第4話:貴族の勘に根拠なく、されど事態は好転する(脚本)
〇山中の川
前回のあらすじ。
伝説の剣が光り、バルタッシュは手掛かりを得た。
バルタッシュ(信じてもらえないかもしれないが言うしかない。このままではニラレヴァは帰らないだろう)
バルタッシュ「みんな、ちょっと聞いてくれ!!!」
ティナ「嫌よ。」
バルタッシュ「何でぇ!?」
ティナ「どうせまた泣き言でしょうが」
ティナ「血なまぐさいのは嫌だ~!とか 魔物がいるから先を急ごう~!だとか・・・」
バルタッシュ「血なまぐさいのは嫌だし、先を急ぎたいけども!!!」
バルタッシュ「とりあえず俺の話を聞いてくれ!!」
アレック「どうしたんだい、そんなに声を荒らげて・・・」
バルタッシュ「ニラレヴァを襲ったやつの正体が分かったかもしれないんだ!!」
ランパス「それは本当か!? 誰なんだ、そいつは一体!!」
バルタッシュ「えっと・・・1人は大柄なスキンヘッドの悪漢・・・」
バルタッシュ「もう1人は可愛い女の子だった!!!」
ティナ「はんっ!!何を言い出すかと思えば・・・」
ティナ「“だった”って・・・犯人の顔でも見たって言うの?」
ランパス「本当か!?だったらまだそう遠くへは行ってないはずだ!!すぐに案内してくれ!!!」
バルタッシュ「それが・・・ 如何とも説明し難くて・・・」
ランパス「なんでだよ!!! 仲間が攫われてんだぞ!!」
アレック「落ち着くんだランパス!!」
ランパス「はっ!申し訳ありません・・・!!」
アレック「バルタッシュ君。 君をイタズラに責めるつもりはない。だが・・・」
アレック「せめて君の情報がデタラメではないと証明する事は出来ないだろうか・・・?」
バルタッシュ「多分・・・それは出来ない・・・」
ランパス「なんで!!!???」
アレック「ランパス!!!」
ランパス「さーせん!!!!」
バルタッシュ「それは・・・」
バルタッシュ((・・・どう説明すればいいのだろう))
→剣が光って幻が・・・
→俺って天才だから(説得)
→これでどうだ?(3000ゴールド)
→貴族様に逆らうのか(威圧)
バルタッシュ((・・・いや・・・ここは・・・))
バルタッシュ「・・・カンです。」
アレック「・・・なんだと?」
バルタッシュ「俺のカンは結構当たるんです」
バルタッシュ「長年の経験や生まれ持った能力ではないけど・・・」
バルタッシュ「なぜかそんな気がするんです!!!!!!」
アレック「・・・」
ティナ「・・・」
ランパス「・・・ふざけんなよ」
ランパス「そんな適当な理由で隊の今後の方針を決められるか!!!」
アレック「ランパス・・・」
アレック「次はないぞ~?」
ランパス「・・・(ゾッ)」
バルタッシュ「隊長さん。」
アレック「・・・バルタッシュ君。」
アレック「私は、根拠のない正真正銘のカンというものは、正直ほとんど信じていない。」
アレック「私の使うカンと言うのは、さっき君が言ったような長年の経験則に基づいた予測判断能力の事だ」
アレック「ニラレヴァ君の魔物の臭いを嗅ぎ分けるという能力は、私を含む隊の誰もが持たない特殊なものだし・・・」
アレック「まして見たことがない光景を見たかのように感じる人間など、聞いたこともない。」
バルタッシュ「で・・・ですよね~」
バルタッシュ((ムリかな~やっぱ・・・))
アレック「・・・仮に今の話がデタラメでないとしても・・・」
アレック「それは勘というより、もはや魔術の類だろう?」
ランパス「魔術・・・?(小声)」
バルタッシュ「・・・」
アレック「伝説的な話になるが、世界には他者の心の声や記憶を覗き見ることが出来る魔術師がいると聞く・・・」
ランパス「そんな奴が・・・(小声)」
ランパス「でもコイツはただの貴族のボンボンでしょう・・・?(小声)」
アレック「・・・」
バルタッシュ「・・・俺の祖父は伝説の勇者の末裔と聞いていますが、一応は一般的な貴族家系です」
バルタッシュ「その祖父のことについても、俺が幼い頃に嵐で行方不明になったので真相は分かりませんが・・・」
アレック「ふむ・・・ 勇者の家系、か・・・」
アレック「何から何までデタラメのようだが・・・」
バルタッシュ((自分でもそう思う・・・))
バルタッシュ((伝説の剣が今になって力を見せた理由もよく分からないし・・・))
バルタッシュ((・・・いや))
バルタッシュ((もうここまで来たら、いっそ剣のことも話してしまうべきか・・・?))
