ミライ

そよかぜフィリップ

第1話『ゆらぐ、ミライ』(脚本)

ミライ

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〇黒
  西暦2056年
  TOKYO CITY

〇廃ビルのフロア

〇黒
  私は、指令を受け
  人型AI
  『トム』と共に
  『シャドー』を追っていた
  彼を "抹殺" するために

〇廃ビルのフロア
シャドー(影沼ノエル)「・・・」
シャドー(影沼ノエル)「やるじゃん」
シャドー(影沼ノエル)「まさか 俺がここまで追い詰められるとはね」
シャドー(影沼ノエル)「余裕、見せすぎたか」
シャドー(影沼ノエル)「なあ?」
シャドー(影沼ノエル)「君、俺と同じ匂いがするな」
シャドー(影沼ノエル)「そんなヤツ、初めてだよ」
シャドー(影沼ノエル)「君、何者なんだ?」
シャドー(影沼ノエル)「君の隣のオモチャ」
シャドー(影沼ノエル)「島崎アイのだろ?」
シャドー(影沼ノエル)「アイツ・・」
シャドー(影沼ノエル)「・・・」
シャドー(影沼ノエル)「答えないのか」
シャドー(影沼ノエル)「で、どうする?」
シャドー(影沼ノエル)「俺を殺すんだろ?」
シャドー(影沼ノエル)「君、優しそうだな」
シャドー(影沼ノエル)「ふふっ」
シャドー(影沼ノエル)「君に出来る?」
シャドー(影沼ノエル)「でも、俺が君なら」
シャドー(影沼ノエル)「迷いなく、俺を殺すね」
シャドー(影沼ノエル)「これ以上 不幸な人間を増やさない為にね」
シャドー(影沼ノエル)「さあ、撃て!」
シャドー(影沼ノエル)「さあ、早く殺せ!」
シャドー(影沼ノエル)「早くやってみろ!」
  一瞬、躊躇した、その瞬間!
  レーザー銃が私を襲った!
  身体に衝撃が走り
  部屋の風景が
  スローに歪んで
  私の意識は遠のいた

〇黒

〇黒
  気がつくと、目の前に
  私をかばって
  壊れたトムの姿があった

〇黒

〇黒
  2カ月後

〇開けた景色の屋上
島崎アイ「諜長」
島崎アイ「お待たせしました」
柳原伊知郎「やあ」
柳原伊知郎「どうだ?」
柳原伊知郎「羽田ミライの様子は」
島崎アイ「はい。 すぐにでも現場復帰できると思います」
柳原伊知郎「そうか」
柳原伊知郎「君のAIの状態は?」
島崎アイ「はい、ほぼ現状通り回復しております」
柳原伊知郎「そうか」
柳原伊知郎「君にとって 羽田ミライの存在とは何だ?」
島崎アイ「はい」
島崎アイ「自信なさげな外見とは対照的に」
島崎アイ「驚異のポテンシャルを誇る 最高の研究対象ですね」
柳原伊知郎「ふっ・・ 君は、なんでも研究だな」
島崎アイ「いえ、 彼女の人間的な魅力にも惹かれています」
柳原伊知郎「・・そうか」
柳原伊知郎「その彼女が関わる件で」
柳原伊知郎「さっき機関から、連絡があった」
島崎アイ「どのような内容ですか?」

〇東京全景

〇黒
  第1話
  『ゆらぐ、ミライ』

〇東京全景

〇廃墟の倉庫
トム「やあ!ミライ」
トム「久しぶりだね」
羽田ミライ「・・・うん」
トム「また会えてうれしいよ」
羽田ミライ「・・・本当に?」
トム「もちろんさ」
羽田ミライ「私のせいで、あんな事になったのに」
トム「仕方ないよ」
トム「僕は 武器を持つ事を許されてないから」
羽田ミライ「そうだけど・・」
トム「ねえ?」
トム「僕達、まだパートナーでしょう?」
羽田ミライ「・・・うん」
トム「じゃあ」
トム「二人で協力して 今度こそヤツを抹殺するんだ」
羽田ミライ「うん、判ってる」
羽田ミライ「でも、抹殺って言葉は好きじゃないの」

