第1話 誰か金貸して!(脚本)
〇昔ながらの一軒家
高校卒業式の夜
真中真「食ってクソして寝る!」
真中真「親父はそんな人生楽しいのかよ!」
〇寂れた一室
真中真「何が倹約だ! ただのドケチなだけじゃねえか!」
真中真「俺は親父みたいな生き方 絶対に嫌だ!」
真中真「東京へ行ってビッグになる!」
真中真「金をバンバン遣って人生を楽しむんだ!」
真中一朗「・・・」
真中真「チッ」
真中真「何も言わねえのかよ」
真中真「じゃあな親父」
真中真「つぎここに帰ってくるときはリムジンだから」
真中一朗「みずきちゃん」
真中真「あ? みずきって誰だよ?」
真中真「どうしてこんな姿に?」
真中真「な、何だよその顔は」
一朗がキスをしようと迫ってくる
真中真「ちょ、何してんだよ」
真中真「どうしてだ?」
真中真「か、身体が動かない・・・」
その間にも一朗の顔がドンドン迫ってくる
真中真「や、やめろ親父」
〇東京全景
4年後の東京
真中真「やめろーーー!!」
〇電車の中
真中真「ゆ、夢か・・・」
赤ちゃん「オンギャーー!」
真中真「うるせー!」
母親「す、すみません」
母親「大きな声にビックリしちゃって・・・」
真中真「赤ん坊連れて電車に乗るんじゃねぇ!」
母親「はぁ?」
母親「元はと言えばあなたが大きな声を出すからいけないんでしょうが!」
母親「せっかく寝ていたのに!」
真中真「・・・すみません」
〇パチンコ店
ギャンブル仲間「アハハハ」
真中真「そんなに笑わないでよ」
ギャンブル仲間「だって面白いんだもん」
ギャンブル仲間「でもさ、男はみんなマザコンだって言うけどファザコンもいるんだね」
ギャンブル仲間「初めて知ったよ」
真中真「違うって 俺、親父のこと大嫌いだし」
ギャンブル仲間「正夢かも」
真中真「はい?」
ギャンブル仲間「本当にお父さんとチューしちゃうのかも」
真中真「ないない」
真中真「大谷翔平が来年日本に復帰するくらいにないから」
ギャンブル仲間「大谷翔平って誰?」
真中真「・・・知らない?」
ギャンブル仲間「知らなーい」
真中真「てか 絶対にないし」
ギャンブル仲間「分かんないよー」
ギャンブル仲間「だってマイク・タイソンもジェームス・ダグラスに負けたし」
ギャンブル仲間「世の中なにがあるかわからないって」
真中真「ダグラス・・・」
真中真「本当は大谷翔平を知ってるでしょ?」
ギャンブル仲間「実はコウジも知ってる」
真中真「上原浩治ね」
ギャンブル仲間「違う」
ギャンブル仲間「太田幸司」
真中真「太田・・・」
真中真「朱美ちゃん 歳いくつだっけ?」
ギャンブル仲間「二十歳だけど どうして?」
真中真「いや スポーツが好きなんだなぁって」
ギャンブル仲間「お父さんの影響 私も真中くんと同じファザコンだから」
真中真「だから違うってば・・・」
ギャンブル仲間「あ!」
真中真「どうしたの?」
ギャンブル仲間「キタっ!」
ギャンブル仲間「大当たりだ!」
真中真「・・・」
〇川に架かる橋
真中真(俺の親父はケチだ)
真中真(それも尋常じゃないほどの・・・)
〇昔ながらの一軒家
11年前
〇寂れた一室
真中瞳「お父さん」
真中瞳「お昼に担任の先生から「修学旅行のお金がまだ振り込まれてません」って電話があったんだけど?」
真中一朗「そんなものに行っても金が勿体ないだけだ」
真中瞳「でも、一生の思い出にもなることだし」
真中瞳「ほら、マコちゃんも自分の気持ちをはっきりとお父さんに伝えなさい」
真中真「・・・」
真中瞳「マコちゃん、頑張れー」
真中真「み、宮島にある厳島神社の大鳥居が見たいです!」
真中瞳「偉い!」
真中瞳「11歳でこんなしっかりしたこと言えるのは、世界広しといえどマコちゃんだけだね」
真中瞳「ねえ、お父さん マコちゃんもこう言ってることだし」