バルタッシュ((うん、そうしよ))
バルタッシュ((少なくとも俺のカンってことにするよりは説得力あるよな))
バルタッシュ((もしそれで剣が押収されたとしても・・・))
バルタッシュ((それで一人の仲間の命が救えるなら俺は後悔はない))
バルタッシュ「あの・・・」
アレック「と言うことは、君は魔術師の才能を持っているのかも知れないな」
バルタッシュ「えっ」
ランパス「隊長・・・?(小声)」
アレック「私は根拠のないカンを信じることは出来ないが、魔術の素養という話なら百歩譲って信用できないこともない。」
バルタッシュ「・・・」
バルタッシュ((マジ?))
バルタッシュ「それじゃぁ・・・」
アレック「何より絶妙に具体的なのがその証拠だ。 ・・・大柄なスキンヘッドの悪漢に、可愛い女の子・・・って」
アレック「まるで本当にその場にいたかのような臨場感じゃないか?」
アレック「100%デタラメなら、ここまで適当な事は言えないはずだ。そうだろう?」
バルタッシュ「信じて・・・くれるんすか?」
アレック「確証がない以上は信じるとは言えないが・・・」
アレック「どれだけの経験則に基づいても信じられないことが世の中には山ほどあるのも事実だ」
アレック「私の小さな価値観で、もっと小さな可能性の種を潰してしまう事を恐れただけだよ」
バルタッシュ「かっけぇ・・・」
アレック「まぁ現状ほとんどお手上げに近い状態だっただろ?だから藁にも縋りたい気持ちもあったのさ。」
アレック「ニラレヴァ君はこんなご時世にわざわざウチに来てくれるような大事な子だからね」
アレック「しっかりとして正義感を持ったまま仕事に従事して貰い、退役後は必ず平和な生活に送り返すと誓っているんだ」
バルタッシュ「マジで泣けてきた・・・」
バルタッシュ「もうこの人が主人公でいいや・・・」
ランパス「馬鹿野郎!! 隊長はいつだって俺達の主人公だよ!!!!!」
アレック「ランパス。」
ランパス「あっ・・・(察し)」
アレック「今どきそんな事を言ってるのは君だけだぞ?」
ランパス「えっ・・・(怒られない?)」
アレック「みな誰しも自分という物語の主人公だ。 君は君という名を高らかに掲げて自分の物語を生きていくんだぞ?」
アレック「君がハッピーエンドに向かう物語上でなら私はどんなモブでも構わない」
ランパス「隊長ォォォォ!!!!!!!!!!!」
アレック「ではこれよりニラレヴァ奪還のための情報整理を行う!!!」
「イェッサー!!!!!!!!!!!!」
〇山中の川
─15分後
アレック「・・・ではバルタッシュ君から得られた情報(根拠はないが)を改めて整理しよう」
アレック「まず敵は3名・・・大柄な悪漢と・・・」
アレック「信じがたいが、魔族と思われる可憐な少女・・・」
アレック「そしてその魔族の道具と化した安いチンピラ」
バルタッシュ「(うなずく)」
アレック「この内特に警戒すべきは、言うまでもなく魔族の少女だろう」
アレック「ニラレヴァを一瞬で昏倒させる程の魔力・・・事実ならば脅威という他ない」
アレック「・・・が、幸いなことにその魔族の少女はその後姿を消し、先に帰還した模様だ。」
ティナ「この場で転移魔法を使って直接、ね・・・」
アレック「大柄な方の悪漢は、ニラレヴァを連れ去ったまま恐らくアベルヘンの方角へ・・・」
アレック「どうやら“旦那”と呼ばれる人物と会うために向かったらしい。」
バルタッシュ「(うなずく)」
アレック「具体的な取引内容は不明だが、恐らくは人身売買・・・」
アレック「王国の規律に背く行為。旦那という人物についても調べ上げる必要があるな・・・」
ティナ「奇遇にも私達の目的の方角ね・・・」
ティナ「あまりこんな事言いたくないんだけど、都合がよすぎない?」
バルタッシュ「よすぎる。」
バルタッシュ「だから内心不安。」
アレック「・・・そして最後のチンピラだが・・・」
アレック「少女の遣いとして、お菓子を買わされにアベルヘンへ向かったらしい・・・」
近衛隊員((・・・何でお菓子?))
