読切(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
クリスマスの近い都会
〇ナイトクラブ
蘭? 江藤蘭ちゃんじゃないか?
江藤蘭「誰?」
久しぶり
江藤蘭「──」
元気だった?
江藤蘭「用はないわ・・・気安く声かけないで」
相変わらずだな
〇大企業のオフィスビル
〇大企業のオフィスビル
江藤蘭「私は、いつかこの都会の夜景を手に入れる」
ミステリア「金の力でか?」
江藤蘭「ミステリア」
ミステリア「・・・」
江藤蘭「いつだって、あなたは突然現れるのね」
ミステリア「富を手に入れることが、蘭の願い?」
江藤蘭「そうよ」
江藤蘭「貧しさで、雑草を食べて育った私には、お金以上に大切なものなんて・・・」
ミステリア「菜食は、健康にいいが・・・」
江藤蘭「ふざけないで、私は自分の力で、必ず富を手に入れる」
ミステリア「フフ」
江藤蘭「だから、あなたと組んだ」
ミステリア「だったら、クリスマスを金に換えてみては?」
江藤蘭「クリスマスに、なにかを仕掛けるの?」
ミステリア「カンナにひらめきがあったらしい」
江藤蘭「私達の頭脳、天才少女に会いにいってくるわ」
江藤蘭「あっ!? 消えた」
〇ツタの絡まった倉庫
〇組織のアジト
津村カンナ
IQ350を超える天才少女
人の心を読むことができるMDスキャンシステムを開発したが、子供ということで社会では相手にされずにいる
江藤蘭「お金になりそうな話って?」
津村カンナ「クリスマスという絶好の機会を逃す手はない」
江藤蘭「億単位の計画じゃないと、やる気がでないわよ」
津村カンナ「心を読み取るMDスキャンシステムを応用すれば、クリスマスにビッグビジネスになる」
江藤蘭「聞かせてよ。どんな計画?」
津村カンナ「まずは、この季節、人々の心理を観察することから」
〇歌舞伎町
〇立ち飲み屋
鈴木「俺、明美ちゃんを誘いたいんだ」
田村「二人きりのクリスマス、いいじゃないか」
鈴木「でも、誘って断られたら」
田村「そんなの誘ってみなけりゃ」
鈴木「明美ちゃん、俺のことどう思っているのか?」
田村「告白しても、答えがNOだったら・・・って、心配なのか?」
鈴木「明美ちゃんの気持ちがわかるアイテムなんて、ないのかな??」
田村「そんなアイテムがあったら、みんな苦労はしないよ」
〇組織のアジト
津村カンナ「クリスマスって、好きな人といたい日でしょ」
江藤蘭「まあね。でも両思いなら、話がはやいけど」
津村カンナ「恋人未満の二人だと、相手の気持ちがわからず、誘うことにも不安が・・・」
江藤蘭「結局、今年のクリスマスは諦めるなんてことも・・・」
津村カンナ「でも、もし相手の心が読めて、自分に好意があるとわかれば・・・」
江藤蘭「絶対告白するわよね」
津村カンナ「だから、MDスキャンシステムを応用したアイテムを商品化したら・・・」
江藤蘭「かなり売れる・・・!?」
江藤蘭「いえ、絶対売れる!!」
津村カンナ「スキャナーはブレスレット型にして」
津村カンナ「出力は眼鏡を仲介して信号を脳に送る」
江藤蘭「すごい、小学生と思えない」
津村カンナ「小学校中退だから」
江藤蘭「でも、試作品はできても、大量生産は?」
ミステリア「それは、このミーに」
江藤蘭「突然!!」
ミステリア「商品化と販売は、表から裏社会まで知り尽くしたミーに任せて」
江藤蘭「やったー」
江藤蘭「今年のクリスマスは、お札の雪が降る」
〇池袋西口公園
〇テーブル席
山田「・・・」
矢代「遅れてごめん」
山田「別に・・・」
矢代「眼鏡、変えたのか?」
山田「うん」
山田「今日、寝坊しただろう」
矢代「なんでわかる?」
山田「彼女と一緒だった!!」
矢代「なんで知ってんだよ!?」
山田「僕は、人の心を読めるんだ」
〇川沿いの公園
江藤蘭「アイテム、売れてるみたいよ」
津村カンナ「異性の心が読めるアイテムが流行れば、クリスマスはカップルで溢れそう」
江藤蘭「アイテムが沢山売れて、お札のお風呂に入れるかも」
〇駅前広場
〇電車の座席
アイテム、買ったけど・・・
すごい、本当に他人の心が覗ける
人の気持ちって、複雑
なに!! この男・・・
〇改札口前
ちょっと、ついてこないでよ
〇開けた交差点
男って、あんなこと考えているんだ
男なんて・・・彼氏なんて・・・
いらない
こんなアイテムも・・・
いらない!!
