本編(脚本)
〇魔界
メガネの悪魔「サタン様。本日はクリスマスです」
サタン「聖夜か・・・・・・まったく忌々しい。神どもは変わらず信仰されているというのに、我らの権勢は衰えるばかりだ」
メガネの悪魔「人間は信じたいものしか信じませんからね。そこでサタン様。ワタシに腹案があります」
サタン「ほう? 話してみろ」
メガネの悪魔「サタン様がサンタに扮し、人間どもの悩みを解決するプレゼントを置いていくのです」
サタン「なんて??」
メガネの悪魔「サタン様がサンタ様になるのです」
サタン「バカな、我に下っ端天使のようなことをしろというのか。それに何の意味がある!」
メガネの悪魔「フフフ、プレゼントにそっと、悪魔契約の方法と、御名を書き残しておくのですよ」
メガネの悪魔「いわばこれは広告です。実際に利益を与えることで、契約への偏見やハードルを取り除くのです」
サタン「なるほど・・・・・・そういうことなら、面白い考えだ。我自身がやる意味は?」
メガネの悪魔「めんどくさ――契約もなしに長時間現世へ顕現できるのがサタン様くらいだからです」
サタン「今めんどくさいって言わなかった?」
メガネの悪魔「気のせいです。さあ、行くのです! 魔王サタンよ!」
メガネの悪魔「今こそサンタサンとなり、愚かな人間どもに悪魔の偉大さを知らしめるのです!」
サタン「勇者を送り出す神かよ」
〇雨の歓楽街
サンタサン「さて、人間界へやってきたはいいが、どこから手を付けたものか・・・・・・近くの人間の心でも聞いてみるか」
ヤクザ「(あー・・・・・・今日も交渉疲れたなぁ。警官の奴、今更潔白ぶりやがって。大人しく金を出せばいいのに)」
サンタサン「なるほどなるほど、いつの時代も交渉というのは面倒なものだからな。よし、手始めにこいつにプレゼントを与えることにしよう」
サンタサン「何がいいか・・・・・・そうだ!」
〇怪奇現象の起きた広間(血しぶき無し)
サンタサン「ククク、ぐっすり眠っておるわ。人間よ、明日からお前の悩みは消えてなくなる。この『大量の銃器と爆弾』によってな!」
サンタサン「結局武力よ。力があればなんとでもなる。感謝は要らぬぞ、人間。ではな、ハハハ!」
ヤクザ「すぴー!」
〇雨の歓楽街
サンタサン「よし、では次だ。何々?」
悪徳警官「(くそっ、ヘマをしちまったでござる・・・・・・このままでは押収したヤクの横流しがバレてしまい候。いったいどうすれば)」
サンタサン「なるほどなるほど、誰にでも隠し事はあるものだからな。よし、次はこいつにプレゼントを与えることにしよう」
サンタサン「何がいいか・・・・・・そうだ!」
〇城のゴミ捨て場
サンタサン「ククク、ぐっすり眠っておるわ。人間よ、明日からお前の悩みは消えてなくなる。この『大量の諭吉』によってな!」
サンタサン「結局財力よ。金があればなんとでもなる。感謝は要らぬぞ、人間。ではな、ハハハ!」
悪徳警官「ぐかー!」
〇雨の歓楽街
サンタサン「さて、次で最後にしようか。悩める人間よ、声を聞かせるがよい」
密輸業者「(違法薬物の売買はそろそろ潮時だな・・・・・・次は何がいいか。なにか儲かるもの・・・・・・)」
サンタサン「なるほどなるほど、需要の見極めは難しいものだからな。よし、最後はこいつにプレゼントを与えることにしよう」
サンタサン「何がいいか・・・・・・そうだ!」
〇怪しげな部屋
サンタサン「ククク、ぐっすり眠っておるわ。人間よ、明日からお前の悩みは消えてなくなる。この『大量の密造酒』によってな!」
サンタサン「結局酒よ。酒があればなんとでもなる。感謝は要らぬぞ、人間。ではな、ハハハ!」
密輸業者「ずぼー!」
〇魔界
サタン「というわけで、配って来たぞ」
メガネの悪魔「悪魔関係ねーじゃねーか」
サタン「えっ」
メガネの悪魔「現世で手に入るもの配ってどうするんだよ! 悪魔にしか与えられないものじゃないと宣伝にならねーだろ!」
サタン「で、でも・・・・・・ほら、手に入れるのが難しいものではあるし、我がんばったし」
メガネの悪魔「はぁ・・・・・・終わったことはもう仕方ありませんね、現世の様子を覗いてみましょう」
テレビ「本日未明、警視庁は、都内の暴力団と、地区を担当する署長を、違法薬物密売及び銃刀法違反などの疑いで一斉検挙しました
また同時に薬物の密輸、及び酒の密造の疑いで都内在住の男が逮捕されており、警視庁はここから薬物が流れたとする見解を・・・」
メガネの悪魔「・・・・・・」
サタン「・・・・・・」
テレビ「また、事件に関わった主要人物の自宅には、サタンクロースと名乗る人物の手紙が残されており
SNSなどで社会の闇に潜む悪を裁く義賊だなどと盛り上がりをみせ、正義の魔王だとして支持を集め・・・・・・」
メガネの悪魔「せ・・・・・・成功ですねサタン様!」
サタン「なんか違う!」
面白い。サタンの能力は人間界の悪を解決する為に使った。結果的に魔王の評判は上がっていいんでしょうけど、なんか悪の本質がズレてますね。
とても面白いお話でした!
サタンかサンタか、一瞬見分けが付きませんが、正反対の人物な気もします。
結果として正義に加担してしまったけど、名が売れたのかもしれませんね笑
最後がいいですね!(笑)思わずプッとなりました。短いストーリーの中に内容がぎゅっと組み込まれてあり一気に集中して読ませて頂きました。