第6話 誰もが誰かの!(脚本)
〇病室のベッド
かのん「はい」
かのん「・・・何しに来たの?」
ひろし「助けにきた」
ひろし「俺は・・・ヒーローだから」
かのん「またそれ? 何もできないくせに」
ひろし「・・・その通りだ」
ひろし「君のことは救えないし 病気も、治せない」
ひろし「でも」
ひろし「助けてほしいって気持ちに 寄り添うことならできるかもしれない」
ひろし「俺は、そこに全力を尽くすよ」
ひろし「もし怖さに飲み込まれそうになったら」
ひろし「俺が”大丈夫”って伝えに来る」
ひろし「何回でも」
ひろし「エンパシオンは苦しいときこそ 『大丈夫!』って」
ひろし「堂々と胸を張っただろ?」
ひろし「ヒーローの『大丈夫』にはさ」
ひろし「特別なパワーがあるんだよ」
かのん「そんなの言われても どうにもなんない」
ひろし「どうにもならないって分かってても」
ひろし「助けてって思ってたんだろ?」
ひろし「ずっと」
かのん「それは・・・」
ひろし「だから俺が来たんだ」
ひろし「まぁ、もう心の声は聞こえないけどな」
かのん「・・・聞こえなくなったの?」
ひろし「あぁ。この前からパッタリ」
ひろし「俺も、ヒーロー失格認定されたのかもな」
ひろし「ははは・・・」
かのん「・・・・・・」
ひろし「・・・あのさ」
ひろし「なんで俺達がエンパシオンみたいな力を 手に入れたのかは分からないし」
ひろし「全てを救えたわけじゃないけど」
ひろし「それでもきっと」
ひろし「やろうとした事は 無駄じゃなかったはずだ」
ひろし「本当は、分かってるんだろ?」
かのん「っ・・・」
ひろし「ヒーローに意味ないなんて 寂しいこというなよ」
かのん「──うるさいっ」
かのん「私の気持ちなんてわかるもんかっ!!」
ひろし「あ! おい、どこいくんだよ!?」
ひろし「はぁ・・・難しいな」
ひろし「でも、伝わってないわけじゃない」
ひろし「また話しにこよう」
「――さんは、奥の部屋から確認して!」
「早く! 軽度の人なら避難経路と──」
ひろし「なんだ? やけに廊下が騒がしいな」
凛子「失礼します!」
凛子「え、ひろし!?」
凛子「なんでここに」
ひろし「俺は、お見舞いで・・・」
ひろし「あのさ、凛子。この前は、その」
凛子「それどころじゃない! かのんちゃんは?」
ひろし「今、病室飛び出してったけど」
凛子「大変・・・早く見つけないと!」
ひろし「何かあったのか?」
凛子「院内に刃物を持った女が侵入したの」
ひろし「!?」
凛子「もしかしたら指名手配中の犯人かもって」
ひろし「指名手配中って、まさか・・・」
ひろし「俺、かのんちゃん探してくる!」
凛子「ちょっと!! ひろし!?」
〇広い屋上
かのん(・・・分かってるよ)
かのん(全部を救えないことも ヒーローが無駄じゃないことも)
かのん(でも)
かのん(もう全部が嫌なの・・・)
男の子「ねえ大丈夫? どっか痛いの?」
かのん「え?」
男の子「暗い顔してるから」
かのん「・・・ううん、平気。ありがと」
かのん「──あれ? この音、パトカー?」
男の子「あ、下見て! 入り口で止まった」
男の子「すげー、どんどん来る ドラマみたい」
かのん(・・・何か、あったのかな)
かのん「君は一人で来たの?」
男の子「うん。病室にいるの飽きたから」
かのん「そっか」
かのん「じゃあもう戻ろ 病室まで送らせてよ」
〇大きい病院の廊下
かのん「この階で合ってるんだよね?」
男の子「そう、一番奥」
かのん(おかしい、どうして誰もいないの)
男の子「なんか、静かだね」
かのん「うん・・・」
男の子「あ! でも、誰かこっち来るよ」