近衛隊員((おかしくね・・・?))
ティナ「・・・大体なんでそいつの情報なんかが当てに出来るのよ?」
アレック「他に当てがないだけだよティナ君」
アレック「このまま待ってても埒が明かない。 ドラゴンが民衆に危害を加えてからでは遅いからね」
アレック「我々も早々に動かなくてはならないのだよ。 たとえそれがどんなに当てにならない情報でも、当てにするしかない。」
バルタッシュ((あれ?俺って当てにされてる?されてない・・・?))
ティナ「・・・」
ティナ「・・・またこんな事言いたくないんだけど・・・」
ティナ「そのニラレバの子を見捨てるって選択肢は?」
バルタッシュ((そこまで出てるなら名前覚えてやれよ))
アレック「ないな」
ティナ「なんで?」
ティナ「あくまで私達の目的ってドラゴン退治でしょ?」
ティナ「手遅れになるのを恐れるなら隊員一人を優先するのはおかしいと思うんだけど・・・」
ランパス「なんでそんなこと言うんだよお前!」
ティナ「だってそうじゃない?」
ティナ「元はと言えばアンタがニラレバの子を連れ出すからこんなことになったんでしょ?」
ランパス「なんだと!!!!」
アレック「・・・よせ」
ティナ「私が言いたいのは、仮にどうしても救けたいにしても数人の別働隊で良くない?って話よ。」
アレック「確かに君の方が理に適っている。」
アレック「こう見えて今の私は冷静ではない」
アレック「だから彼女を救出する事を最優先に考え、焦ってしまっているようだ」
ティナ「ソイツのバカげた戯言を真に受けちゃうくらいにはね・・・」
バルタッシュ「おい誰が馬鹿だって?」
ランパス「いや、馬鹿とは言われてなかったぞ」
アレック「・・・では君が別働隊を指揮してくれるか?」
ティナ「ふぁ!?何で私が・・・」
アレック「さっきも言った通り私は今冷静ではない」
アレック「もし連中が彼女に酷いことをしていたり、目の前でそれを見せられてしまったら私は・・・」
ティナ「・・・何をするか分からないって?」
アレック「・・・」
ティナ((・・・))
バルタッシュ「隊長そいつに期待しては駄目です。」
ティナ((イラッ))
バルタッシュ「そいつは他人のことをどうとも思わないし、自分のことしか考えられない哀れな奴です。」
ティナ((・・・イライラ))
バルタッシュ「寧ろ期待に添えないので逆に可哀想です。 絶対に添えないのが分かってるので俺まで申し訳なく思います。」
ティナ「良い気になるなよオギャ雑魚野郎!!!!!」
ティナ「あんな娘の一人や二人、私一人で救ったるわーー!!!!!!」
アレック「え、一人?それはさすがに・・・」
バルタッシュ「やらせましょう!!!!」
アレック「あ、いや・・・」
バルタッシュ「ティナがその気ならもうどうしようもありません!!!!」
バルタッシュ「信じて任せましょう。俺たちは足手まといになるだけです!!」
アレック「・・・(煽るの上手いなぁ~)」
アレック「まぁ取り敢えずアベルヘンへ向かおう!!」
アレック「その後、状況に応じて別働隊を編成し、目的を達成させる!!!」
アレック「皆の者!!!後に続け!!!!」
「うおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
〇古い洋館
それから少し後──
場所は、アベルヘン外れにある屋敷の廃墟──
ニラレヴァ(うぅーん...ここは...)
ニラレヴァ(はっ・・・!!まさか...気を失ってしまっていたのですか...!?)
