Hitman of regret(脚本)
〇基地の倉庫
深夜、草木も眠る頃。
廃倉庫の前には二人のマフィアがいた。
左の人物はライフル、もう一人は二丁拳銃の達人で、その実力は所属する組織内でも恐れられる程だった。
そんな二人組の会話というと、これから行われるであろう凄惨な戦いについての打ち合わせ・・・
鷹宮亮(たかみやりょう)「おい、見てくれよ鳫金〜! これ、凄くね!?」
なんてことは全くなく、喜々として会話しているのであった・・・。
鷹宮亮(たかみやりょう)「このストラップ見ろよ! 俺の妹が俺のために作ってくれたんだぜ!?」
鷹宮(たかみや)は満面の笑みでうさぎのストラップを掲げ、これでもかともう一人に見せつける。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「大したもんだな。 確か今妹さんは9歳だったか? 兄想いの良い子じゃないか」
鷹宮亮(たかみやりょう)「そうだろそうだろ! いやー、全く誰に似てあんな良い子に育ったんだろうな〜、自慢の妹だぜ!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・ところで、今ここに何をしに来たのか覚えてるか?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・・・・え?」
鷹宮は不思議そうな顔をして、少し斜め上に目を泳がせてからハッとすると
鷹宮亮(たかみやりょう)「あ!この倉庫で麻薬を密売してるって噂を聞いて、薬を潰しに来たんだよな? それがどうしたんだ?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)(さては一瞬忘れてたなこいつ・・・)
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「いや・・・そうなんだが、これから一戦交えるかもしれないっていうのに緊張感の欠片も無いやつだな・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「大丈夫大丈夫、俺らでかかればどんな依頼だって余裕だって〜! な、相棒?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「まぁ・・・そうかもしれんな」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)(仮にもマフィア内でも実力者なんだよな ・・・こいつ。 頼りにはなるんだが、いまいち調子が狂うな・・・)
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「念の為に一応仕事内容を確認しておくぞ?」
鳫金は携帯を取り出し、依頼内容と書かれたメールを読み上げ始める。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「①麻薬取引を阻止するために麻薬の現物を破壊する。②今後の取引を潰す為に取引名簿を奪う この2つだな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「お、オッケー!全然忘れてないし! まぁ鳫金が覚えてるから大丈夫ってことで・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「頼むぞ、もうこれで教えるのは3回目だ・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「なにはともかく、あまり時間をかけたくない。さっさと行って終わらせよう」
鷹宮亮(たかみやりょう)「了解!さぁ、いっちょ潜入といこうぜ〜!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)(不安だ・・・)
〇ボロい倉庫の中
鷹宮亮(たかみやりょう)「んー、警備員無し・・・っと。 裏口からだとあっさり入れたな。 さては・・・ザルだな!?」
倉庫内は天井のライトによって照らされ、薄暗いが奥まで視ることができる。また、積み荷が所々に置かれている。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「まぁまぁ、薬の取引が行われているという話がある以上人は居るだろう。警戒は怠らずに行くぞ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「ま、それもそうだな!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「よし、早速だが目当ての物を探すとしよう。薄暗いから足元には気をつけろよ?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「おう、ん・・・?ちょっと待て」
鷹宮は遠くを見据えながら、手で鳫金を制止する。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「どうした?変な物でも見つけたのか?変な石とかやめてくれよ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「俺のこと何だと思ってんのさ鳫金サン」
鷹宮亮(たかみやりょう)「ほら見てみ、あそこに人が居る。まだ遠いけどなんか運んでるみたいだから、今なら奇襲できそうだぞ」