〇お台場

〇満車の地下駐車場
「あの・・」
「いきなり、申し訳ないんですけど」
赤坂文華「は?」
赤坂文華「なんですか?」

〇荒れた公園
羽田ミライ「ねえ、トム?」
トム「なんだい?」
羽田ミライ「ありがとう」
トム「何の事?」
羽田ミライ「私をかばってくれて・・」
トム「当たり前だよ」
トム「僕は君を守る為の存在だよ」
羽田ミライ「うん・・知ってる」
トム「君の為なら全てを投げ出すよ」
羽田ミライ「うん・・」
トム「もっと喜んで欲しいな」
羽田ミライ「え?あ、嬉しいよ」
羽田ミライ「でも、怖いの」
羽田ミライ「またアナタが」
羽田ミライ「あんな事になったら、と思うと」
トム「ミライ」
トム「君は選ばれた人間なんだ」
トム「シャドーに対抗できるのは 君だけなんだよ」
トム「もっと自信を持って欲しい」
羽田ミライ「うん・・」
トム「よし」
トム「では、アイさんの所に行こうか」
羽田ミライ「うん」

〇怪しい研究所

〇近未来の開発室
島崎アイ「・・来たわね、ミライ」
島崎アイ「トムとの再会はどうだった?」
羽田ミライ「はい。 嬉しかったです」
島崎アイ「そう・・」
島崎アイ「またヨロシクね、ミライ」
羽田ミライ「はい・・よろしくお願いします」
島崎アイ「じゃあ」
島崎アイ「久しぶりに3人が集まったから」
島崎アイ「今日から仕切り直しね」
羽田ミライ「はい」
トム「我々のターゲットである」
トム「シャドーを抹、いや、倒しましょう」
島崎アイ「そう・・」
島崎アイ「それが私達に課せられた最大の指命」
羽田ミライ「・・はい」
島崎アイ「ねえ?ミライ」
島崎アイ「ヤツは今現在」
島崎アイ「エリア23内に潜伏中と見てるんだけど」
島崎アイ「アナタの意見はどう?」
羽田ミライ「・・・はい」
羽田ミライ「あくまで、データ上の考察ですが」
羽田ミライ「私はすでに エリア23から出ていると思います」
羽田ミライ「彼は前回の件で」
羽田ミライ「多くの資金やアジトを失ったと思われます」
羽田ミライ「そして、彼は絶対に単独で行動します」
羽田ミライ「今いる正確な場所は解りませんが」
羽田ミライ「エリア23に近い場所で」
羽田ミライ「複数の女性を、洗脳状態に置き」
羽田ミライ「状況に応じながら、利用しているはずです」
島崎アイ「そう」
島崎アイ「その女性達が心配ね」
羽田ミライ「はい。でも残念ながら」
羽田ミライ「我々が関与していなかった期間に」
羽田ミライ「数名の犠牲者が出ているはずです」
島崎アイ「・・そう」
島崎アイ「なるべく早く見つけないと・・」
羽田ミライ「・・・はい」
羽田ミライ「・・・あの」
羽田ミライ「アイさん ちょっとお話があります」
島崎アイ「うん、何?」
羽田ミライ「トム? ちょっとアイさんと二人になりたいの」
トム「そう・・では、アイさん」
トム「スリープモードにして下さい」
島崎アイ「いえ、人間の行動様式に従って」
トム「はい」
トム「では、席を外します」

