俺の秘められた能力が異世界で覚醒し金髪碧眼のエルフとの新たな恋愛が始まることもなく現実で頑張る

ラム25

目覚め(脚本)

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〇コンビニのレジ
シンジ「あーあ、異世界行きてえなあ」
  彼の名は慎司。容姿はぱっとせず、頭脳も明晰とは言いがたく、目立った特技のない普通のフリーターだった。
  そんな彼は主人公が異世界に行き、大活躍してハーレムを築くアニメに夢中になった。
店長「おい、お客様来てるぞ!」
シンジ(はぁ、こんな糞みたいな世界は俺の居場所じゃないんだ・・・ 俺には眠ってる力があるはずなんだ・・・)
  そしてバイトが終わると、一人暮らしのアパートに帰宅する。

〇クリスマス仕様のリビング
シンジ「寝て目が覚めたら異世界行ってねえかなあ・・・」
  そして慎司は眠りについた。

  きて ──起きて
シンジ「んだよ、うっせえなぁ・・・」

〇養護施設の庭
  目を開けると金髪碧眼の美しい女性が顔を覗き込んでいた。
シンジ「あれ!? え?」
シルフィ「あぁ、やっと来てくれたのね、勇者様!  私はシルフィ、あなたに頼みがあるの!」
シンジ「なんだ!? どういうことだ!?」
  広がる光景も見たことのない植物が広がっている草原だった。ここはまるで──
シルフィ「ここはユスケティア。魔王が世界を滅ぼそうとしているの! だから助けて!」
シンジ「ま、魔王・・・?」
シルフィ「!? 魔物の気配だわ!」
  話していると何やら2mほどの大きさのグロテスクな怪物がやってくる。
シンジ「う、うわ! なんか化け物が来たぞ!」
シルフィ「あれはフォレストスライム!さぁ、勇者様の力を見せて!」
スライム「ぐるぅううううううう!!!」
  けたたましく威嚇するスライム。
シンジ「こ、こんな強そうなスライム見たことねえよ!」
シンジ(いや、ま、待てよ!? 異世界に来たって事は俺の能力が覚醒しているのでは!?)
シンジ「ククク、いいだろう、来い魔獣。俺の秘められた力を見せてやる。出でよ、地獄の業火! 唸れ、奴を呑み込め!」
  そう言いシンジは力をこめ、右腕を突き出す。そしてシンジの秘められたマナと同調し地獄から漆黒の炎が生成される──
  ・・・ことはなかった。
シンジ「あ、あれ? 出でよ!」
  スライムは怪訝そうに首を捻ると、やがて相手する価値も無いと判断したのかあくびをし、去って行った。
シルフィ「ぷっ、あっはははは! 出でよ(笑)地獄の業火(笑)」
  シルフィは腹を抱えて笑っていた。
シルフィ「あのねぇ、スライムはレベル1のクソザコナメクジなのよ? 私ですらレベル17のアークデーモンまでなら倒せるのに」
シンジ「い、いや、俺には秘められた力が・・・・・・」
シルフィ「もうそれは聞き飽きたわ。わざわざ来て貰ってごめんなさい」
シンジ「そんな、こんな世界いても意味ないじゃないか・・・どうやって帰れば・・・」
シルフィ「魔王を倒さなきゃ帰れないという契約なのよ」
シンジ「ま、魔王って強いのか?」
シルフィ「レベル999と言われてるわ。実際には999までしか計れないからもっと上とも言われてるわね」
  シンジは目の前が真っ暗になった。
シルフィ「まぁしょうがないから帰れるまで面倒は見てあげる」
  そしてシンジはシルフィの居候になった。

〇怪しげな酒場
シンジ「くそ、俺には何か力があるはずなんだ・・・! どうにかして魔王を・・・・」
  シンジは酒場でぼやいていた。
アンドリュー「兄ちゃん、魔王を倒そうって言うのか?」
  そう話しかけたのは鎧と筋肉に覆われた屈強な男。
  見るからに強そうだ。
シンジ(そうだ、自分が戦えないなら戦えそうな人を集めればいいじゃないか)
アンドリュー「俺はアンドリュー。戦士だ。こっちがカイル、魔法使い」
  カイルは見るからにインテリと行った黒髪のスマートな男だ。
アンドリュー「カイルはなんと空気を凍らせる魔法が使えるんだぜ」
シンジ「え!? そりゃ凄い! それにアンドリューさんも強そうだ! これなら希望が見えるんじゃ・・・」
  詠唱を始めるのだろう、カイルは深く息を吸うと何やら口にした。
カイル「俺は30までに結婚するはずだったんだ。でも未だに相手がいないんだ・・・」
シンジ「・・・」
  場に重い空気が流れる。なんと言えば良いか分からない。
アンドリュー「な? 凄いだろ、カイルの空気を凍らせる魔法! 飲み会で解散したい時に凄く便利なんだ」
シンジ「凍らせるってそういう意味かよ! 使えねえ!」
  その時、ドアが勢いよく開かれる。
  そして何やら高貴な面構えをした男がつかつかと歩いてくる。
魔王「マスター、いつもの頼む」
アンドリュー「あ、魔王! 今日も愚痴か?」
シンジ「え!? 魔王!?」
  アンドリューはさらっと信じられないことを口にした。
魔王「ああ。カミさん、相変わらず俺のことなんか見向きもしない。それに娘も最近は俺なんか無視するんだ」
カイル「結婚してるだけマシじゃないか。俺なんて・・・」
アンドリュー「俺も結婚はもう諦めてるんだ・・・年齢が年齢だからな・・・」
魔王「結婚したっていいことなんてない。裏切られるのがオチだ・・・」
  3人で何やら傷の舐め合いが始まった。
魔王「君も結婚なんてするものじゃないよ」
  魔王にまで何やら言われる。
シンジ「あの、魔王さん世界を滅ぼすんじゃ?」
魔王「家庭が崩壊してるのに世界滅ぼすどころじゃないだろ・・・」
シンジ「あっそうですか・・・俺、あなた倒さなきゃいけないんですけど」
魔王「君は若いしいくらでもチャンスがある。君の勝ちだよ」
シンジ「いや、そうじゃなくて・・・」
魔王「それに比べて俺はもう40代半ば・・・くそっ・・・なんて人生なんだ・・・俺は負け犬だ・・・」
シンジ「魔王さん、その元気出し──」

〇クリスマス仕様のリビング
  次の瞬間シンジは部屋にいた。
シンジ「あれ、俺は魔王を倒したことになったのか・・・・・・」

〇コンビニのレジ
シンジ「俺、バイト辞めます」
店長「そうか、まあ今までご苦労だったね。しかしこれからどうするんだ?」
シンジ「真面目に就職してまともな相手と結婚します」
店長「異世界異世界言ってたのに急に現実的になったな」
シンジ「いや、異世界なんていいことありませんよ・・・」
シンジ(それにああいう風にだけはなりたくないからな・・・)

〇養護施設の庭
  それからシンジは就職し、数年後にはそれなりの相手と結婚し、そこそこ幸せになった。
  あの異世界・・・なんて言ったっけ、あれがどうなったかは知らないがシンジは現実世界では勝ち組と言える存在になった。

コメント

  • さらば、異世界……!

    普通の会社で働いて、普通の給料を貰って、普通の時期に普通の相手と結婚して…って、もう今時じゃ完全な勝ち組ですものね🤤
    僕も目覚める為に一度異世界に召還されたいものです(´・ω・)

  • 「空気を凍らせる魔法」が予想外で笑いました!
    魔王様、不憫ですね…笑

  • 面白かったです。
    異世界も世知辛そう…(笑)

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