それぞれの願い(脚本)
〇学食
りりい「はぁ・・・」
りりい「またこの人・・・」
りりい「この人もだ・・・」
秋津「先輩、どうしたんすか?」
りりい「あきちゃん」
りりい「漫画の原作小説コンテストの結果発表よ」
りりい「このAって人、別のコンテストでも 佳作取ってた」
りりい「Bって人もまた期待賞。 まだ14歳なのに・・・」
秋津「神田も入ってましたね、去年」
りりい「すごいよね・・・」
りりい「あたしなんて、この人の倍以上書いてるのに 全然かすりもしないのよ・・・」
りりい「プロットもきちんと決めて 書いてるのに・・・」
りりい「才能ないよね・・・」
りりい「どうしたらみんなみたいになれるのかな・・・」
秋津「・・・先輩・・・」
りりい「何笑ってんの!?」
秋津「あ、いや・・・」
りりい「あたし、文章は下手だからアイデアで 勝負しようと思ってるの」
りりい「でも、文章が下手だと フォロワーも増えないし」
りりい「読まれない・・・」
りりい「キャラが弱いのかなぁ・・・」
りりい「入賞経歴、あたしだって書きたいよ!!」
りりい「あたしだって、『最終候補選出』とか 『第○回コンテスト優秀作』に選ばれたいよ!!」
りりい「ちょっと聞いてる!?」
秋津「すいません!!」
秋津「あっ!!勝手に!!」
〇SNSの画面
りりい「フォ・・・」
りりい「フォロワー10万人・・・!?」
秋津「返してっ!!」
りりい「うわああああん!!」
秋津「すいませんて」
〇学食
りりい「あきちゃんもそんなにいて・・・」
りりい「もうやだぁ!!」
りりい「あたしもあきちゃんみたいに せめてみんなに好かれたい!!」
秋津「・・・・・・」
りりい「でも、向いてないのよ」
りりい「あたしすぐ生活感出しちゃうから」
りりい「バイト先の愚痴とか 落選したときの悔しさとか 書きなぐっちゃう」
りりい「そういうことするから好かれないんだって 分かってるけど・・・」
秋津「・・・・・・」
〇電脳空間
ゆりのすけ「みんなー♡ チャンネル登録ありがとう!」
ゆりのすけ「みんなのおかげで チャンネル登録者数20万人突破しました!」
〇学食
秋津(確かに多くの人が見てくれているが・・・)
秋津「俺は・・・っ!!」
りりい「ん?」
秋津(いやいや)
秋津「誰かひとりでも好きと言ってくれるなら 書く価値はありますよ」
秋津「俺は好きですよ!! 先輩の小説!!」
りりい「本読まないあきちゃんに 言われてもなぁ・・・」
秋津「うっ・・・」
〇テーブル席
ユーザー「今回も神」
ユーザー「鼻血出た」
ユーザー「こんな風に想われたい!!」
秋津「あ り が と う ご ざ い ま す」
秋津(どうやったら先輩の小説の読者数を 増やせるかな・・・)
秋津(俺のフォロワーに拡散してもらおうか!)
秋津(バズったら宣伝していいらしいし、 1万RT以上いったら小説のURLを・・・)
りりい「わっ!!」
秋津「ちょ!!」
秋津「驚かせないでください!!」
りりい「いいじゃん別に」
りりい「あきちゃんいっつもこの席いるし」
秋津「よくないです!!」
りりい「音楽ランキング番組だ!!」
〇テレビスタジオ
アナウンサー「『動画サイト新配信ランキング~!!』」
アナウンサー「『今週の1位は~!!』」
「『10代のココロをわしづかみ!!』」
「『動画サイトから一気に火がついた 新進気鋭のVTuber・ゆりのすけの最新ソング!!』」
「『【運命の赤い糸?、あ、こっちに繋がってます】です!!』」
〇テーブル席
りりい「この人、今人気あるよね」
秋津(知ってた!)
秋津「先輩! もしよかったら小説サイトのアドレス 教えてくれませんか!?」
秋津「俺が全力で誉めちぎってガチ推しします!!」
りりい「え?」
りりい「あぁ、飲む? いいよ飲んでも」
秋津(って違う!! キュンするな!!)
秋津(もう全然聞いてないし)
秋津(先輩への想いを綴って適当に曲つけたら すぐバズった「ゆりのすけ」)
秋津(あっちは多くの人に聞いてもらえたのに)
秋津(肝心のこっちは全然上手くいかないんだよな・・・)
りりい「ん?」
秋津「あ、いや・・・」
秋津(俺が欲しいのは先輩だけなのに)
〇商店街
秋津「月がきれいですね」
りりい「え?」
りりい「あぁ、うん!そだね!」
秋津「・・・・・・」
秋津(小説家になりたいなら それくらい知っとけ)
りりい「あきちゃん・・・」
りりい「明日も一緒に帰りたいな!」
りりい「あたし明日6限まであるから ちゃんと待ってるんだよ!!」
秋津「俺は1限で終わ・・・」
りりい「待っててね!!」
秋津「はい・・・」
秋津(クソ・・・)
秋津(カワイイ・・・)
秋津(思い通りにならないからって何だ!?)
秋津(先輩といるだけで こんなに幸せじゃないか!!!!!!)
秋津「肌寒いですね」
りりい「走って帰ろっか!」
秋津(違う、そうじゃない)
りりい「走りたいなら素直に言えばいいのに!」
秋津「いや別に・・・」
秋津「──!?」
秋津(肌寒いですね、の意味は ”あなたと触れ合いたい”)
秋津(これってOKってこと!?)
りりい「なるほど~!!」
りりい「全体的に大きくて指が長く、 関節が際立ってる感じかも!!」
りりい「これを小説に取り入れれば 上手な文章、書けるかも知れない!!」
秋津「・・・良かったですね・・・!!」
秋津(こんなことだろうと思ってた!!)
秋津「ガンガン触ってください!! 腕でも腹でも出しますから!!」
りりい「え、キモッ・・・」
りりい「そういうこと言っていいの 神田くん(イケメン)だけ」
秋津「くっ・・・!!」
秋津「この世は辛いな」
秋津「一部の出来る奴が 出来ない人のぶんの仕事も かっさらっていくんだもんな・・・」
りりい「・・・・・・」
「へぶっ!!」
「万アカのあきちゃんに言われたくない!!」
「ク・・・クソォ──!!」
なるほど!! 秋津は実はゆりのすけで曲で大勢の心を掴めるのに、たった一人のりりいちゃんの心は掴めない。バズる人とバズらない人、互いに本当に欲しい物は手に入らないという、そのまま小説にできそうな深い内容ですね。このナイーブさ、とても日本的ですね。自分はハリウッド映画ばかり見てるせいか、この辺のナイーブさが足りないかもしれないと思いました。自分に足りない感覚を教えられた気分です💦
これは楽しいお話ですね!
私も入賞したことないので先輩の気持ち痛いほどわかりました😂
でも人生それだけじゃないよね!
愛されキャラなところも可愛いかったです!
あの、先輩は月がきれいですねの意味を本当に知らなかったのでしょうか?
台詞回しのセンスすごいですね🌟
つい笑ってしまいました🤣