鷹宮が指した方に目を向けると、確かに警棒を持って歩くスキンヘッドの男が見える。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「よく見えたな・・・言われないと気づかないところだった」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「それはそうと、奇襲するにしても殺すなよ。俺らの仕事はあくまでも薬探しだ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「へいへい、わかってますよ!どっちにせよ気づかれる前に先手を取らなきゃな」
そう言ったのを皮切りに鷹宮は足音を消して、スキンヘッドの男の背後へと忍び寄っていく。
鷹宮が男の真後ろに立ったかと思うと、思い切り足を溜めて・・・
???「アゥチ!!」
一撃で側頭部を蹴り上げ、男は悲痛な声をあげて泡を吹きながら気絶した。
鷹宮亮(たかみやりょう)「わりぃな、銃使わなかった代わりに痛かったと思うけど許してくれよ〜」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「いい蹴りが入ったな。少しこいつに同情するよ・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「っと、こいつを縛り上げておかないとな」
と言いながら、鳫金は適当なロープを見繕い、男をぐるぐる巻にした。
鷹宮亮(たかみやりょう)「さ〜てと・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「ここにいるって事は密売人の仲間ってこったな? だったら物を漁っても文句はねぇよな!」
そう言いながら嬉々として鷹宮が男のポケットを漁ると、何かを発見した様子で顔をあげる。
金属製の鍵にはラベルが付いており、ラベルには「事務室」と書いてある。
鷹宮亮(たかみやりょう)「事務所の鍵だってよ!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・事務室か。 事務室なら取引の証拠が見つかるかもしれない」
鷹宮亮(たかみやりょう)「よっしゃ、それならさっそく行こうぜ! ほら、お誂え向きにすぐそこがそうみたいだしよ?」
鷹宮が指を指した方向を見るとそこには
覗き窓がある金属製のドアがあり、ドアには事務室と書かれたプレートがかけられている。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ふむ、さっきの男はここを警護してたのか・・・?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「となると何かありそうだな、いよいよ本命かぁ?」
鳫金は慣れた動きでドア付近まで近寄ると、ドアに耳をすます。
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・中からの音はねぇか?」
鳫金は首を横に振ると、親指を立てて合図を出した。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「大丈夫だ、中から音はしない」
事務所の鍵を使うとガチャリとドアノブが回り、重い音をたてて扉が開いた。
〇怪しい部屋
事務室は電気が消えており、空気は淀んで埃っぽくなっている。
家具も最低限の机と棚くらいでとても簡素だ。
鷹宮亮(たかみやりょう)「うぇ〜、俺空気淀んでるの苦手なんだよな。さっさと調べて出ようぜここ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「同感だ、俺は取引資料を探すから鷹宮は薬を探してくれ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「おう!」
鷹宮亮(たかみやりょう)「って言ってもここにある瓶全部そうじゃないのか?」
鷹宮が手に取った瓶には黒々とした粉末のような物が入っており、アンモニアのような臭気がする。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「──それはアヘンだ。 この量が出回ったら不味いところだったな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「そだな、薬の密売人嫌いのお頭に密売人処理に行かされるのは御免だぜ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「それもそうだが、あいつらは子供にだろうと喜んで売る外道だからな。裏の事は裏で処理するもんさ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「つまり、俺らのおかげで世の子供達は道を踏み外さなくていいってこったな!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「せめてもの罪滅ぼしってやつだな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「まぁなにはともかく!」
鷹宮亮(たかみやりょう)「早速薬は破壊するってことで、片っ端から瓶を叩き壊して回るとするかぁ!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「まぁ待て」
鷹宮亮(たかみやりょう)「え、壊しちゃダメ?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「壊したいのは山々だが、それだと薬自体が無くならないからな。面倒だが持ち帰って焼却処分にするぞ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「そ、そうか・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「そんな露骨に残念そうな顔しないでくれよ、俺もできればここで処分したいんだ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「うーん、まぁそれならしゃあないな。 じゃあ袋に詰めて帰るかぁ」