ニラレヴァ(私としたことが・・・何という失態を・・・)
チンピラ漢「よう、よく寝てたじゃねぇか」
ニラレヴァ「・・・そうですか・・・ ・・・そうでしたね・・・」
ニラレヴァ「私は貴方をもう一度斬らねばいけないのでした・・・」
ニラレヴァ「今度は首を・・・根元から・・・」
チンピラ漢「おいおいおい・・・えらく威勢がいいじゃねぇか」
チンピラ漢「いや、虚勢か・・・フフフ・・・ まぁ目覚めてすぐこの状況ならそれも仕方ねぇ・・・」
ニラレヴァ(外見に対してやや上品な笑い方が気持ち悪い)
ニラレヴァ(それにしてもこの縄・・・下手に身体を動かすと食い込んで痛い)
チンピラ漢「おっと気付いたか?そいつは特注品の縄だ。」
チンピラ漢「旦那の私物でな。”魔道具”って代物らしいぜ」
ニラレヴァ「魔族に次いで今度は魔道具ですか・・・ つくづくオカルト好きな連中ですね・・・」
チンピラ漢「フン、俺も詳しい事は知らねぇよ・・・ ただお高いって事と下手に動くと逆に危ねぇって事だけ理解してりゃいい」
ニラレヴァ(・・・日が落ちかけている事から察するに、あれから2時間ほど経ってそうですが・・・)
ニラレヴァ(隊長方は無事でしょうか・・・)
ニラレヴァ(あの魔族・・・あんなのとマトモにやり合えば流石のアレック隊長でも・・・)
ニラレヴァ(・・・申し訳ありません隊長。どうか私の事などお気になさらず。願わくは任務の成功を祈っております・・・)
チンピラ漢「しかし旦那のやつ遅ぇな・・・」
チンピラ漢「待ち合わせの場所はここで合ってるハズなんだが・・・」
その時、建物の裏から小さな人影が近付いてきた。
旦那「ヒヒッ・・・! これはこれは、お待たせしましたね・・・ ザックバランのドリューさん。」
ドリュー「遅せぇぞ旦那。約束の金は持ってきたんだろうな?」
旦那「えぇ、えぇ。もちろん。 あなた様方には良くして貰っていますからねぇ・・・」
旦那「それにしても驚きましたよ。 今回の娘は近衛隊士ですか。 貴方も随分と働けるようになりましたねぇ・・・」
旦那「かつては単純馬鹿だった貴方も、ようやく人間程度の知恵を絞れるようになって来たようで・・・感心感心!」
ドリュー「俺は順当に出世したいんだよ。 この闇の社会でな・・・」
ドリュー「肝心な時に使えないヤツは誰からも舐められたまま一生を終える」
ドリュー「そうならねぇ為に必要な手段は、何でも身に付けてきた。 アンタとの関係だってその一つに過ぎないって事を忘れんな。」
旦那「ンッフッフ・・・!いいんですよォ・・・アナタのような人が一番よく働いてくれますからねェ・・・」
ドリュー「チッ・・・上機嫌な連中ってのはいつも御託が多くて嫌になるぜ。 ・・・さっさと金置いて持ってけ。」
旦那「えぇ・・・もちろん・・・ ですがこの鎧は要りませんねぇ・・・素材も平凡だし重たいだけですよ・・・」
旦那「ドリューさんアナタ適当に換金してしまいなさい。 私が用があるのは中身だけですからねぇ・・・エッヒッヒッヒ!!!」
ドリュー「キメぇな・・・とっとと済ませてくれ。 こっちは忙しいんだ!!!」
〇古い洋館
旦那「おやまぁ・・・身軽になりましたねぇ・・・」
ニラレヴァ(・・・どうやらここまでのようですね)
ニラレヴァ(・・・思えば波乱の人生でした・・・)
ニラレヴァ(辺境の農家に生まれ、領主の取り立てに堪えるだけの貧乏な暮らしに始まり・・・)
ニラレヴァ(12の頃に両親への恩を返すため、反対を押し切ってハーディルへ上京したものの、慣れない都会生活に苦労したっけ・・・)
ニラレヴァ(給与の多い近衛隊士を志すもそう上手くは行かず・・・ライバル達に抜かれながらも必死で訓練にしがみついた3年間・・・)
ニラレヴァ(数いる一般隊士の中で隊長殿に見出して頂き、憧れの近衛に入隊出来た時の感動は、一生忘れないのでしょうね)
ニラレヴァ「・・・」
ニラレヴァ(そんな皆様を・・・私は騙して・・・)
ニラレヴァ(・・・やだ、涙が──)
