読切(脚本)
〇明るいリビング
息子「お母さん サンタさんに手紙書きたいんだ」
今年もこの季節がやって来た。
私は息子の夢を壊さないように、にっこりと笑う。
お母さん「じゃあ、お母さんが手紙を書いて、サンタさんに送っておくわ。何がほしいのか教えて」
息子「ううん、今年は自分で書きたいんだ」
今までは息子に代わって私が書いてきた(ふりをしていた)のだが。
そろそろ自分で書きたいという年齢だ。仕方ない。
私は封筒と便箋を渡した。
息子はにこにことしながら、便箋にサンタさん宛ての手紙を書く。
しばらくしてから息子はこちらにやって来た。
息子「書けたから、サンタさんの住所教えて!」
お母さん「お母さんが後で書いて出しておくわ」
息子「ううん。今すぐこの場で書いて。そしたら僕がポストに出して来るから」
お母さん(・・・こやつ、天使の顔して悪魔みたいなことを・・・)
私はなんとかして誤魔化そうと頑張った。
お母さん「サンタさんの住所、ちゃんと確認してからじゃないといけないのよね」
息子「はい、スマホ」
私が子供の頃はこんな情報社会じゃなかったら、母にサンタさんの住所を聞いても煙に巻かれてしまっていたというのに!
その手段が使えない、今の便利すぎる世の中がにくい!
だが、情報社会とは素晴らしい。サンタさんの住所が本当に載っていた。
私は筆記体で住所を書いた。アルファベットは読めても、筆記体はまだ読めないだろう。
お母さん「国際便だから、郵便局に直接出すことにするわ。だからこの手紙はお母さんが預かるわね」
そう言って私は手紙を回収する。
息子は残念そうな顔をしていたけど、仕方ない。でないとお母さん、あなたが何をほしがっているのかわからないもんね。
お母さん(そういえばこの子、毎年この時期、サンタさんに会いたいからって夜中起きている練習していたわね・・・)
お母さん(今までは眠った時点で、プレゼントをこっそり置いていたけれど、そろそろ見付かってもおかしくないわ。今年はどうしようか・・・)
〇クリスマス仕様のリビング
クリスマス当日
ピンポーン、と自宅のインターホンが鳴る。
お母さん「サンタさんも忙しいからね、少し大きくなった子たちには、今年は宅配便でプレゼントを送ることにしたんだって」
そう言って私は宅配できたプレゼントを渡した。
大手のショッピングサイトのクリスマスプレゼント仕様であるため、もちろん送り主はサンタさんからだし、ボロは出していない。
息子「そうなんだ! サンタさんありがとう!」
息子は信じて、プレゼントの新しいグローブを嬉しそうに眺めていた。
よし、今年もなんとか乗り切った、と思った瞬間。
息子「サンタさんにお礼の手紙を書きたいな」
息子「きっと忙しいだろうから、今度はメールで出せたらいいなあ。友達は手紙の代わりにメールを出したんだって」
お母さん(嘘でしょ!乗り切ったと思ったのに!)
スマホを取りに行くふりをして、私はリビングを出た。
〇部屋の前
私は大急ぎでフリーのメールアドレスを取得し、それっぽいアドレスを作成した。
そして何食わぬ顔でリビングに戻る。
〇クリスマス仕様のリビング
お母さん「このアドレスがサンタさんのアドレスなんだって」
息子にたった今作成したアドレスを教えた。
息子「わかった。ありがとう!」
その後、そのアドレスに息子からのお礼のメールが届いた。
嘘を重ねていくのは心苦しかったが、こうして私は今年もなんとか息子の夢を守り切った。
〇部屋の前
僕は部屋を出ると舌打ちした。
息子「ちっ、今年もダメだったか」
サンタクロースの正体はお父さんとお母さんだってことぐらい、僕にもわかっている。
そろそろ問い詰めようと思ったのだが、どうせなら直接白状してもらいたいと思っている。
けれど毎年お母さんの方が一枚うわてだ。
息子「次はどんな手を使おうか」
来年こそ、この戦いに勝利をするため、僕はまだもう少しサンタさんを信じている振りをすることにした。
子どもさんが一枚上手だったと…すごくかしこいですね。笑
クリスマスの時期は、何が欲しいのか調べるのが大変そうですね。
今は情報があふれてるから、隠すのも大変だと思います。
情報社会、便利な世の中ではあるけど、なにか私達の想像の世界を減少させている気がしますね。子供の意識が私達の世代(アラフィフ)とは格段ちがう様がおかしくも悲しい!
のっけからお母さんの鋭いツッコミに笑ってしまいました。頭がフル回転していくのが手に取るように分かって、長いモノローグでもスピード感があります。痛いとこばかり突くなあ〜と思ってたら気づかれてたんですね。攻防はしばらくレベルアップの一途を辿りそうですね…。