クリスマスが終わらない

三雲ユウリ

読切(脚本)

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〇シックな玄関
  12月24日、夜
冬野彩「真昼ちゃん、今年もありがとう」
真昼「いえいえ、こちらこそ! おばさんの料理美味かったです!」
冬野彩「やっだ、上手ね。聖夜も少しは見習ってくれたらいいのに」
聖夜「俺は、その。いや、でも、いつもありがとう、母さん」
冬野彩「あら?聖夜にしては珍しいわねー!これも真昼ちゃんのおかげかしら」
冬野彩「昔は、ちょっと不思議であんまりわからない子だったけど」
聖夜「・・・」
真昼「あっおばさんすみません!そろそろ門限なので」
冬野彩「そうだったわね!ごめんね、引き止めて」
冬野彩「ほら聖夜、送ってあげなさい。近いとはいえ、もう暗いし」
聖夜「分かってるよ」
冬野彩「また来てね、真昼ちゃん。引っ越しはまだもう少し先でしょう?」
真昼「はい!今日は本当にありがとうございました」

〇住宅街の公園
  冬野聖夜はサンタである。
幼い聖夜「み、みないで!」
幼い聖夜「違うんだ、これはその!」
幼い真昼「なぁに、そのぬいぐるみ?かわいい!」
幼い真昼「動くぬいぐるみとか飴とか、面白いね!」
幼い真昼「サンタさんみたい!」
  春山真昼がそう言ったから。
幼い聖夜「気持ち悪く・・・ないの?」
幼い聖夜「普通じゃなくて、よくわからないのに」
幼い真昼「べつに?それより、せっかくクリスマスなんだから、一緒に遊ぼうよ!」
  冬野聖夜は、クリスマスの間、普通じゃない。
  24日と25日の合計48時間。その二日間は特別だった。
  その期間、冬野聖夜は紛れもなく異常で
  二人のサンタだった。

〇住宅街の公園
真昼「聖夜の家とか、私の家で遊ぶのも楽しいけど、やっぱりここが一番気楽だなぁ」
  お互いの家に遊びにいった帰りに、公園に寄るのはお決まりのようになっていた。
真昼「空中に浮いててもびっくりされないし」
  二人は公園の端で喋っていた。二人ともなぜかふよふよと空中に浮きながら。
聖夜「真昼、それ好きだよね。毎年やってない?」
真昼「そりゃ、こんなことクリスマスじゃなきゃできないもん」
真昼「最初は怖かったけどね」
聖夜「昔はあまり力が制御できてなかったから・・・」
真昼「クリスマスでドキドキして、なんか色々出しまくってたもんね?」
聖夜「今はちゃんと出来てるから!忘れて!」
真昼「えぇー、どうしよっかなぁ」
真昼「でも、どうせこの事誰にも言わないし言ってないからいいでしょ?」
  『サンタ』の力は二人だけの秘密だった。普通であって欲しいと聖夜の両親が願ったから。
聖夜「・・・引越しても?」
真昼「うん。もちろん」
真昼「なぁに?不安なの?安心してよ、約束は守るから」
聖夜「そういうことじゃ、なくて」
聖夜「引っ越したら、そもそもこっちのこと忘れちゃうんじゃないかって」
聖夜「おじさんの転勤先、東京だから・・・」
真昼「そーんなことないと思うけどなぁ」
真昼「LIMEあるし。新幹線使えばわりとすぐ帰ってこれるしね」
聖夜「そうだけど・・・」
真昼「ねっ次はもふもふ羊出してよ。聖夜好きだったでしょ?」
聖夜「・・・うん」

〇女性の部屋
  12月25日、夜
  毎年、24日は冬野家で、25日は春山家で子供たちを交互に預ける。
  家が近く、家族付き合いをしている両家は、自然とクリスマスをそう過ごすようになっていた。
真昼(で、さっき聖夜を見送ってきたわけだけど)
真昼(やっぱり最近ぎこちない気がする。引っ越すって言うの遅かったかなあ)
真昼「うーん・・・」
真昼「寝よう!」
  真昼は物事を深く考えない性質だった。
  そして彼女は眠り・・・

〇女性の部屋
  スマホの通知音
真昼「んー?今日は日曜だし昼まで爆睡タイムなんだけど」
真昼「はぁーい・・・」
聖夜「真昼!どうしよう、大変で、日付が!」
真昼「んんー・・・日付?それってどういう」
  スマホの画面をスワイプすると、左上に日付と曜日がでてくる。
真昼「12月・・・25日?」
  それは昨日の日付だった。

〇住宅街の公園
  2回目の25日
真昼「土曜日が2回も来るなんて最高よね!ゲームしちゃう?」
聖夜「えぇ」
  3回目の25日
真昼「空とか飛んじゃう?夜だからバレないと思うんだけど」
聖夜「い、いいけど」
  10数回めの──
聖夜「──」
聖夜「真昼・・・どうして責めないの?」
聖夜「同じ日を繰り返すなんてあり得ない。これは、俺のせいだ」
真昼「まぁ、だろうとは思ってたけど。でも、聖夜すごく焦ってたし」
真昼「ぎゃーぎゃー言うのもなって。昔みたいに力が暴走してそうだし」
聖夜(そうだ、昔みたいに力が暴走してる。そう思いたい。でも・・・)
真昼「それにこういうのも悪くないかなって思ってたの。ほら私土日好きだから」
真昼「でも、聖夜はずっと辛そうだった」
聖夜「だってこれは・・・力の暴走なんかじゃないから」
聖夜「最初のループは無意識だった。でも、その後は自分でやった」
聖夜「25日が続けば力が使えて、ループができて。真昼が引っ越さないから」
聖夜「真昼は俺と違って明るいから、引っ越したら俺なんかよりずっといい友達に出会う。それで、忘れられるんだって」
聖夜「気持ち悪いこと言ってごめん。自分がこんな最低なことをするなんて思ってなかった」
聖夜「何回か前から、止めようと思ってたけど止まらなくて・・・!」
真昼「別にいいよ。気持ち悪いとか思わないし」
聖夜「どうして・・・」
真昼「聖夜は買い被りすぎ。私はわりと適当だし、人間関係そんなに続かないの。うわべだけ」
真昼「でも、聖夜と一緒にいるのは楽しかったんだよね。だから、気持ち悪いとか思わないし、そんな顔させたくない」
真昼「ね。私を信じて。『明日』、一緒に推しチャンネルの新曲でも聞こうよ」
聖夜(俺は真昼に甘えて・・・信頼することさえしてなかったのか)
聖夜「引っ越したらさ。東京に遊びにいっていい?」
真昼「もちろん!」
  日が登り始める。ふと、スマホが光った。画面には26の数字が映っていた。

コメント

  • 離れたくなくて、終わらない日々を過ごすのは、聖夜くんの力もあるでしょうが、真昼ちゃんもそれを望んだのかな?と思いました。
    すごくいい終わり方でよかったです。

  • 聖也くんの力だけなのかな?
    実は真昼ちゃんの意識も干渉してる気もする…。
    お互い引っ越しは本当は寂しくて…。
    告白か?!告白するのか?!と待ち望んでいた自分がいました!

  • 真昼ちゃんのサバサバ明るい性格も好きだし、聖夜くんのさみしがりやな可愛らしい性格にもキュンときた。なんだか男女逆転してるようなイメージだけど、二人が楽しそうでこういう関係もいいなと思った!

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