ニラレヴァ(全部、これからだったのに・・・)
旦那「それにしても隊士さん、アナタも中々変わり者ですよねぇ・・・ その若さで、それも女の身で騎士を志すとは・・・」
旦那「中々理想が高いというか、意識が高いというか・・・ 私が若い頃はそういう連中もそれなりにいましたけどねぇ・・・?」
ニラレヴァ((・・・貴方に私の何が分かるものですか))
旦那「うんうん、分かりますよ・・・本当は楽に生きたいですよねぇ。 でもそれを許してくれる環境に恵まれなかったのでしょう・・・」
旦那「アナタもご苦労されたでしょう? でもご心配なく。私の所に来れば、命を賭さずとも楽に生きていけますよ・・・」
旦那「最初は少~し、苦痛を伴うかも知れませんが・・・なぁ~に最初だけですよ!!ヒヒヒッ!!!!」
ニラレヴァ「──いつまで喋っているのですか。」
旦那「おっと、これは失礼・・・いやはや歳をとるといけませんね・・・ ではドリューさんお支払いの方を済ませてしまいましょうか」
ドリュー「忘れてたのかと思ったぜ旦那」
ドリュー「ヘッ・・・確かに。」
旦那「では行きましょうか、近衛のお嬢さん・・・いえ・・・」
旦那「私の新しい・・・ コ・ネ・コ・さ・ん──♡」
ニラレヴァ(さようなら・・・隊長──)
ニラレヴァ(お慕い申し上げておりました──)
ドリュー(やれやれ・・・たまにはシェラーのヤツにチョコでも買ってってやるか・・・)
ドリュー(ん・・・?何か妙に焦げくせぇ臭いがしやがる・・・)
ドリュー「!!!! 旦那!!!伏せろ!!!!」
ニラレヴァ「ゲホッゲホッ・・・!!」
ニラレヴァ((旦那様が灰に・・・!!!))
ドリュー((クソッ・・・何が起こった!?))
謎の青年「・・・」
ドリュー「なんだテメェは!!!」
ニラレヴァ((あの装束、確かアーディア王国の斥候部隊!?なぜこんなところに・・・))
ドリュー「テメェ・・・大事な商売の邪魔しやがって!!許さねぇ!!!!」
謎の青年「・・・商売?」
謎の青年「犯行現場にしか見えなかったけど・・・」
ドリュー「そうとも言うがなぁ!!!!」
謎の青年「おっと危ない、当たるところだった」
ドリュー((と言いつつもしっかりかわしやがる!!))
ニラレヴァ((今の身のこなしは間違いなく斥候のエリートの動き・・・))
ニラレヴァ((全く状況が分からなくなって来ました・・・))
謎の青年「じゃあ今度はそっちが避ける番・・・」
ニラレヴァ((えっちょっ危な・・・!?こっちにまで斬撃飛んで!?))
ニラレヴァ「あれ・・・痛くない・・・?」
ドリューとニラレヴァ。二人に向かったはずの青年の斬撃は、ドリューの体だけを見事に斬り裂いていた──
ドリュー「クッ・・・ソッ!! あと少しで大金が手に入ったってのに・・・!!」
ドリュー「テメェら・・・覚えていやがれ──!!」
謎の青年「ありゃ、逃げたか。 タフなヤツだなぁ・・・」
謎の青年「ていうか今の閃光煙幕催涙弾か。 野良犬の武器にしては高級品だな・・・」
謎の青年「お嬢さん大丈夫?怪我してない?」
ニラレヴァ「え、えぇ・・・何とか・・・」
謎の青年「それはよかった。 ・・・お嬢さんは、心根が澄んでいるんだね。」
ニラレヴァ「・・・え?」
謎の青年「僕の勧善懲悪式忍術は純粋な心の人間を絶対に傷付けないんだ。」
謎の青年「さっきの爆発でも隣のオッサンは灰と化したのにキミは無傷だったろ」
ニラレヴァ「は・・・はぁ・・・」
ニラレヴァ(アーディアとグランディールの関係は決して悪くないとはいえ、下手に関係を持つのも考えものですよね・・・)
ニラレヴァ「あの・・・助けていただき感謝します。 ただその・・・ついでに縄を解いていただけるとありがたいのですが・・・」
謎の青年「縄・・・?」
謎の青年「そんなもん、とっくに解けてるけど?」
ニラレヴァ「えっ・・・? あ・・・」
ニラレヴァが少し腕に力を加えると、縄はまるで藁のように解けて落ちた。
ニラレヴァ(これは・・・まさかさっきの斬撃で同時に・・・!?)