〇ツタの絡まった倉庫
江藤蘭「生産中止って!?」
ミステリア「そもそも販売はしていない」
江藤蘭「どういうこと・・・?」
ミステリア「開発はしたが、正式に市場には出していない」
津村カンナ「売れるかどうか、モニター調査をしただけとか?」
江藤蘭「そうなの?」
ミステリア「失敗するビジネスはしない主義だから」
江藤蘭「でも、売れ行き好調って、連絡が・・・」
ミステリア「それは、フェイクだ」
江藤蘭「そんな・・・」
〇ツタの絡まった倉庫
〇川沿いの公園
江藤蘭「がっかり・・・」
江藤蘭「大金が、夢の彼方に・・・」
津村カンナ「でも、モニターのアンケートにこんな感想が・・・」
〇公園のベンチ
伊藤「眼鏡外したの?」
紗栄子「うん、アイテムなんかなくても・・・」
伊藤「アイテム?」
紗栄子「いえ・・・なんでもない」
紗栄子「私、正直な気持ちを、伊藤さんに伝えたい」
伊藤「紗栄子さん・・・」
紗栄子「駆け引きなんかしたらダメよね」
伊藤「それは、そうだけど?」
紗栄子「結果を恐れて、楽な交際を選んでも、本当の愛には届かない」
伊藤「そんなに真剣な瞳で、見つめられると・・・」
紗栄子「今年のクリスマスは、素直な私でいたいと思う」
伊藤「うん」
紗栄子「だから・・・」
伊藤「だから?」
紗栄子「正直な気持ちを聞かせて?」
伊藤「紗栄子さん・・・」
紗栄子「今年のクリスマスが、私にとって、どんなクリスマスになろうと悔やまない」
伊藤「わかった・・・僕は・・・」
〇川沿いの公園
津村カンナ「モニターさんの中には、こうして生まれた新鮮なカップルも・・・」
江藤蘭「先が見えないから、恋って素敵なのかもね」
津村カンナ「年に一度のクリスマス、自分の気持ちを正直に伝えて、結果はお楽しみに」
江藤蘭「小学生には思えないセリフ」
津村カンナ「小学校中退だからね」
江藤蘭「今年もいいクリスマスになるといいわね」
江藤蘭「稼ぎ損ねたけど・・・」
〇クリスマスツリーのある広場
Merry Christmas
このブレスレットを市場に出すことを推しとどめたミーさんの見解は正しかったですね。でも、モニターになった方にはある意味多大な恋の勇気を与えた商品になりましたね。
相手の気持ちを探ったり、想像したりするのも恋愛の醍醐味のひとつですもんね。
やっぱり先が見えるのも良し悪しだと思うんですよ。
わからないほうが楽しい気がします。
確かに結末がわかってる映画を見たり、オチがわかっているお笑いを見たり、結果がわかってると面白くないですよね。
わからないからこそ面白たんですよね!