第6話:デッドマンズ・レストラン(脚本)
〇ホストクラブ
小判鮫「折り入って話って何だ? ついに俺の女になる覚悟ができたのか?」
鐘星愛「インサイダー取引って言葉、知ってる?」
小判鮫「お前・・・どうしてそれを!」
鐘星愛「セレブから犯罪者の仲間入り。 豪勢な夜遊びも今夜で終わりかもね」
小判鮫「・・・何が狙いだ?」
鐘星愛「神門家に私を売りこんで欲しいの」
鐘星愛「家庭教師を次々にクビにしている 受験生がいるって話だったわよね」
小判鮫「神門家に出入りするにはそれなりの 学歴と家格が必要だ」
小判鮫「家庭教師だってきちんと身元調査している」
鐘星愛「でも、その調査をするのは 貴方なんでしょう?」
〇広い厨房
小判鮫「――ってなワケで、この女の犯罪の 片棒を担がされてるんですよ、俺は」
小判鮫「ああ、話してスッキリした。 さて、ババアの好物マカロンでも探すか」
小判鮫はキャビアの缶詰をポケットに
詰めると、他の棚へと移った
鐘星愛「・・・見損ないました?」
神門友貴「どうして?」
鐘星愛「夜の仕事なんてして大学を中退して 嘘までついて神門家にもぐりこんで」
神門友貴「若い女性が一人、お母さんの医療費を 稼がないといけないとしたら 他に方法が思いつかないよ」
神門友貴「悪いのは俺だ。俺が気づいて 手を差し伸べるべきだったんだ」
鐘星愛「・・・先輩が悪いはずないじゃないですか」
鐘星愛「・・・私は先輩みたいに 立派な人間じゃないんです」
神門友貴「俺なんてたいした人間じゃないよ」
神門友貴「人を見殺しにした」
神門友貴「白神様やその信者たちもそう。 エレベーターで上がってくるときも・・・」
神門友貴「・・・子どもの泣き声が聞こえたんだけど 探しても見つからなくて・・・」
鐘星愛「先輩は立派な人です。私が保証します」
神門友貴「・・・ありがとう」
先輩はペットボトルを
リュックに詰めこみはじめる
鐘星愛「水とかお茶でいいんですか?」
神門友貴「我が母ながら、この状況で エスプレッソなんて正気じゃないよ」
神門友貴「この会社のお茶、好きだったよね?」
ユウキ先輩はペットボトルを私に手渡した
鐘星愛「ありがとうございます。 覚えていてくれてたんですね」
神門友貴「ところで君が神門家に近づいた理由は?」
鐘星愛「・・・お金が欲しかったんです。 一生、楽して生きていけるだけのお金が」
鐘星愛「大学を退学して水商売までしてるのに 貯金もできず母の医療費に消えてしまう 生活が・・・辛かったんです」
鐘星愛「神門家に近づけばコネが手に入り ブルジョワの仲間入りができると 思いました」
神門友貴「自分に嘘をついていたんだね」
鐘星愛「え?」
神門友貴「君は分かっているはずだ。君に必要なのは 神門家のコネでもお金でもない」
神門友貴「君に必要なのはお母さんだよ」
鐘星愛「母、ですか?」
神門友貴「今度、二人でお見舞いに──」
〇水色(ライト)
窓ガラスが割れ、ゾンビが三匹入ってきた
「ァァアアァァアアァァッ!」
〇広い厨房
鐘星愛「先輩・・・」
神門友貴「わかってる」
鐘星愛「貴方も動かないで、音を立てないで」
小判鮫「くそっ・・・ 缶詰を詰め込みすぎちまって・・・!」
鐘星愛「あっ!」
小判鮫のポケットから缶詰が落ちる
小判鮫「くそがっ!」
ゾンビ「シァアアァァアアァァッ!」
小判鮫「くそがっ! これでも喰らえ!」
ゾンビ「ァアッ!」
小判鮫「柔道三段を舐めんじゃねえぞ!」
小判鮫は想像以上に敏捷で
次々とゾンビを投げ倒していく
小判鮫「そらっ!」
ゾンビ「ァアッ!」
小判鮫「だはははは! 神門家から受けた屈辱 お前たちにぶつけてやるぜ!」
鐘星愛「危ない、うしろ!」
黒目ゾンビ「ィイァアッィイアアアッ!」
小判鮫「うわっ!」
黒目ゾンビが小判鮫を押し倒す
黒目ゾンビ「ギギシャァァガアアアッ!」
小判鮫「くそっ、来るな! な、なんて力だ・・・ あがぁああああっ!」
神門友貴「俺が囮になるから、背後からバットで アイツの頭を叩いてくれ」
鐘星愛「いえ、私が囮になります」
私は小判鮫に覆いかぶさる黒目ゾンビの
背中を蹴りあげた
鐘星愛「私が相手よ!」
黒目ゾンビ「ィイァアッィイアアアッ!」
神門友貴「はっ!」
黒目ゾンビ「ギャボンッ!」
先輩の鋭いバットの一振りで
黒目ゾンビは動きを止めた
鐘星愛「ふぅ・・・ありがとうございます」
神門友貴「何をしてるんだ! 危ないだろ!」
鐘星愛「囮になろうとした先輩に 言われたくありません」
鐘星愛「それに私の力では頭を潰せるか わかりませんから──」
黒目ゾンビ「ィイァアッィイアアアッ!」
鐘星愛(まだいたの!?)
神門友貴「危ない!」
神門友貴「ぐっ!」
私と黒目ゾンビの間に入った先輩が
吹き飛ばされて壁に衝突する
鐘星愛「先輩!」
神門友貴「・・・逃げろ!」
黒目ゾンビ「ィイァアッィイアアアッ!」
鐘星愛(逃げ道はない・・・もうダメかも・・・)
黒目ゾンビ「――ィアッ!」
突然、黒目ゾンビが前のめりに倒れた
神門ミチ「・・・大丈夫?」
ミチくんの手には日本刀が握られていた
鐘星愛「ミチくん! どうしてここに?」
神門ミチ「受験のストレスを発散させたくて」
鐘星愛「私のことを心配してくれたの?」
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