《第3話》お弁当屋さんでの人間関係のアレコレ。(脚本)
〇商店街
美波(・・・この辺だと思うんだけどな)
美波(あった!)
〇カフェのレジ
井上「あ!ミナミちゃん!来てくれたんだ!」
美波「はい。井上君にもらったチラシを 見ていたら、今日の夕飯ここに決めたって お腹がGOサイン出しましたよ」
井上「あはは。女性向けメニューとかもあるし 惣菜コーナーも充実してるよー!」
美波「本当ですね。少量ずつ買って 食べ比べるのも美味しそう・・・」
ほのか「いらっしゃいませ! ・・・朔弥君、お知り合い?」
井上「ああ。うちの学校に久しぶりに来た 新任の先生だよ」
ほのか「朔弥君がお世話になります。 もしかして無理言って寄って いただいたんじゃありませんか?」
美波「無理ではありませんよ。 チラシをいただいて、帰るまで 飯テロされちゃった感はありますけど」
井上「え!?そうだったの?」
美波「そうなんです。英語科の先生達で 少し話し合いがあって この時間になってしまいました」
井上「ごめんねー。あの後すぐ帰れるもんだと ばっかり思ってたからさ」
ほのか「あの。もしよかったら今、試作のスープ 飲みませんか?」
美波「いいんですか?」
ほのか「はい。ランチタイムの女性向けに 軽いものを出そうと思ってたんです」
美波「それなら、ぜひ!」
井上「ミナミちゃん。立ち食いもなんだからさ こっちの椅子使って」
美波「ありがとうございます」
美波「イートインコーナー・・・というよりは 地元の方の休憩スペースという感じですね」
井上「うん、そうなんだ」
井上「店長のお祖母さんがやってたお店 なんだけど、腰を悪くして昔のスペースは 残して引き継いだって感じなんだ」
井上「だから常連達が好む惣菜とオシャレな デリっぽいメニューが並ぶわけ」
美波「なるほど。昔ながらの惣菜も 時々食べたくなりますよね」
井上「そうそう。ばあちゃん直伝の味って 感じのも人気あるんだ。後は──」
向井「えーっと、これはどういう状況なのか 説明出来るか?井上」
井上「ああ、御隠居も今帰り?」
美波「え?向井先生?」
向井「またお会いしましたね、朝比奈先生。 井上が何か悪さでもしたんですか?」
美波「いえ!ここのサービス券とチラシを いただいて立ち寄っただけですから」
井上「そうそう。客商売なんだし、 宣伝活動くらいいいだろ?」
向井「うん。まあ、そういうことなら 問題はないけどな」
ほのか「あ、向井先生!最近の体調はどうですか? お疲れ様メニューもありますよ」
向井「はは。歳ですかねえ。体調は相変わらず ですが、先日勧めていただいた惣菜は 美味しかったです」
ほのか「それじゃあ、もっとうちに通ってもらって 元気になってもらわなきゃいけませんね!」
向井「店長さんは相変わらず商売上手ですね~」
井上「・・・・・・」
美波(あれ?これは、もしかして・・・)
美波「井上君。もしかして、先生にお世話に なったのってバイト先と関係あったり しますか?」
井上「去年、ここで酔っ払い客と揉めてさ。 たまたま通りかかった御隠居に 助けてもらったのが縁って感じかな・・・」
美波(なるほど・・・)
親しげに話す向井先生たちの様子を
少し離れた場所から見守る井上君。
──何となく、彼の思惑がわかって
しまった気がする。
井上「何すか、その微妙な顔は・・・」
美波「いえ。御隠居さんに私を勧めなくても いいんじゃないかなって思いまして」
井上「それは、ダメだろ!!」
美波(あはは。図星ついちゃった)
ほのか「大きな声出して、どうかしたの?朔弥君?」
井上「いや、何でもないよ。ミナミちゃんに 盛大にツッコミ入れてたってだけー」
