19話 神聖な力?(脚本)
〇神殿の広間
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「テツナの奴・・・まだ帰ってこないのか? あいつのことだから、飽きてその辺で寝ていてもおかしくはないな」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「レバノスタンの部下は客室で帰りを待っているんだよな? 帰ってきたと言う知らせはないのか?」
◇◇◇「は、はいそのようです!」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「ゲルホウスからも見つかったと言う報告が来ない。・・・俺も探しに行くか」
テツナ・テカ「ビャラム〜悪い遅れちまった! ルゥラッハさまを独り占めしてたら、お前のこと忘れてたわ〜」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「テツナ、客人をさっさと下ろせ!!」
テツナ・テカ「客人を届けに来た人に失礼な態度だな。このまま連れ返っちゃおうかな?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「て、テツナ・・・さん!! 下ろしてくれないか?」
テツナ・テカ「テツナでいいぜ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「え・・・ああっと、て、テツナ。下ろしてくれないか?」
テツナ・テカ「だ〜め。ビャラムが俺に感謝してからな」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「するわけがないだろう!! さっさと下ろしてお前は出ていけッ!!」
テツナ・テカ「あっははぁ、聞いた? 行こうぜルゥラッハさま〜」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「──ま、待ってくれ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「お、王さまと話さないといけないことがあるんだ。・・・大事な話なんだ」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「聞いたか? テツナ 下ろしてやれ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ありがとう、テツナ ・・・運んでくれて?」
テツナ・テカ「いいぜ それで、大事な話ってどんな話?」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「そうだレバノスタン!! 何の用があってここまで来た!?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「王さまに頼みがあってきたんです」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「頼みだと? 一体何を──休戦ならお断りだ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺たち、テルヌンドに引っ越したいんですけど、帝国がそれを許さないと思うんです」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「でも今は状況的に国境もあやふやで移住の手続きも簡単なんです」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「移住者の名前が記載された書類に地域ごとの役所が目を通して許可のサインをして、皇帝には報告書が届くだけなんです」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「レバノスタン家の領民たちには名前を書かせました。俺たちの名前も書いて、許可のサインも書きました」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「引越し当日に城に郵便で送ります。一緒に行かない者には別の土地と家を用意してあげてもう引っ越しの準備をさせています」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「一緒に来る者たちは土地ごと移動させる予定なので、その相談に──」
「ま、待て待て待て待て待て──ッ!?」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「テルヌンドに引っ越す? 移住? 土地ごと? 何を言っているんだお前は──!?」
テツナ・テカ「ビャラムの言う通りだ!! 急すぎて理解が追いつかねえ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「簡単に説明するなら、レバノスタン家は帝国から解放されたいんです」
テツナ・テカ「皇帝に忠誠を誓っていないってことか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「誓わされているんです」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「レバノスタン家は代々、”神の心錠”によって皇帝に忠誠を誓わされ続けています」
テツナ・テカ「それぞれの国の君主たちは神の使いと呼ばれている、彼らは少しだが神聖な力が使える。その一種だな」
テツナ・テカ「確かに”神の使い”であるビャラムなら、”神の心錠”を外せるかもしれない」
テツナ・テカ「”神の心錠”は神の力で作られた呪いみたいなものだ、どんなことを誓わされたんだ?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「初代からの決まりごとらしいので、詳しいことは知りません」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ただ、どんな状況であれ王様に傷一つでもつけば、”神の心錠”が心臓を締め上げてくる・・・」
テツナ・テカ「”神の心錠”を持っているのは誰なんだ?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「レバノスタン家の後継者は俺なので、”神の心錠”は俺に受け継がれています」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「見てやるからこっちに来い!!」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「初代から続いているなら、心臓に巻きついている鎖はかなり太くなっているかもしれない」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「え、ちょ・・・あの、服・・・!?」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「直接触るしか、確認する方法はない。このままじっとしていろ」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「・・・かなり太いな。これは──何かが心臓に刺さっている?」
テツナ・テカ「俺にも見せろ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ちょ──」
テツナ・テカ「・・・これは」
テツナ・テカ「ビャラムには無理だな」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「すまない テツナ、お前はどうだ?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(そうか、テツナさんは”神の子孫”であるテカの人・・・)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「どうですか?」
テツナ・テカ「神の力で作られた杭が刺さっているな・・・ 皇帝が念じればすぐにでも具現して心臓を四方から貫く」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「お前にも無理なのか?」
テツナ・テカ「俺の力で外すことは可能だ ・・・ただ、技術が足りない」
テツナ・テカ「あいつなら、外せると思う」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「あの頭のかたい付き添いか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(テツナさんの付き添い・・・? 同じ服を着ていたあの人か?)
テツナ・テカ「何度か具現しかけたみたいだ、いつ具現するかわからない。一刻もはやく外さなくちゃならない」
テツナ・テカ「頼みに行ってくる」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「わかった。新しく客室を用意しておく レバノスタン、案内させるからそこで待──」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺も行く!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺のことだから、ちゃんと俺が頭を下げないと・・・」
テツナ・テカ「わかった、一緒に行こう」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「部屋は適当に使え。部下には伝えておく」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「”神の使い”か・・・ 神聖な力で呪いを生み出した者が、名乗っていいものなのか・・・」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「具現しかけた──つまりその度に苦痛を受けていたと言うことか」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「帝国め・・・ 長い間国のために尽くしてきた者たちに対して、あのような仕打ちを・・・許せん」
ビャラム・ヨイワーン・テルヌンド「決して許せん」