数珠繋小話

花石雫

墓埋者からの手紙(脚本)

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〇教室
  ①蠢くもの
ミナ「あれ?リサちゃん・・・どうしたの、その膝の絆創膏」
リサ「聞いてよ~、昨日おじいちゃんのお墓参りいった時に転んじゃったんだよ~」
ミナ「えっ!痛そう~、大丈夫?」
リサ「大丈夫じゃないよ~、まだ結構痛い~・・・じくじくする~・・・」
ミナ「可哀想・・・無理しないでね」
リサ「うん、ありがとう~」
  そんな話をしたのは休み時間。
  だけど、リサちゃんは次の日から熱を出して休んでしまった・・・。
  そして、一週間もたってしまった。

〇玄関内
ミナ「こんにちわ~、プリント持ってきました~」
「あら、ありがとうミナちゃん」
ミナ「リサちゃん、大丈夫ですか?」
「今は少し落ち着いてるわ、良かったら少しあがっていって」
「ずっと家に居て退屈してるだろうから・・・」
ミナ「じゃあ、少しだけお邪魔します」

〇女の子の一人部屋
ミナ「こんにちわ~」
リサ「あ、ミナちゃん!来てくれたの?うれしい!」
ミナ「お熱大丈夫、リサちゃん?」
リサ「うーん、あんまりよくないかな、膝の怪我から化膿したんだろうって言われたけど・・・」
ミナ「痛いっていってたもんね。少しはよくなった?」
リサ「それが、全然でさー・・・」
リサ「消毒もして貰ったけど、傷が中々塞がらないんだよね・・・なんか、ムズムズするし・・・」
ミナ「治りかけてるからじゃなくて?」
リサ「・・・違うんだよ」
ミナ「・・・リサちゃん?」
リサ「皆が悪いんだよ、ご先祖様、皆居るのに、悪口ばっかりいって・・・」
リサ「あまつさえ、アイツらは墓にあんなことを!!!!!」
リサ「だから、私の足が!!!」
リサ「膝が!!」
リサ「こんなになって!!」
ミナ「リ、リサちゃん・・・!どうしちゃったの!?」
リサ「見てよこれ!!皆見えないって言うけど!!ミナちゃんなら見えるでしょう!!?」
  そう言って、ミナちゃんが膝の大きな絆創膏を剥がす。
ミナ「ひっ!!!!?」

〇モヤモヤ
  ミナちゃんの膝の傷口で、小さな小さな何かが蠢いている・・・
  それは、『指』だった。
  何十、何百の小さな小さな指が、傷口にみっちりと生えていて・・・
  それが、無秩序に蠢いていて・・・
  そこから先は──・・・よく覚えていない。
  パニックに陥った私とリサちゃんにただならぬものを感じたのか、両親達にお祓いに連れていかれた。
  その後、リサちゃんの足は無事に治った。
  お母さんには悪い夢を見ただけよって言われたけど・・・
  今も脳裏に、蠢くそれが焼き付いてるー・・・
  あの指がなんだったのか、リサちゃん家のお墓参りで一体なにがあったのかー・・・私は知らない。

〇グラウンドの隅
  ②埋められているもの
カズ「遅いぞミナ!」
ミナ「待ってよカズくん!」
  二人は飼育委員だ。飼育委員は動物に餌をあげたり小屋の掃き掃除をする人気の委員だ。
  朝の授業が始まる前や、放課後などに活動している。
用務員「・・・」
カズ「あれ?用務員さんだ!おはようございまーす!」
用務員「うん?あぁ、おはよう。朝の掃除かな?」
ミナ「はい!どうかしたんですか?」
用務員「あぁ、うん。・・・小鳥がね」
カズ「あっ・・・!」
ミナ「小鳥さん・・・」
ミナ「昨日は元気だったのに・・・」
用務員「たまにあることだからね・・・仕方ないとは言え悲しいね・・・」
用務員「皆と一緒の所に・・・埋めてあげようねぇ・・・」
  体育館倉庫の裏には、小動物達のお墓がある。飼育小屋で亡くなった動物達はそこに埋められる。
ミナ「あの、私も手伝います!」
カズ「俺も!」
用務員「ありがとう、二人とも。安らかに眠れるように、一緒に祈ってあげようね・・・」
  動物達の死は悲しい。
  でも、こうやって用務員さんが弔ってくれるから・・・この子達も少しは救われるのかもしれない。