向井「井上〜。ツッコミ入れるなんて 変なこと言ったんじゃないよな?」
井上「はいはい!そういうんじゃないから! 御隠居はいつものメニューでいいんだろ?」
向井「ああ。量もいつも通りでいいから」
井上「りょーかーい!」
そう言いながら井上君はカウンターの
奥へつながる厨房に入っていった。
美波(人間関係イロイロって感じねえ・・・)
〇カフェのレジ
美波「向井先生はこちらを よく利用されるんですか?」
向井「井上に誘われるので、結構な頻度で 利用させてもらってます」
向井「あいつは宣伝上手なやつなんです」
美波「私もこのチラシもらって行きたいって 思っちゃいました」
注文の品を待つ間、なぜか休憩コーナーで肩を並べることに。
あまり親しくない人間と一緒にいる
気まずさで口どりだけは軽いフリをする。
向井「先代のレシピや常連さん達の土台が あるとはいっても新しい客層を 掴まないとやっていけませんからね」
向井「店長さんも試行錯誤で頑張ってますよ」
美波「さっき試作のスープをいただいたんです けど、これ女子が好きだなって味でした」
美波「野菜多めでスパイスもいい感じに 効かせてましたね」
向井「なるほど。私も最近、一気に食が細く なったんで、今度女性向けメニューも 試してみたくなりますね」
美波(──!!)
〇黒背景
〇寂れた一室
美波「ちょっと〜!樹(いつき)さん! ちゃんとご飯食べてるの」
樹「ん?ああ・・・。全然食欲ない・・・」
美波「もお!スープくらいなら飲めるでしょ? キッチン借りるからね!」
樹「美波ちゃんもさあー。 僕なんか放っておいて友達と 遊んでくればいいのに・・・」
美波「何言ってんの?私が面倒見なかったら 誰が面倒見るっていうのよ!」
樹「・・・別に一人でも大丈夫だって。 死なない程度にその辺は適当にやるしさ」
美波「テキトーに出来てないから、こうして 私が様子見に来てるんでしょうが!」
樹「・・・。面目ない」
美波「まったく。樹さんみたいな人こそ ちゃんとここにいますって主張しなきゃ」
美波「そうしないと、みんなに特別とか言われて 距離置かれたりしちゃうんだからね!」
樹「はは。・・・それもそうかもね」
美波「私は、放っておかないけど!」
樹「・・・そっか」
〇黒背景
〇カフェのレジ
井上「御隠居もさーまだ30前半だってのに 胃弱すぎねえ?」
井上「そんなのんびりしたツラで、 内臓おかしくしすぎだって」
向井「いつも健康診断で何かしら引っかかる ような体だしなあー」
向井「元々そんなに強くないっていうのも あるな。うん」
井上「うん。じゃないって!」
井上「生物部のカメだって調子悪かったら 病院行くなり、良い餌やったりして 体質改善してやるんだろ?」
向井「カメと一緒にされても・・・」
井上「わかりやすい例え出さないと納得しない だろうが!それと同じくらい自分の体を 労ってやんなきゃ!」
井上「ミナミちゃんもそう思うだろ!?」
美波「え・・・!?ああ!そうですね!」
ほのか「心は体に繋がってますから、自分で 労わってあげないといけませんよ。先生!」
向井「はは。情けない教師で面目ない」
美波(──やだな。全然似てないのに、 変なところは一緒だし・・・)
井上「まったくなあ。さっさと元気出して ほしいもんだよ」
井上「ま、うちの飯食って体整えて 頑張ってくれよ。ほら、御隠居の分!」
向井「ああ。ありがとう、井上」
井上「はい!こっちはミナミちゃんのね!」
美波「・・・。ありがとうございます」
思い出さないように決めた光景が
いとも簡単に炙り出されてしまった。
美波(別に、こんなのちょっとした 偶然なんだから・・・)