鷹宮は気だるそうに袋を取り出し、薬の瓶を袋に入れていく
しかし、その手は瓶を3、4個を袋に入れたところでピタリと止まった。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ん? どうした、なんで手を止める?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・これ、アヘンじゃないぜ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「匂いが違う、多分これは炭だ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・炭だと? まさか袋に入れた瓶以外は全部そうなのか?」
そう言いながら鳫金は瓶を確認していき、
「残りは全てフェイク」だと気づき、愕然とした。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・わざわざなんでこんな真似を?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「その様子だと残りは偽物なんだな。 これはつまり?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・「嵌められた」ってことだな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「つまり?・・・依頼自体が罠だったってオチか?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「いやー、道理で侵入しやすかったわけだな」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「仕組まれてたと考えるべきか。 ふむ・・・厄介なことになった。 とりあえず応援を呼ばないと・・・」
鳫金はポケットから携帯を取り出してどこかへと連絡を取ろうとしていたが、少ししてから眉間を歪ませて首を横に振った。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・連絡も外部に取れん。 いよいよ袋の鼠か」
鷹宮亮(たかみやりょう)「かーなり準備されてんなこれは。 まぁ、前にもこんなことあったけどさ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「ま、うだうだ言っても仕方ねぇさ ならやることは一つしかねぇな?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「そうだな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「窮鼠猫を噛むってのを見せつけてやろうぜ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「あぁ、こうなったらやむを得ん。 可能な限り無力化を狙うが・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「殺ることも念頭にいれないといけないな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・先に言っとくけど、俺は自分の身しか守んねぇからな? 不覚は取らないでくれよな」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「あぁ、伊達にこの家業はやってないさ、そう簡単にはやられんはずだ。 それに・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「それに?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)(妹の為に手を汚すお前と違って、俺は誰のためでなく人を殺している。 いつ死んだって文句は言えないさ・・・)
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「いいや、なんでもない。 俺もお前を守れるかはわからん、気は抜くんじゃないぞ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「おう、任せとけ!」
「・・・・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「それじゃあ、行くぞ? 準備はいいな?」
鷹宮が声を掛けると二人は銃を構え、足音を押し殺してドアへと近づいていく。
そして、鷹宮はドアに近づくと索敵の為に覗き窓を覗こうと身を近づけた。
──その瞬間。
──鋭い凶弾が鷹宮の顔先を掠めた。
〇ボロい倉庫の中
鷹宮亮(たかみやりょう)「いくぞ・・・せーの!」
鷹宮と鳫金は掛け声と同時に事務所から外へ飛び出し、遮蔽物の裏へと隠れた。
身を隠したその数秒後には銃弾の雨が降り注ぎ、ドア付近には無数の穴が空いた。
鷹宮亮(たかみやりょう)「ッ・・・クソあぶねぇな! 当たったら痛いじゃすまねぇんだからな!」
鷹宮は吠えながら周囲を見回すと、二階部分に2〜30人程の男達が銃を持って待ち構えて居るのが見えた。
鷹宮亮(たかみやりょう)「チッ・・・ 20〜30ってとこか」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「そうか、ずいぶんと手厚い歓迎だな」
