聖夜のプレゼント

hisagi

クリスマスプレゼント(脚本)

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〇おしゃれな教室
  12月17日(金)
  今日も、慣れ親しんだ塾の個別ブースで彼を待つ。
  褒められる為に宿題は完璧にこなし、沢山話す為に質問まで考えてきた。
  身嗜みもトイレの鏡で確認したし、今日のリップは友人からも可愛いと言われた。
  気負って彼を待つが、未だ来ない。
  なんだかソワソワしてしまう。
市之瀬 久輝「はい、こんにちは」
明里 美弥 「先生、こんにちは」
  心臓が跳ねる。
  傍に居るだけで、緊張して上手く話せなくなる。
市之瀬 久輝「元気そうだね」
明里 美弥 「そんなことないですよ」
明里 美弥 「受験勉強大変ですし、癒されたいです」
市之瀬 久輝「その様子なら大丈夫」
  先生はいつも通りに私の言葉を受け流して椅子に座る。
明里 美弥 「先生、次回のことですけど、先生が担当ですよね?他の人じゃ無いですよね?」
市之瀬 久輝「どうしてそんなこと聞くの?」
明里 美弥 「だって、来週、クリスマスイブだし、恋人いたら休むかもしれないし」
市之瀬 久輝「誰に聞いたの?」
明里 美弥 「他の先生イブは休むって言ってたし」
市之瀬 久輝「まぁ、そういう奴もいるけど」
明里 美弥 「先生は、休みませんよね?」
明里 美弥 「恋人、いないもんね?」
  期待を込めて卑怯な尋ね方をする。
市之瀬 久輝「さぁ、どうだろうね」
  笑って取り合おうとしない先生の様子は私を子供扱いするようで、年の差を思い知らされる。
明里 美弥 「先生、誤魔化さないで下さい」
市之瀬 久輝「そういえば、ペンケース、そんなキーホルダー付けてたっけ?」
明里 美弥 「このキャラクター最近はまってて、可愛いですよね」
市之瀬 久輝「ふーん」
明里 美弥 「興味なさげ。もっと、私に興味持って下さいよ」
市之瀬 久輝「明里さんの成績には興味を持ってるよ」
明里 美弥 「そういう、ことじゃなくて――」
市之瀬 久輝「じゃあ、始めようか」
明里 美弥 「はーい!!」

〇おしゃれな教室
  12月24日(金)
  雪が降るなんてロマンチックなクリスマスイブになるわけでは無く、からりと乾燥している上、外は曇天模様だった。
  今日は先生にプレゼントがある。
  手作りのクッキーを作ってきた。
  特定の先生にあげるなんて言ったら迷惑になるから、校舎の先生達に向ける位の配慮は私にだって出来る。
  だけど、時間ギリギリになっても先生はブースに来ない。
  いつもだったら、日常会話を交わすくらいの時間はある。
  もしや、本当に恋人なんかがいて急遽他の先生に代理をお願いしたなんて、妄想が頭の中を占める。
  時計の針が授業開始を示す。
  つまりは、先生に恋人がいる可能性が濃くて。
  告白する前に振られた私が居る。
  今すぐ帰りたい。
  この場に居るのが居たたまれなくて、視界もなんだかグルグルとしてきた気がする。
  他の先生達がこちらを見ている気がする。
  嫌な予感がする。
市之瀬 久輝「ごめん、遅れた」
明里 美弥 「先生!!」
市之瀬 久輝「電車の遅延で、待たせた。誰かに繋ぎお願いしたんだけど――」
明里 美弥 「恋人とデートしてすっぽかされたかと思った」
市之瀬 久輝「違うから」
明里 美弥 「ハッピークリスマスです」
市之瀬 久輝「受験生にそんなものないけどね」
明里 美弥 「そう言わないで下さいよ。クッキー作ったんです。皆さんで食べて下さい」
  途端、先生の眉根に皺が寄る。
  単純な計算ミスをした時の表情と同じだ。
明里 美弥 「べっ、勉強はちゃんとしてますよ。息抜きですよ、息抜き」
市之瀬 久輝「じゃあ、先週の復習からだね」
明里 美弥 「はい」

〇おしゃれな教室
  ・・・・・・
市之瀬 久輝「今日は遅れて悪かったね」
明里 美弥 「電車の所為なら仕方ないです」
市之瀬 久輝「そのお詫びと言っちゃなんだけど、渡すものがあるんだ」
明里 美弥 「クリスマスプレゼントですか?」
市之瀬 久輝「まぁ、そうかな」
明里 美弥 「ほんとですか、なんですか?」
市之瀬 久輝「はい」
明里 美弥 「え?」
  差し出されたのは紙の束。
市之瀬 久輝「解けていなかった単元のプリント」
明里 美弥 「いや、もっと、他になにかありますよね」
市之瀬 久輝「今の明里さんに必要なものだよ」
明里 美弥 「えー、もっと可愛いものとかあるじゃないですか」
市之瀬 久輝「明里さんを考えて作ったんだけどな」
明里 美弥 「それは、分かってますけど」
市之瀬 久輝「そうでしょ」
  鞄からペットボトルを取り出しキャップを外して先生は一口飲み込んだ。
  口の部分に私の好きなキャラクターのおまけのキーホルダーが吊されている。
  飲料メーカーとコラボしたという情報を今更ながら思い出す。
市之瀬 久輝「先生は、これいらないから、ここに捨てとこう。誰が持っていっても仕方が無いよな」
  外したキーホルダーは机の上に置かれた。
明里 美弥 「・・・・・・大事にするから」
  手を伸ばしてキーホルダーを握りしめる。
  この優しさは期待しても良いのだろうか。
  希望に満ちた春を迎える為、私は一層気を引き締める。
  無事合格したら、告白するからどうか待っていて欲しい。

コメント

  • 塾の先生への片思い(両想いっぽいけど…),とてもピュアで青春を感じました!無事に合格し,そして告白も上手くいってほしいです!

  • 主人公の思いが実るといいなぁと思いながら読み終えました。
    今は大人の余裕で受け流されてますが、無事合格して告白した時には、先生どんな顔をするんだろう?と思いました。

  • あとがきを読んでなるほど…と思いました。主人公さんが今すぐ告白するんじゃなくて、合格したら告白するって決意しているところが素敵です。

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