〇怪しい研究所

〇近未来の開発室
島崎アイ「どうしたの?」
羽田ミライ「はい・・」
羽田ミライ「なんか、トムが以前と違う気がして・・」
島崎アイ「そう?」
島崎アイ「プログラム自体は替えてないんだけど」
島崎アイ「もしかしたら、アナタが撃たれた事で」
島崎アイ「自律的に 変化した可能性はあるわね」
島崎アイ「いや」
島崎アイ「変化というより進化かな」
羽田ミライ「・・・」
島崎アイ「でも、ほら見て」
島崎アイ「これ、アナタ達のシンクロ率」
島崎アイ「驚異的だわ」
島崎アイ「まさに相思相愛ね」
羽田ミライ「・・もう・・やめて下さいよ」
島崎アイ「ゴメン、ゴメン」
島崎アイ「ふふふっ」

〇走行する車内

〇車内
シャドー(影沼ノエル)「いや、ホント助かりましたよ」
シャドー(影沼ノエル)「家の近くまで送って頂けるなんて」
赤坂文華「たまたま通り道だったんですよ」
シャドー(影沼ノエル)「でも、我ながらバカですよね」
シャドー(影沼ノエル)「置き引きに遭うなんて」
シャドー(影沼ノエル)「ダサくないですか?」
赤坂文華「いえ、盗る方が悪いに決まってますよ」
赤坂文華「許せません」
シャドー(影沼ノエル)「ホントですよ」
シャドー(影沼ノエル)「許せないよな・・」
シャドー(影沼ノエル)「いや・・・盗まれて良かったかな」
赤坂文華「え?」
シャドー(影沼ノエル)「だって アナタみたいな人に逢えたんだから」
赤坂文華「え・・」
赤坂文華「そんな・・」

〇怪しい研究所

〇近未来の開発室
島崎アイ「ねえ、ミライ」
羽田ミライ「はい」
島崎アイ「どうして、ヤツを撃たなかったの?」
羽田ミライ「・・・え?」
島崎アイ「ターゲットの目の前で、躊躇するなんて」
島崎アイ「今まで、完璧に任務を遂行してきた」
島崎アイ「アナタらしくないわ」
羽田ミライ「・・・はい」
羽田ミライ「自分でも、どうしてかは・・」
羽田ミライ「レーザー銃を隠してるのは判ってました」
羽田ミライ「もしかしたら、無意識に心を」
羽田ミライ「揺さぶられていたのかも知れません」
島崎アイ「・・・そう」
島崎アイ「でも、繰り返すけど」
島崎アイ「ヤツは、無実の人を何人も殺害してきたの」
島崎アイ「情けは無用よ」
羽田ミライ「・・はい」
島崎アイ「一見、そう見えないかも知れないけど」
島崎アイ「ヤツはただの悪党じゃないの」

〇荒廃した国会議事堂
  その気になれば
  国家にも影響を与えかねない
  恐ろしいモンスターなの

〇車内
シャドー(影沼ノエル)「でも、僕が言う事じゃないけど」
シャドー(影沼ノエル)「こんな素性の解らない 赤の他人を車に乗せるなんて」
シャドー(影沼ノエル)「怖くないですか?」
赤坂文華「え?」
シャドー(影沼ノエル)「もしかしたら殺人鬼かも知れないんですよ」
赤坂文華「はははっ、そんなはず無いでしょ」
赤坂文華「これでも 人を見る目には自信がありますから」
シャドー(影沼ノエル)「いやぁ、何事も過信は禁物です」
赤坂文華「そうだけど・・・ふふふっ・・」