多勢に無勢。
普通に考えれば2人対30人の戦いなど勝機があるはずもない。
鷹宮の体に冷たい汗が伝う。
「俺はここで死ぬのではないか」
という恐ろしい考えがよぎる。
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・鳫金はよく冷静でいられるよな 怖くはないのか?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・あぁ、もちろん怖いさ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「けどビビって戦えばそれだけ死にやすくもなる。それにあいつらが油断してる今がチャンスだ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「それに、俺らはもう何度も死線を超えてきたじゃないか」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「それもそうだな。 俺としたことが思ったより沢山いるもんで、少しナーバスになってたみたいだ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「よし、俺らの実力を見せつけてやろうぜ!なぁ相棒!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「いつからお前は俺の相棒になったんだ」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・まぁ、頼りにしてるぞ」
???「なぁにをコソコソ話してやがる!」
中々顔を出さないことに痺れを切らしたのか赤髪の男は怒号を発し、なおも言い続ける
???「今までお前らが散々密売の邪魔してくれて商売上がったりだったんだ」
???「お礼に沢山鉛玉をくれてやるからよ、さっさと顔出せや」
???「怖くて顔が出せねぇってんなら、出したくなるようにプレゼントしてやるよ!」
赤髪がそう言い放つと、何かが遮蔽物付近に投げ込まれて転がるような音が聞こえてくる。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)(・・・グレネードか。 ここにいれば当たるな)
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「回避に合わせて反撃に出ようか。 プランは”手抜き”で頼む」
鷹宮亮(たかみやりょう)「了解」
鳫金の合図と共に左右に分かれて遮蔽物から飛び出し、次の遮蔽物へ向かって二人は駆け出した。
???「ようやく顔を出したな馬鹿め! あいつらを蜂の巣にしろ!」
赤髪は喜々として射撃命令を下したが、その刹那──
???「ガッ!?」
???「ヌアッ!!」
一瞬にして男達の銃の持ち手は撃ち抜かれ、痛みに耐えかねた二人は銃を落とした
見れば鷹宮はスナイパーライフル、鳫金は二丁拳銃を持ち、走りながら正確に手を撃ち抜いていたようだった。
???「・・・なん、だと!? 移動しながら撃ってきたのか!?」
???「ひ、怯むな!たかが二人だ! 撃て、撃て、撃ち殺せぇ!!!」
予想だにしなかった反撃に赤髪達の間には動揺が広がっていき、射撃をするまでにモタつきが生じる
そんな明らかな隙を彼らが見逃す筈もなかった。
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・6ヒット」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「こっちは5だ」
たちまち周囲の音は、撃たれた悲鳴の声と銃を落とした音で満たされた。
彼らにとって数瞬もあれば、構えを取るだけで棒立ちしている人間の”手だけ”を撃ち抜くことなど造作もないことだった。
???「嘘だ・・・たった二人を処分するだけの簡単な小遣い稼ぎだったはずなのに」
???「こんな強いなんて聞いてねぇよ・・・」
赤髪はあまりの事に気が動転したのか一人でうわ言を言っており、残された男達は恐怖して我先にと逃げ始めた
???「クソクソクソ!アイツが、アイツが俺を唆かしたりなんてしなきゃよぉ!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ほう?誰が差金か教えて貰おうか?」
???「ヒィッ!? いつの間に!?」
気がつけば隣にいた鳫金に驚き、持っていたリボルバーの銃口を鳫金に向けて引き金に手をかけようとした
鷹宮亮(たかみやりょう)「あぶねぇ!」
鷹宮が咄嗟に撃った一発は、殺し屋としての本能だったのか、見事に頭を撃ち抜いた。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・すまん、不用意に近づくべきじゃなかった。依頼以外で殺させてしまったな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・良いってことよ。 俺の目が黒いうちはお前を殺させやしないぜ、だからもう謝んな」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・そうか、ありがとうな」
鷹宮亮(たかみやりょう)「それにしてもこいつで終わりか?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「パッと見は・・・もう居ねぇな」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「そう・・・か。 やっと終わったのか、辛い一日だった」
