罪(脚本)
〇黒
『罪』
〇明るいリビング
8年前
美穂「かわあそび?」
優衣「うん!いこうよ!」
美穂「だ、だめだよ〜!こどもだけでかわあそびなんて!おかあさんたちにおこられるよ?」
優衣「だいじょうぶだよ!きをつけてれば。それにあついんだもん!」
美穂「でも・・・」
優衣「おかあさんたちゆうがたまでかえってこないでしょ?はやくかえってくればおこられないよ!」
美穂「う、うん・・・」
優衣「じゃあきまり!いこう!」
〇山中の川
優衣「うわ〜!きもちいい!つめた〜い!」
美穂「かわにははいっちゃだめだからね!!」
優衣「わかってる〜。てとかあしだけ!」
美穂「それならいいけど・・・つめたい!」
優衣「きてよかったでしょ?」
美穂「うん!」
優衣「あっ!」
美穂「ゆ、ゆいちゃん?どうしたの?」
優衣「みてみて!!かわのなかにあるいわにジャンブするから!」
美穂「ええ!!!?」
優衣「いくよ〜!それー!!!」
美穂「ゆいちゃん!?」
優衣「よっと・・・おねえちゃん!ほらほら、すごいでしょ?」
美穂「あぶないことはしたらだめ!!」
優衣「だいじょうぶだって!おねえちゃんもきてよ!」
美穂「いかないよ!!そんなあぶないことするんだったらおねえちゃん、もうゆいちゃんとはあそばないよ!!!」
優衣「それはやだ〜」
美穂「じゃあもうしたらだめだよ?」
優衣「は〜い・・・」
美穂「おかあさんたちがかえってくるからかえろう?オヤツにプリンがあるよ?おねえちゃんのもあげるから!」
優衣「ほんと!!?おねえちゃん、だいすき!!」
美穂「ほらかえるよ!」
優衣「わかった!!ジャンブするからまって──」
優衣「きゃあ!!」
美穂「ゆいちゃん!!?」
「おね・・・おねえちゃ・・・!!」
美穂「ゆいちゃん!まってておねちゃんが!!」
〇水中
優衣「ガボ・・・」
優衣(おねえちゃ・・・ん)
〇黒
目の前が真っ暗になっていく中で誰かが私の手を掴んだ気がした。そして──
「ゆいちゃ・・・これ・・・で・・・だいじょ・・・」
水の中から引き上げられた感覚と大好きな姉の声。そしてなにかが水の中に沈んでいく音を最後に私の意識は途切れた・・・
〇山中の川
優衣「──!!あ、れ?ここは・・・?」
優衣「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!」
優衣「ゆい、かわにおちて・・・!!おねえちゃん!?」
優衣「おねえちゃん!!?おねえちゃん、どこ!?」
近くにいたはずの姉の姿はどこにもなかった
私は泣きながら家に帰った。もしかしたら姉は助けを呼ぶために帰ったのかもしれないと思ったからだ。
けど、家にいたのは夕方に家にいない私達を心配して警察に電話している両親だけだった
驚いている両親に私は川での出来事を話した。川に落ちたこと。そして姉がいなくなったこと。
両親は血相を変えて警察に電話で話したあと、川に走り出した。
両親と警察の人たちが必死に姉の名前を呼びながら探していた。私も姉を探そうとしたが、まだ小さかったこともあり家に帰された
私は必死に姉の無事を祈った。お姉ちゃんはきっと生きてる。私をおいて死ぬはずない。そう自分に言い聞かせた。
けれどその思いも虚しく、3日後。川の下流付近で姉は見つかった。
〇黒
姉の遺体を前に私は目の前が真っ暗になった。
優衣「ゆいが・・・ゆいがかわになんていこうっていったから?」
優衣「おねえちゃんのいうことをきかなかったから?」
優衣「そんなのいや!!おねえちゃん!!おきてよ!!もう、かわになんていかないから!!」
優衣「おねえちゃんのいうことちゃんときくから・・・いいこにするから・・・」
優衣「うあぁぁぁぁぁ!!!!!」
そして世界の色が抜け落ちた。
〇土手
優衣(あの日、お母さんたちは私を責めなかった。私のせいじゃないって何度も言ってた・・・けど)
優衣(私が川に行こうって言わなければ、お姉ちゃんは死なずに済んだ)
優衣(お母さんたちはまるで腫れ物を扱うみたいに私に接してくる。きっと私の事を心のなかで恨んでる・・・)
優衣「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
私は泣きながら家へと帰った・・・