真中一朗「・・・わかった」
真中瞳「ね? 言ったでしょ? お父さんは、ちゃんと分かってくれるって」
真中真「うん! ありがとう お父さん!」
〇学校の校舎
修学旅行 当日
〇白い校舎
担任教師「よーし 全員揃ったな」
大野拓海「先生!」
担任教師「どうした?」
大野拓海「真がまだ来てません」
担任教師「真中は修学旅行に行かないんだ」
大野拓海「え?」
大野拓海「どうしてですか?」
担任教師「・・・まあ、家庭の事情というやつだ」
担任教師「よし! 出発するぞー みんなバスに乗れー」
大野拓海(あいつ厳島神社の大鳥居が見られるって喜んでたのに・・・)
〇怪しい部屋
真中真「シクシク・・・」
そのとき真は一朗がレンタルしてきた「日本の世界遺産」というDVDをみせられていた
真中真「・・・あ、大鳥居」
真中真「大きいなぁ・・・」
〇川に架かる橋
真中真(息子の修学旅行代ですらケチる親父)
真中真(俺はあんな奴を1ミリたりとも好きになったことなんてない)
真中真(てか どうして俺は夢で女だったんだろうか?)
前田「おい 真中」
真中真「あ、前田さん」
前田「「あ、前田さん」じゃねーよ」
前田「お前、いつになったら金返すんだよ」
真中真「も、もう少し待って下さい」
前田「いや もう待てない」
真中真「仏の前田さんじゃないですか だから今まで待ってくれてたじゃないですか」
前田「お前、きょう競馬で大勝ちしたんだろ?」
真中真「・・・どうしてそれを?」
前田「それでパチンコで負けたんだよな?」
真中真「・・・もしかして跡つけてました?」
前田「俺はそんなに暇じゃねえんだよ」
前田「このファザコン野郎!」
真中真(・・・やっぱりつけて来てたんじゃねえか)
前田「もしお前が10円の金でもいいから返してくれてたら、俺は待ってやってたよ」
真中真「10円?」
前田「金を返すって言うのは金額じゃない 誠意の問題なんだよ」
真中真「じゃ、じゃあ今、いま払いますから」
真中真「確か財布に・・・」
真中真「あ、あった!」
財布を逆さに振ると、こぼれ落ちた硬貨が前田の前に転がる
しかしそれは5円玉だった
真中真「・・・」
前田「御縁がありますように ってか?」
真中真「できれば切る方向で・・・」
前田「わかった」
真中真「え!?」
前田「お前との縁に免じて1ヶ月まってやる」
真中真「マジっすか!」
前田「その代り1000万、耳揃えて持ってこい」
真中真「・・・」
真中真「今なんて?」
前田「1000万だよ、1000万」
真中真「確か俺が借りてる金って100万でしたよね?」
前田「利息だよ、利息 1ヶ月も待ってやるんだから当然だろ?」
真中真「そ、そんなぁ・・・」
前田「もし1日でも遅れたらどうなるか分かってるよな」
真中真「・・・殺されるんですか?」
前田「いや 行方不明になるだけだよ」
前田「永遠にな」
真中真「で、でも、そんなことしたら警察が──」
前田「これ お前にやるよ」
前田は1冊の本を真に差し出す
それは「闇金ウシジマくん」のコミックスだった
前田「もし飛んだらどうなるかってことをこれ読んで勉強しとけ」
真中真「・・・」
前田「ほんじゃあ 1ヶ月後な」
真中真「マ、マジかよ・・・」
膝から崩れ落ちる真
???「大丈夫ですか?」
通行人「何かあったんですか?」
真中真「ちょっと仏罰くらっちゃって」
通行人「仏罰? よかったら相談にのりますけど」
真中真「じゃあ1000万貸して!」
〇中規模マンション
真中真「・・・はぁ」
〇マンションの共用廊下
真中真(全部話したのに金貸してくれなかった・・・)
真中真(1000万かぁ・・・どうやったらそんな大金が手に入るんだよ)
真中真「はぁ・・・」
真中真(あれ? いないかな?)
真中真(てか、どうしてドアの前にボストンバッグが?)