かのん(足音が、やけに響く)
女「ねえ、あなた達!」
女「彼がどこにいるか、教えてくれない?」
かのん「彼? 誰のこと・・・」
かのん「え!?」
かのん(手に持ってるのって)
男の子「ねえ! あ、あの人、包丁持ってる」
女「なあに? その表情 何か知ってるの?」
かのん「走って!! 早く、こっち!!」
女「なんで逃げるの・・・」
女「おいっ! 待てよ!! あぁぁあああ!」
〇屋上の入口
〇広い屋上
かのん「――はぁ、はぁ」
かのん(どうなってるの、一体)
かのん(屋上に戻ってきちゃったけど・・・)
男の子「俺、殺されんのかな・・・」
男の子「やだよ・・・うっ」
かのん「お願い、だめ、泣かないで」
かのん「大声出したら、見つかっちゃう」
かのん(どうしよう・・・何て言えば・・・)
男の子「うっ、怖ぇぇ」
〇病室のベッド
大丈夫
〇広い屋上
かのん「・・・大丈夫」
かのん「絶っ対、大丈夫!!」
男の子「え?」
かのん「怯えてたって仕方がないでしょ」
かのん「胸張って! ほら、一緒に言って?」
男の子「・・・大丈夫?」
かのん「うん!」
かのん「この言葉はね、特別なの」
かのん「大丈夫、すぐ警察も来てくれるって」
男の子「・・・うん」
かのん「!?」
男の子「ひっ・・・」
かのん「私の、後ろに隠れて」
女「・・・見つけた」
女「ねえ、彼はどこ?」
かのん「知りません」
女「嘘付かないで?」
かのん「本当に知らないんです」
女「とぼけてんじゃねーよ!!」
かのん「うっ、うぅ」
かのん(どうしようどしたらいい、こわい!!)
女「もういい、あんた達はいい」
女「・・・邪魔、死んで」
かのん「・・・誰かっ・・・お願い」
かのん「誰か助けて!!」
〇黒
誰か
〇広い屋上
ひろし「そこまでだっ!!」
かのん「!?」
女「あぁ? 誰だよあんた」
ひろし「やっぱり、君だったのか・・・」
ひろし「落ち着こう! まずは刃物を置いて」
女「うるさいっ!」
かのん「危ないっ」
ひろし「・・・ぐっ」
ひろし(危っねえ、腕ちょっと切れた)
ひろし(痛ってぇぇ)
ひろし「だ、大丈夫だから、早く逃げろ!」
ひろし「くそっ」
ひろし(なんかこの状況・・・デジャブ)
〇学校の屋上
そっかこれ、エンパシオンの最終回と同じ
え、待って。もしかして俺
〇広い屋上
ここで──終わりなのか!?
ひろし「うぉぉぉぉお」
ひろし「負けるかぁぁ」
女「お前ぇええぇ」
ひろし「な・・・何かを!」
ひろし「成し遂げることが、全てじゃない」
かのん「!」
女「あぁああああ」
ひろし「どんな状況でも決してあきらめず」
ひろし「困っているものに手を差し伸べるっ」
ひろし「それが!」
それが!
かのん「・・・ヒーロー」
警察「警察だっ! 手を上げろ」
〇空
〇広い屋上
「ひろしーっ!!」
凛子「生きてる!? 無事!?」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
物語として大変面白く、また、ヒーローとは何たるかを考えさせられる作品でした
悪を倒すためのスーパーパワーやヒーローの象徴ともいえるコスチュームがなくても、ひろしの人を助けたいという想いと諦めない姿はまさにヒーローでした これからもひろしは困っている人たちを助け続けるのだろうなと思います😂
不器用でも、カッコ悪くても、失敗したとしても、最後まで諦めない。
素敵なHEROでした。
きっとどんな人でも、誰もが誰かのために戦える😊
もしかしたら、いつか自分にも誰かの心の声が聞こえてくるかも知れない😆
最高に素敵なヒーロー物語でした!👍✨️