダンスッスよ!!」
山野目 星尾「うォォォォイ嘘をつくな! 妄言言ってるのはお前だろ!!」
どん(戸内 舞)「見ればわかるッス! 行くッスよォォォ〜〜〜」
山野目 星尾「う、動きが早くてキレッキレ・・・」
山野目 星尾「重力の感覚無いんか!? ってレベルじゃないか!」
どん(戸内 舞)「へっへっへ〜〜 小さい頃からダンス習ってたッスからね」
山野目 星尾(ぽっちゃりだけどダンスは上手い・・・ これは良いギャップで売れるかもしれない)
山野目 星尾(驚いたな「どんでんぴーち」 ・・・才能に溢れた子たちじゃないか)
山野目 星尾「・・・一人を除いて」
でん(天明 祥子)「え〜? 何か言いましたあ?」
山野目 星尾「いやあ、君はさ、 ダンスとか歌はどうなのかな、って」
でん(天明 祥子)「そんな難しいコト、 私にはできませ〜〜ん♡」
山野目 星尾「だよな、だろうと思ったよ」
でん(天明 祥子)「でも見た目はかわいいでしょう? かわいければ世の中大抵なんとかなるんですよ」
山野目 星尾「うーん、でも近頃は かわいい子も多くなってきたからなあ」
山野目 星尾「「かわいい」だけじゃ やっていけないと思うぞ、正直」
でん(天明 祥子)「そんなことありませんッ! かわいいは正義なんですッ!!」
でん(天明 祥子)「かわいい子に騙される社長を捕まえて 玉の輿に乗ってみせますッ!」
山野目 星尾「はいはい、勝手にしてくれ!」
山野目 星尾(さて・・・どうするかな)
山野目 星尾(正直、どんさんとぴーちさんの ユニットで良い気もするけど・・・)
山野目 星尾(でも、それだと華がないんだよなあ とするとやはり・・・)
山野目 星尾(とほほ、結局「かわいい」は 必要不可欠ってことか・・・)
山野目 星尾「──では、以上で オーディションを終了します」
山野目 星尾「オーディションの結果は後日、 メールにて連絡します」
山野目 星尾「最後に何か言いたいことはありますか?」
ぴーち(日仲 菊子)「あ、じゃァ私から良いかしらねえ」
山野目 星尾「は、はい、どうぞ」
ぴーち(日仲 菊子)「このオーディションって、 25歳以下が条件なの?」
山野目 星尾「・・・は?」
山野目 星尾「そ、そうですけど・・・ 今更なんでそんな質問を・・・?」
山野目 星尾「大体、それをわかった上で あなたたちは応募したんですよね?」
ぴーち(日仲 菊子)「もちろんよォ でもね」
ぴーち(日仲 菊子)「実は私・・・ 52歳なのよォ」
山野目 星尾「はァァァァァァ!? 今更それを言うのかよ!?」
山野目 星尾「確かにアンタはオバハンっぽいなとは ずっと思っていたけど!!」
ぴーち(日仲 菊子)「だってェ〜〜 言うタイミングがなくってェ〜〜」
ぴーち(日仲 菊子)「大体ね、年齢で線引きするなんて おかしいと思うのよ」
ぴーち(日仲 菊子)「女はね、何歳になっても アイドルになりたいって思ってるモンなのよ!」
山野目 星尾「あのね、こっちにはこっちの 都合があるんですよ」
山野目 星尾「あなたの意見はわからなくもないですけど、会社の方針としては、若い子を起用したいんです!」
ぴーち(日仲 菊子)「何でよ! いじわる! オバハン差別!」
山野目 星尾「これは決して差別ではなくて! ああもう面倒くさいなあ!」
山野目 星尾「とにかく、25歳を超えているメンバーがいる以上、「どんでんぴーち」は不採用確定です!」
山野目 星尾(はああ〜〜ちょっと惜しい気もするけど、 これは仕方がないよなあ)
山野目 星尾「ええと、ちなみにどんさんとでんさんは おいくつなんですか?」
どん(戸内 舞)「え」
どん(戸内 舞)「43ッス♡」
山野目 星尾「こっちもアウトかよォォォォォ」
山野目 星尾「と、いうことは、でんさんも・・・?」
でん(天明 祥子)「ち、違いますぅ〜〜 私はギリギリ25歳ですよォッ」
山野目 星尾「ま、まあそうだよな この子の場合は見た目相応だよな・・・」
でん(天明 祥子)「・・・・・・心は、ですけど」
山野目 星尾「・・・は? 心は?」
でん(天明 祥子)「実際は54歳なんですけどォ〜 精神年齢は25歳だねってよく友達に言われるからァ〜」
でん(天明 祥子)「あッじゃあ私は25歳なんだあ と思って♡」
ぴーち(日仲 菊子)「そうよッ 私だって心は25歳のぴちぴちなんだから!」
どん(戸内 舞)「私もッス! だからこのオーディションも応募できるなって思ったッスよ!」
「心は永遠の25歳! 「どんでんぴーち」をどうぞよろしくッ!!」
山野目 星尾「もッ、もう出てけ、 こいつらもうここから出ていけェェェ!!」
ツッコミがキレッキレですね😆
テンポが良くて面白かったです🙌
彼女らの主張に「なるほどなぁ」とつい頷いておりました🤣52歳でもいいじゃない!
どんでんぴーち、濃ゆすぎですww
山野目さんのツッコミが追い付かない程のアレな要素満載で、、、にもかかわらず、ラストにはこの3人に愛着を抱かずにはいられなくw
でんさん、可愛くて王道アイドルな見た目で良いなあ〜って思いながら読んでいたらまさかの最年長!笑
あの年齢になってもあんなに可愛らしくてうらやましいです🤤
私も、でんさんのようにいつまでも若くありたいです😂