真中真「おーい」
真中真「美幸ちゃーん」
真中真「いないの?」
美幸「何?」
真中真「お、いるじゃん」
美幸「だから何?」
真中真「いや、鍵忘れちゃってさ」
真中真「開けて欲しいんだけど?」
美幸「何で?」
真中真「何でって ここ俺んちじゃん」
美幸「家賃払ってるの私なんだけど?」
真中真「俺も払ったじゃん」
美幸「いつ?」
真中真「ほら、先月」
美幸「8ヶ月前 それも400円」
真中真「しっかり覚えてるじゃん」
真中真「それじゃあ 開けて貰えるかな?」
美幸「それ見えない?」
真中真「これ? 読む?」
真中真「ウシジマ君のコミックなんだけど 今の俺にはリアル過ぎて なんか死にたくなるんだよね」
美幸「ちげーよ!」
美幸「バッグだよ バッグ!」
真中真「どっか旅行にでも行くの?」
美幸「てめーが行くんだよ」
真中真「どこ行こっか?」
美幸「てめーがひとりで行くんだよ」
真中真「やだよ」
真中真「だってほら? 俺って寂しがり屋さんじゃん?」
美幸「知らねえよ」
美幸「てか駅前の公園に行ったら お友達が一杯いるから気にすんな」
美幸「それじゃあ精々頑張れよ」
真中真「わかった!」
真中真「わかったから 最後に金貸してくんない?」
美幸「幾ら?」
真中真「1000万!」
美幸「死ね!」
真中真「じゃあ、何か食う物だけでも!」
〇公園のベンチ
真中真(・・・イジーモードだった人生がいきなりナイトメアモードになってしまった)
???「おい!」
ホームレス「俺の場所で勝手に寝てんじゃねえよ」
真中真「あ、すみません」
ホームレス「チッ」
真が立ち上がったとき
ホームレスの腹の虫が鳴る
真中真「カノジョ・・・いや、元カノから貰ったスイカ食べます?」
〇東京全景
〇公園のベンチ
真中真「1000万貸してくれない?」
友人A「無理!」
真中真「・・・切られた」
真中真「次はこいつに」
真中真「あ、俺だけど一瞬だけでいいから金貸してくれない?」
友人B「お前に貸すくらいなら政治家に献金するわ」
真中真「あ、ちょ・・・」
真中真「また、切られた・・・」
真中真「・・・はぁ 誰も貸してくんねぇ」
真中真「誰でも良いから1000万貸して!」
前田「俺に借りてどうするよ?」
真中真「あ、前田さん」
前田「「あ、前田さん」じゃねぇよ」
真中真「すみません」
前田「その感じだと無理そうだな」
真中真「・・・」
前田「仕事紹介してやろうか?」
真中真「でも・・・俺、働きたくないんで」
前田「すがすがしいほどのクズだな」
真中真「ありがとうございます」
前田「誉めてねえよ」
真中真「あ・・・はい・・・」
前田「まあ、安心しろ お前は寝てるだけでいい仕事だから」
真中真「マジっすか!」
前田「俺が1度でも嘘を付いたことあるか?」
真中真「是非、やらせて下さい!」
真中真「それでどんな仕事ですか?」
前田「初めは痛いがすぐに慣れる」
真中真「痛いってどのくらいです?」
前田「そこはあんまり気にすんな 今は良いローションがあるから」
真中真「・・・」
前田「安心しろ 俺も足繁く通ってやっから」
真中真「い、いやぁ・・・」
前田「じゃあ 明日そこに迎えに行くから」
真中真「そこって前田さん俺が何処にいるか知らないでしょ?」
前田「知ってるよ」
真中真「え?」
〇東京全景
真中真「イヤーーー!!」
幼い時からの父親への嫌悪感からこういう堕落した生活を送るようになったのか、なんか複雑な感じですね。前田さんはいい人なのか悪い人なのか、それによって真の運命も変わるようなきがしました。
なかなかのクズぶりで、これからどんな風に彼が成長していくのかが楽しみです。
まあ、1000万ってポイと出せる金額じゃないですよね。笑
セリフ回しがとても上手で面白く、ずっと笑ってました!金貸しがウシジマ君貸すの最高ですね!今後が楽しみです!