読切(脚本)
〇可愛らしい部屋
雨が降ろうが槍が降ろうが、
地は固まることを知らず。
ただただ、足元がぬかるんで、
私は冬と1つになるのです。
冷たい冷たい無慈悲な雨は、
例えそれがクリスマスイブであろうと、勝負の日であろうと、私の心を溶かすのです。
冬の雨は、あまりにも冷たいものですから
私はそれを"愛"と名付ける事にいたしました。
暖かな愛が包み込めば、冷凍庫の切り身は空を泳ぎ、生ゴミ達は畑の肉となるのです。
雨「今日も寒いねぇ。 でも、雨が降るといつもよりは寒くなくなってる?かも?」
雨「嫌だよねぇせっかく二人っきりのクリスマスイブなのに」
汚れた街のコンクリートを
雨はどのように思っているのでしょうか。
汚れを広げているのか、はたまた汚れを落としているのか。
街のコンクリート達がシャワーだシャワーだと騒ぐので、私はカーテンを閉めようとしました。
雨達がこちらを見て猫のように鳴くものですから、私は思わず鏡を見ました。
雨「え〜!?ニキビできてるぅ! せっかくのクリスマスイブなのにぃ・・・・・・」
雨「どうしよう・・・・・・前髪で隠せないかなぁ・・・」
雨「ダメだぁ・・・・・・前髪決まらない・・・・・・・・・ マジぴぇん・・・」
汚れを広げているのは、雨ではなくお前の方だと、そう偽物の制服が訴えてくるので
私は作り笑顔を浮かべました。
雨「えぇ?ラフな私も好き? もぉ〜。嬉しい♡」
雨「ホントは一緒にイルミネーション見たかったけど、今年は家で過ごそっか」
イルミネーションと呼ばれる電球の塊に群がるハエ達が羨ましくて憎らしくて
私は蝶になりました
雨「えーっと・・・・・・映えるためには・・・」
発泡スチロールの擦れる音は
オーケストラミュージックとなって
異様な電子音と混ざりあって溶けました
雨「推しぴに囲まれてクリスマスケーキ・・・♡ 幸せぇ♡」
ケーキの上のサンタクロースが、明日の82時に天誅をと言ったので
雨「それじゃあ、私と推しぴのクリスマスに〜?」
それの首の間にフォークを入れ
脆いそれは飾りともならず、電池残量の赤となりました。
雨が心を打付ける度に、私はあなたを憎むのです
憎しみの籠ったこの愛を、
人は運命と呼ぶのでしょう。
写真の中では二人っきり。愛する人と二人っきり。
愛する人とクリスマスイブを過ごしたというその事実が、アイロンとなる
皺だらけの心が伸ばされて、撃たれて、バレエを踊る
推しぴ「君なんて奴は知らない」
好きぴ「君なんて奴が俺と並べると」
推しぴ「可哀想に」
好きぴ「可哀想に」
暖房の熱で溶けた生クリームを
六足歩行のクリスマスへ分け与えた
雨「____あぁ、幸せ♡」
彼女のセリフと地の描写との対比がおもしろかったです。
文学的な文章いいですね。
推しぴの塩対応がちょっと寂しかったです。笑
確かに大事な日に限って髪型がうまく決まらなかったり、ニキビができたり…ありますよね笑
ぴえんとは言いませんが、ついついイライラしてしまいます。
特に雨による湿気…、イライラしてるときに雨からこんなこと言われたら…ムキーっ!となりそうです笑
題名からは想像できない文学的な文章で、素晴らしかったです。現代語が、ところどころに散りばめられてるのもなんだか面白かったです。