ハードボイルドガール

月暈シボ

エピソード21(脚本)

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〇学食
麻峰レイ「どうした? 何か面白いことでもあったのか? あるいは私の顔が面白いとでも?」
  昼休みになり、昨日と同じく二人だけで大食堂にやって来た俺とレイだったが、
  いざテーブルに着いて食事を開始しようとしたところで、俺は思わず笑みを浮かべてしまう。
  レイはそれを指摘したのだった。
「いや・・・ちょっと悩み事があったんだけど、レイの顔を見たら悩んでもしょうがないと思ってさ」
麻峰レイ「君のような平凡な人間でも悩み事があるんだな・・・と言うのは冗談だが、」
麻峰レイ「私の顔を見て消えたのなら良かったよ。ちなみに悩みとは私達の関係のことかな?」
「・・・そう。レイに隠しても仕方がないから、はっきり言うけど・・・」
「君と付き合っているって噂がもうクラス中に知れ渡っているみたいでさ」
「あまり目立ったことのない俺からすると、何かと注目を浴びるのは・・・初めてで戸惑っているんだ」
  勘の鋭いレイに下手な隠し事は無意味であるし、信頼を損なうだけなので俺は正直に告げる。
麻峰レイ「ああ、そういうことか! なるほど・・・」
麻峰レイ「私は幼少の頃からこういった事態はいつものことなので当たり前と思っていたが、君は慣れていなんだな・・・」
  俺の告白にレイは驚いたように頷く。
  おそらく、幼い頃から目立つ存在だった彼女からすれば注目を浴びるのは当然のことなのだろう。
  今更、特別他人の目など気にするようなことではないし、
  むしろそれがあったからこそ、今のレイの性格やメンタルの強さに至っていると思われた。
麻峰レイ「いや、済まなかった。私としては君と付き合っていることにすれば、」
麻峰レイ「二人きりで行動するにも不自然ではないし、邪魔が入らないと思ったからなんだが、独断だったな・・・」
  もっとも、レイは自分の常識と他者、俺が持つ常識に齟齬(そご)があることを理解すると詫びを告げる。
  事実を受け入れ、素早く考えを改めることが出来るのも彼女の強さの一つだ。
麻峰レイ「・・・もし、君がこれ以上目立ちたくないと思うなら」
麻峰レイ「・・・捜査のことは解消しようか?」
  続けてレイは顔を強張らせながら俺に提案を行う。
「・・・ははは、俺が解消なんて望んでいないと知っている癖に、そんな提案をするなんてレイは意地悪だな!」
「しかもなかなかの演技派だ!」
麻峰レイ「ふふふ、やはり見破られてしまったか。思った通りの反応してくれて嬉しいよ! それでこそ君だ!」
  苦笑を浮かべて指摘する俺にレイは顔の緊張を解くと、いつもの口角を僅かに上げる笑みが浮かべる。
  俺達、男女としてはともかく、ユーモアのセンスに関しては既に阿吽(あうん)の間柄だ。
麻峰レイ「とは言え、あまり目立ちすぎるのも捜査には良くないな・・・」
  お互いの意志を確認したところでレイは俺の不安を再び取り上げる。
「いや、俺も考えたんだけど客観的に見れば、やはり俺達が普通に付き合っていることにした方が一番合理的なんだ」
「校内を二人で動き回っても、イチャついているだけで事件の捜査をしているとは思われないし、俺も嬉しいし」
麻峰レイ「うむ、最善だったと理解してくれたようだな。それに正直だ。そうすると取れる対策は一つなのだが・・・」
「ああ、注目を浴びる視線に俺も慣れることにするよ」
「レイとこうして一緒に食事を出来るメリットに比べれば、些事ってやつさ!」
  先程レイと対面した時点で決意したことを俺は声に出して告げる。
  彼女のような美少女は多くはないが、探せば世の中にはそれなりにいる。また、面白い変わり者も同じく存在しているだろう。
  だがレイほど可愛らしくて面白い変人はいない。
  目立つことは不本意だが、彼女との関係がただのクラスメイトに戻ってしまうくらいなら、
  その程度のことは受け入れると覚悟を決めたのだ。
麻峰レイ「では、俺が覚悟を決めたようだし、とりあえず食事を片付けよう。昨日の続きはその後だな!」
「了解!」
  お互いの意志を確認し合ったことで、俺とレイは本格的に食事を開始した。

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