〇教室
リサ「そっか・・・悲しいね・・・」
ミナ「うん・・・でも、用務員さんと一緒に埋めてあげたんだ」
リサ「用務員さんと!?だ、大丈夫だった?」
ミナ「うん。え、何が?」
リサ「え、ミナちゃん知らないの?あの噂・・・」
ミナ「噂?」
リサ「用務員さんが動物を埋めてるあの場所に・・・」
リサ「実は、人も埋められてるんだって!!」
ミナ「えぇ・・・」
リサ「あっ、信じてない!その他にもあるよ!」
リサ「用務員さんが鶏を絞め殺してたとか・・・」
リサ「動物を埋めすぎて呪われてるとか・・・」
リサ「悪い子もあそこに埋めちゃうとか!!」
ミナ「用務員さん、そんな悪い人じゃないよ・・・?」
リサ「そんなの、わかんないじゃん!!」
リサ「ミナちゃんも気を付けた方がいいよ!」
ミナ「う、うん・・・」

〇グラウンドの隅
カズ「そんなことあるわけねーじゃん!リサの奴適当だなぁ!」
ミナ「だよねぇ・・・」
  放課後、小屋の掃除をしながらそんな話をしていた。
カズ「飼育委員になれなかったから意地悪いってるだけだろ、きにしちゃダメだぞ?」
ミナ「うん・・・」
カズ「お、噂をすれば用務員さんだ!」
用務員「・・・」
ミナ「どこ行くのかな?」
カズ「動物達の墓じゃないのか?ほら手に花をー・・・」
カズ「・・・」
ミナ「カズくん?」
カズ「え?あぁ、いや~・・・」
カズ(見間違いだよな?今、手に持ってたの・・・猫に見えた・・・)
カズ(でも、猫なんて学校で飼ってないし・・・)
ミナ「カズくん?大丈夫?」
カズ「お、おう!怖くなんかないぞ!」
ミナ「え?」
カズ「そ、そうだ!噂を確かめてやろうぜ!」
カズ「そんで、用務員さんは怖くなんかないって証明するんだ!!」
ミナ「あっ、ちょっと~!」
カズ(そうだ、あんな噂が本当な訳ない!)
カズ(俺が、用務員さんの無実を証明するんだ!)
カズ「ようむいんさー・・・」
カズ「・・・え?」

〇モヤモヤ
  そこに居たのは、用務員さんだった。
  でも、様子がおかしい・・・
用務員「・・・ぼ・・・」
用務員「ぼぼぼぼぼぼぼ」
カズ「ひっ!!?」
  用務員さんの口から、鼻から、何かが生えている・・・
  顔の下で、何かがぼこぼこと蠢いている・・・それは・・・
  鳥で、猫で、ウサギでー・・・
  色々な、動物の顔の形をしていて・・・

〇グラウンドの隅
ミナ「カズくん、カズくん・・・!」
カズ「ううん・・・あれ?おれ・・・」
用務員「おぉ、気付いたみたいだね・・・」
カズ「わぁ!!?って、あれ?」
用務員「うん?」
カズ「・・・普通だ・・・」
ミナ「カズくん?」
カズ「あ、えーっと、俺、どうして・・・?」
用務員「そこの木の根っこに引っ掛かって転んだんだよ・・・意識が飛んでたから念のため保健室にいこうね」
カズ「あ、は、はい・・・」
ミナ「ビックリしたよ・・・いきなり倒れるんだもん・・・」
カズ「ご、ごめん・・・」
  じゃあ、さっき見たのは夢だったのかな・・・?
カズ「チラッ」
用務員「・・・大丈夫かい?」
カズ「・・・はい」
  リサが変な話したせいだ!
  おれは、必死に自分にそう言い聞かせることにしたー・・・
  用務員さんが・・・そんなに怖い訳がない・・・
  ・・・はずだ。

〇教室の外
  ③タイムカプセル
「はーい皆、これからタイムカプセルを埋めまーす!」
「はぁーい!」
「タイムカプセルは、皆が二十歳になったら先生が掘り出して送ります、楽しみにしててくださいねー!」
「はぁーい!」
  学校の大きなくすの木の近くには、毎年タイムカプセルが埋められる。
  そして、毎年二十歳を迎える子達の埋めたものが掘り起こされる。
  長年この学校で用務員をやってきた私は誰よりも子供達の旅立ちを見守ってきた。
  校長よりも長い勤務年数・・・いつの間にかこういう時に頼られるようになった。
「用務員さん、今年の掘り出す場所はここら辺であってますか?」
用務員「あぁ、そうだねぇ。もう少し右の辺りだね、ほら、そこの木の根が目印だったんだ」
「ここら辺ですね・・・」
  毎年埋めた辺りの目印をノートに記している。それを頼りに地面をほってもらう。
  ザクッ・・・ザクッ・・・
用務員「木の根が邪魔してないといいけどねぇ・・・」

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コメント

  • 舞台はアパートから学校へ、そして内容もモヤモヤ感からゾクゾク感へ、前回も今回も好きです!
    何気に恐ろしく感じたのは、憑かれたと思しきリサちゃんと用務員さんが、他の小話で何ともなく自然に登場しているシーンです、、、

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