鷹宮亮(たかみやりょう)「そうだな、今日は旨い物でも食べてもう そのままベットにダイブしたいぜ・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ならさっきの詫びになるかわからないが、奢るから晩でも食べに行かないか?」
鷹宮亮(たかみやりょう)「お!いいねぇ! 普段行けないとびきり高そうで美味そうなレストラン見つけたからそこで頼むわ!」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「フフフ、仕方ないなぁ。 じゃあそこに行こうか」
鷹宮亮(たかみやりょう)「おーし!そうと決まればさっさと帰るぞ!」
鷹宮亮(たかみやりょう)「ってかそういえば妹がさ〜 今度・・・」
そんな他愛のない会話をしながら、二人は来た道を帰っていく
ガサ・・・
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・?」
微かな音に気がつき、後ろを見た鷹宮
そこで見たのは、確かに頭を撃ち抜かれて死んだ筈の赤髪が、リボルバーを鳫金に向けて撃とうとしている姿があった
鷹宮亮(たかみやりょう)「ッ!? 間に合わねぇ!!」
異変に気がついて鳫金も振り返ったが
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「しまっ・・・!!」
発砲に気がつくも、もはや手遅れだった。あたり一面に血飛沫が飛び散り、床一面には血が広がっていく。
ーーしかし、そこで倒れたのは鳫金ではなく、鳫金を庇った鷹宮だった。
〇ボロい倉庫の中
赤髪は撃ったきり動かなくなり、その場には鷹宮の苦しそうな声だけが響く。
静かに失われていく命、胸に風穴が空いた彼が助からないことは鳫金から見ても明らかだった。
鳫金は鷹宮の近くにまで駆け寄ると、膝から崩れ落ち、嗚咽で言葉を詰まらせながら語りかけた
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ど・・・どうして。なんで、俺を庇ったりなんてしたんだ!?」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「おい、やめてくれよ? 死ぬなよ、俺を置いて逝くな。 頼むよ・・・!」
鳫金は撃たれた箇所を必死に抑えながら、懇願するように呟く。
鷹宮は血を吐きながら、なんとか笑顔を浮かべて
鷹宮亮(たかみやりょう)「なんでかなぁ、体が勝手に動くってやつだろうなぁ・・・」
鷹宮亮(たかみやりょう)「へへ・・・ダチを守れて 後悔はしてねぇよ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・それよりもよぉ、鳫金? お前は殺し屋だってのに・・むやみに人を殺さなかったよな」
鷹宮は鳫金の目を見据え、少し迷ったような顔をしてから、また笑顔になって語りかける。
鷹宮亮(たかみやりょう)「鳫金にはさ・・・俺みたいに人殺しだけの人生じゃなくてさ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「困ってる人を救う・・・ そんなヒーローみたいな存在になって欲しいと思うんだ」
鷹宮亮(たかみやりょう)「俺の最後のワガママ・・・ 聞いてくんねぇかな?」
鳫金は声を詰まらせて泣きながら、ただ鷹宮の顔を覗き込んでは頷いている。
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・ハハッ 俺にそんな辛そうな顔してくれるのか」
鷹宮亮(たかみやりょう)「・・・今までありがとうな」
段々と鷹宮の目から生気が抜けて、目が虚ろになっていく。
言葉で表すまでもなく”その時”が近づいてきているのだ。
鷹宮は震える手で、鳫金へと何かを差し出した。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「・・・?」
見てみると、鷹宮が妹から貰ったといううさぎのストラップだった。
鷹宮亮(たかみやりょう)「辛くなったら・・・それを見てくれ きっと俺は上から見守ってるからよ」
鷹宮はそう言い終えると
気力を振り絞って手を鳫金の顔へと伸ばし
鷹宮亮(たかみやりょう)「じゃあ・・・な、相棒」
鷹宮亮(たかみやりょう)「せめて、最期くらい、笑って見送ってくれよな・・・」
血で濡れた手で鳫金の口角を押し上げてから、満足そうに目を閉じた。
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「鷹宮は俺にとって・・・ 立派なヒーローだったよ・・・」
鳫金龍一(がんかねりゅういち)「ッ・・・うぅ・・・ うぁぁぁ・・・ッ・・・!!」
鳫金は膝から崩れ落ち、敵地に居ることも忘れてひたすらに泣いた──
目から出る涙が枯れるまで、泣き叫んで声が枯れるまで、悔しさで握り込んだ手から血が滴るまで・・・泣き続けた。
〇黒
ーーこうして、深い絶望の一日は幕を閉じた
それから間もなくして
鳫金はマフィアと殺し屋の仕事を辞めた。
「衝撃!颯爽と誘拐犯を撃退する男!」
「本日未明、身寄りのない孤児達が暮らす施設宛に大金が振り込まれた模様で‥」
「本日、路地裏で気絶していた男達が薬物所持の疑いで逮捕されました。容疑者は二丁拳銃に襲われたと証言していますが‥」
後日、これらのニュースを
正体不明の人物が起こした
として取り上げられることがあったが
その真相は、未だ誰も知らない。
〜FIN〜
緊迫感漂う空気と、派手な大立ち回り、そして2人のキャラクターと友情、魅力いっぱいのお話ですね!物語の背景も窺えて楽しいです!
極限状態の現場で芽生える厚くて熱い男同士の友情が読者の胸にもヒットしました。終始クールなスタンスを崩さない殺し屋鳫金の男泣きが切なかった。