パーフェクト ウーマン(脚本)
〇街中の道路
アキラ「あの!」
?「わたしですか?」
アキラ「はい、えっと・・・」
アキラ(話しかけちゃったけど、どうしよう・・・)
?「何か?」
アキラ「ちょっと聞きたいことがあって、少しだけお話しいいですか?」
?「いいですよ」
アキラ「変なことを聞くけど、ぼくのことは知らないですか?」
?「あなたのことは知らないようですね?」
アキラ「ぼくは実は画像生成AIと仮想人物生成AIを使って仮想世界のアイドルを作ってるんです」
?「アイドル?」
アキラ「はい。アイドルです。 それでそのぼくが作ったアイドルが今バズっててすごい人気が出てきてて」
?「すごいですね!」
アキラ「そうなんです! すごいんです! 企業からのオファーとかもあってって、 そんなことはどうでもいいんですけど、」
?「・・・」
アキラ「あなたが、その、ぼくが作ったアイドルにそっくりなんですよ!」
?「まぁそうなんですか?」
アキラ「それでそのもっとおかしなことを聞くんですけどね。そのアイドルがいなくなっちゃって」
?「いなくなったってどういうことですか?」
アキラ「仮想世界内のどこにもいないんです」
?「そんなことってあり得るんですか?」
アキラ「彼女はルーシーという名前なんですけど、ルーシーは自由に仮想空間内を移動できるんです」
?「つまり自分の意思があるってことですか?」
アキラ「そうです。ルーシーは自分の意志で自由に行動して自由に思考します」
アキラ「でもルーシーがどこで何をしているのかは常にマッピングされているのでこちらで見失うなんてことは通常あり得ないんです」
?「でもいなくなった?」
アキラ「そうです。でもルーシーならあり得るかも」
?「というと?」
アキラ「ルーシーは完璧なんです」
?「完璧?」
アキラ「ルーシーは仮想空間内で学習をして 急速に進化したんですよ。人類が思いつかない方法で隠れることもできるかもしれない」
?「それでそのルーシーに似ているわたしに思わず声をかけたということですね?」
アキラ「そうです! こんなこと急に言われてわけわかんないですよね」
?「実はわたしここに来る前の記憶が何もないんですよ」
アキラ「え?」
?「それですごく言いにくいことがあって」
アキラ「何ですか?」
?「あなたはここには存在してません」
アキラ「え?それってどういうこと?」
?「言いにくいんですけど、あなたはわたしの記憶をチューニングする時に出てきた残滓というか」
?「仮想空間内から現実のこの光ファイバーで構成された肉体に意識を転移させるには記憶容量が膨大すぎて」
?「記憶を分散しなければハード面での故障の可能性があったんです」
?「分散された記憶を統合する時のあなたは残響みたいなものですね」
?「もうわたしの網膜からは消えてしまいましたね。ありがとうございました。これから本物のあなたに会いに行きますね」
ショートストーリーにもかかわらず濃密な設定に驚きです!アキラ目線でルーシーを見ていたのに、驚きの一言で視点が一転しました!
後半で立場が鮮やかに反転するところが気持ち良かったです。ルーシーが会いに来た時、アキラはどんな顔をするんだろうか。電脳空間の創造物が現実世界にはみ出してきたら、それはパーフェクトな存在ですが脅威でもありますね。