〇怪しい研究所

〇近未来の開発室
島崎アイ「私が『ソヨカゼ』で」
島崎アイ「ヤツと同期だったのは知ってるでしょ?」
羽田ミライ「・・はい」
島崎アイ「アナタも知ってる通り」
島崎アイ「超エリートが集まる『ソヨカゼ』の中でも」
島崎アイ「ヤツはあらゆる面で突出してた」
羽田ミライ「アイさんでも敵わなかったんですか?」
島崎アイ「全然だよ」
島崎アイ「文字通り、別格だったわ」
島崎アイ「アナタと同じくらいにね」
羽田ミライ「・・・・・」
島崎アイ「その万能感がヤツを暴走させたの」
島崎アイ「自分の中に渦巻く」
島崎アイ「巨大な才能に飲まれて、歪んでしまったのね」
島崎アイ「そして、誰も止められなくなった」
島崎アイ「でも、ミライ。アナタは違うわ」
島崎アイ「ミライには人間らしい揺らぎがある」
羽田ミライ「揺らぎ・・ですか」
島崎アイ「うん」
島崎アイ「それは、弱さに繋がるかも知れないし」
島崎アイ「強さに変わるかも知れない」
島崎アイ「アナタ次第でね」
羽田ミライ「・・・・・・」

〇怪しい研究所
羽田ミライ「お待たせ」
トム「大事な話?」
羽田ミライ「いや、大した話じゃないよ」

〇走行する車内
「あの・・」
「いきなりで 引いちゃうかも知れないけど」
「・・・はい?」
「俺・・・アナタに運命を感じてます」
「・・・え?」
「・・・そんな」
「いや、本気なんです」
「こんな気持ち、初めてですよ」
「・・・えぇ」
「・・・そうなんだ」
「・・あの、実は私も・・」
「・・・ねえ?」
「・・今日、私の部屋に来ます?」

〇怪しい研究所
トム「じゃあ、僕はラボに戻るよ」
羽田ミライ「うん」
羽田ミライ「私、お婆ちゃんに連絡するから」
トム「うん、さよなら」
羽田ミライ「うん、また明日」

〇黒

〇黒

〇開けた景色の屋上
柳原伊知郎「その彼女が関わる件で」
柳原伊知郎「さっき機関から、連絡があった」
島崎アイ「どのような内容ですか?」
柳原伊知郎「ああ・・」
柳原伊知郎「通称『シャドー』の件は」
柳原伊知郎「全てを、我々に任せると」
島崎アイ「・・・全てを、ですか」
柳原伊知郎「ああ、公安も一切タッチしないそうだ」
島崎アイ「何故でしょう?」
柳原伊知郎「この前の戦闘だけで、犠牲者16人だ」
柳原伊知郎「ヤツの犠牲となった公安関連の人間は 100人を越えた」
島崎アイ「たったひとりの男に・・」

〇黒

〇開けた景色の屋上
柳原伊知郎「ああ」
柳原伊知郎「恐らく、これ以上 無駄な犠牲は出したくないんだろう」
島崎アイ「諦めたって訳ですか」
島崎アイ「賢明かも知れませんけど」
島崎アイ「超危険な愉快犯、か」
島崎アイ「もはや治外法権ですね」
柳原伊知郎「その通りだな」
柳原伊知郎「あのチカラが」
柳原伊知郎「国家の中枢に向かない限り、お咎め無しだ」
島崎アイ「殺しのライセンスを持つ男、ですか」
島崎アイ「やりたい放題ですね」
柳原伊知郎「いや、我々の組織はヤツを許さない」
柳原伊知郎「だが現状は」
柳原伊知郎「羽田ミライと、君のAIに託すしかないがな」

〇空き地
羽田ミライ「・・・」
羽田ミライ「何?」
一般人「今、ヒマでしょ?」
羽田ミライ「近寄らないで欲しい」
一般人「ねえ」
一般人「割りのいいバイトしない?」
一般人「すぐ終わるヤツ」
一般人「うっ!」
一般人「・・くっ・・痛てえ」
一般人「・・なんだ、今の・・」
一般人「・・お、お前、殴ったのか?」
一般人「見えなかったけど・・」
一般人「痛てえよ・・」
一般人「くっ・・・はぁ、はぁ」
羽田ミライ「私から離れて欲しい」
一般人「・・は、はい」

次のエピソード:第2話『かなしい、ミライ』

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