ニラレヴァ(この人は一体・・・)
謎の青年「・・・」
ニラレヴァ(仮に本当にアーディアの斥候なら、多分現在は任務活動中のはず・・・)
ニラレヴァ(一体アベルヘンで何を・・・)
謎の青年「これキミの鎧だろ?奴ら置いていったよ」
ニラレヴァ「あ・・・重ね重ね感謝いたします」
謎の青年「・・・別にいいよ。仕事のついでだし。」
謎の青年「それに・・・」
ニラレヴァ「・・・?」
謎の青年「キミは可愛いから・・・」
ニラレヴァ「あ、やっぱり・・・ですよね・・・」
ニラレヴァ(じゃなくて!!え、どゆこと・・・?)
謎の青年「・・・」
謎の青年「そういえばさっき、町の入口の方で君の友達を見たよ」
ニラレヴァ「・・・友達ですか?」
謎の青年「うん、同じような格好だったから。 多分友達。」
ニラレヴァ(・・・あ、隊長と皆さん・・・)
ニラレヴァ(無事町に到着したのですね。私も早く合流しなくては・・・)
謎の青年「じゃあね──」
ニラレヴァ「あ──」
ニラレヴァ(・・・素早い方・・・)
ニラレヴァ「私も早く向かわなくては!!」
〇城門沿い
同時刻より少し前──
アベルヘン門前
アベルヘンの兵士「皆々様、遥かなる長旅ご苦労さまです。 ようこそ、武闘と舞踊の町アベルヘンへ!」
ティナ「よ、ようやく着いたわ・・・」
バルタッシュ((森を出た辺りから生きてた記憶がない・・・))
バルタッシュ「過労、恐るべし・・・」
アレック「お勤めご苦労様です。 王国近衛隊長のアレックです。」
アレック「此度の騒ぎの元凶となりましたドラゴン討伐の任につきまして、此方の部隊へ協力を要請をしたくやって参りました」
アベルヘンの兵士「アレック隊長殿、お話は伺っております。 まずは首都ハーディルからはるばるの遠征、ご足労様でした。」
アベルヘンの兵士「町長様に確認を取って参りますので、お疲れのところ大変申し訳ありませんが今しばらく此方でお待ち下さい。」
アレック「ふぅ・・・」
ランパス「道中ではドラゴンに遭遇する事はありませんでしたね」
アレック「ここに来るまでにヤツと交戦する可能性も少なくなかったからな・・・」
アレック「後はニラレヴァさえ奪還出来れば、晴れて本来の任に専念できるのだが・・・」
ランパス「とりあえず待ってる時間も惜しいですし・・・部隊を分けて俺達で先に探しに行きましょうか」
アレック「まぁ、そうしてくれると助かるが・・・君らも限界だろう?」
ランパス「なぁに!!俺はまだまだ動けますよ!!」
ランパス「そこのソイツと一緒に、ちょっくら見てきますね!!」
↑ソイツ。
アレック「では残りの者たちも、各員二人一組となってニラレヴァの捜索に向かって貰えるか? 済まないが、時間が惜しい。」
アレック「その間、私はドラゴン対策の件で町長殿と話をつける。」
「了解です!!!!!!」
アレック「ただし!!無理に少人数で救出しようとはするな!! 敵の数や状況を把握した後、全員で救出に当たる!!いいな!?」
「了解です!!!!!!」
アレック「ティナ君・・・さっきは意地悪な事を言って済まなかった。 今回は私と一緒に、町長との話し合いに同行してくれないかな?」
ティナ「べ・・・別に私はどっちでもいいけど・・・」
バルタッシュ((チッ・・・相変わらずいいご身分だな・・・ティナのやつ・・・))
ランパス「ほら!!早く行くぞ!!!!」
バルタッシュ「わぁかったよ!!!! 今行くっつってんだろ!!!!」
バルタッシュ((すまんなアレグ・・・俺は死ぬかもしれん・・・))
アレック「よし、では行動開始!!!!!!」
アレックの号令で散り散りとなる兵士達。
その光景を、物陰で不敵に眺めている者がいた──
謎の男「・・・」
謎の男「フゥン・・・あれが王国近衛隊ねぇ・・・」
謎の男「流石にいい足取りじゃないの・・・」
謎の男「これはちょっくら骨が折れるかも知れねぇなぁ・・・」
果たして男の正体とは──
ニラレヴァとは合流できるのか?
そしてドラゴンは今どこに?
続く──