盗まれた『メリークリスマス』(脚本)
〇豪華な部屋
今日はクリスマス。
子供たちがクリスマスツリーの飾りつけをしている。
子供「・・・」
子供2「・・・」
子供3「・・・」
「え〜ん」
サンタさんの格好をしたアニスとフェンがやってきた。
アニス「どうしたの?」
子供「クリスマスの挨拶が言えなくなったの」
フェン「クリスマスの挨拶って・・・」
フェン「『明けましておめでとう!』」
子供2「違うよー」
フェン「『えー、本日はお日柄もよく・・・』」
子供2「えーん!」
アニス「泣かせてどうするのよ!」
フェン(どっちが・・・)
アニス「・・・」
フェン「・・・」
アニス「そんな・・・ 『・・・』が言えない!」
フェン「フゴフゴ・・・」
アニスとフェンもようやく気づいた。そう『メリークリスマス』が言えなくなったのだ。
フェンは黒猫に姿を変えた。フェンは人間と猫の姿に変化自在なのだ。
猫のフェンが部屋の匂いを嗅いでいる。何かを見つけたようだ。
フェン「にゃぁ」
アニス「これは・・・」
〇中世の街並み
フェンはロザリオに残る匂いを嗅いで持ち主の跡を追った。
〇荒廃した教会
アニスとフェンは廃墟となった教会を外から伺った。
モンスターが一人で笑っている。
カシス「フハハハ!何が『メリークリスマス』だ!」
カシス「そんなものこの世から無くなってしまえ!」
アニスとフェンは恐ろしいモンスターの姿に驚き、いったん出直すことにした。
〇貴族の応接間
優雅に紅茶を飲むベイ。
アニスとフェンはベイにモンスターの話をした。
ベイ「クリスマスなのに僕に働けって?」
ベイ「僕は世界中から『・・・』がなくなっても一向に困らないんだけど・・・」
アニス「子供たちが泣いてるのよ!」
ベイ「あいにく僕は今日からウィンター・ホリディなんだよね」
ベイ「今から伊香保の温泉に行くんだから、また帰ってきてからね」
アニス「それでも正義の味方!?」
ベイ「そんなものになった覚えはないけど・・・」
フェン「『コマル』の最新刊貸してあげるから〜」
アニス「スイーツバイキングの招待券もつけるか〜」
ベイ「ムムム・・・」
〇荒廃した教会
ところが・・・
カシス「うぅ・・・」
カシス「なんてこと・・・あれがないと元の姿に戻れない・・・」
〇神殿の門
ベイとアニスとフェンが外から様子を伺っている。
アニス「どういうこと・・・?」
ベイ(・・・)
フェン「あれがないとって・・・、これか!」
ベイ「どうやら恐ろしい姿は見かけだけのようだね」
ベイはフェンからロザリオを受け取ると、一人で教会の中へ入っていった。
フェン「おい!ベイ!」
〇荒廃した教会
モンスターは人の気配に驚いて、構えた。
ベイは気にせずモンスターに近づいていく。
ベイ「はい、これ君のでしょ」
カシス「!!」
ベイ「おっと、交換条件だよ」
ベイ「盗んだ『・・・』をみんなに返すんだね」
カシス「何のことだ!」
ベイ「あまり、手間をかけさせるんじゃないよ」
ベイが近づこうとするとナイフが飛んできた。
ベイはさっと避けた。
ベイ「・・・君は素直じゃないね」
ベイは大きく息を吸った。
〇荒廃した教会
強い風が起こった。
〇荒廃した教会
カシスに強い衝撃が加わった。
カシス「くそ!」
〇荒廃した教会
火の気が立ち上がった。
ベイ「うわぁ!」
アニスとフェンが駆けつけた。
「ベイ!」
ベイ「・・・なんてね。子供だましだね」
ベイはジャンプしてカシスの前に立つと、カシスのおでこを軽く弾いた。
カシス「うぅ・・・」
ベイはロザリオをモンスターの胸に置いた。
〇荒廃した教会
カシスは女の子の姿になった。
〇荒廃した教会
アニス「・・・インプの子供が化けてたのね」
ベイ「アイテムがないと変身できないのは魔力がまだ未熟ってことだよ」
アニス「だからベイは見抜いたのね」
フェン「おい!『・・・』をみんなに返せよ!」
カシス「まったくロザリオを落とすなんて大失敗だわ・・・」
アニス「でも何で?」
カシス「決まってるでしょ!クリスマスが嫌いだからよ!」
アニス「何で・・・ クリスマスって楽しいでしょ」
アニス「ツリー飾って・・・」
アニス「プレゼント用意して・・・」
アニス「みんなでケーキを食べるの!」
カシス(・・・)
カシス「分かったわよ。返すよ・・・」
ベイ「・・・メリークリスマス」
アニス「あ!戻った」
カシス「じゃあね」
フェン「おい!一緒に来ないか?」
カシス「!?」
フェン「盗んだ『メリークリスマス』をみんなにちゃんと返せよ」
アニス(・・・)
ベイ(・・・)
アニス達はカシスも連れて帰ることにした。
〇中世の街並み
外に出ると雪が振り始めていた・・・
ベイ「今晩は温泉は無理だな・・・」
アニス(・・・)
ベイ「僕もそのパーティーとやらにお邪魔させてもらおうかな・・・」
アニス「・・・いいわよ」
〇豪華な部屋
みんなは子供たちの居る屋敷に戻ってきた。
カシスは子供たちに向かい、照れくさそうに口を開いた。
カシス「・・・メリークリスマス」
子供「メリークリスマス!」
子供2「メリークリスマス!」
子供3「メリークリスマス!」
子供たちに笑顔が戻った。
フェン「良かったな、カシス! メリークリスマス!」
カシス(・・・)
カシス「悪いことしてごめんなさい。私いつもクリスマスを一人で過ごしてたから・・・」
フェン「今年は一人じゃないだろ」
カシス「そうね・・・」
アニス「良かった・・・ ベイ、ありがとう」
フェン「アニス、良かったな!クリスマスにベイと一緒に過ごせて」
アニス「ちょっと・・・何言ってるの」
ベイ「僕から二人にプレゼントだよ」
ベイ「みんなで一緒に観よう!」
(趣味悪い・・・)
アニス(でも・・・いっか)
アニス「メリークリスマス!ベイ、フェン!」
「メリークリスマス!」
話の運び方がすごく良くて、最後はみんな笑顔になるいいお話でした。
言葉が盗まれるって、意外と不便な気がしました。
挨拶が出来ないのと一緒ですよね!
楽しいクリスマスが当たり前だと思っていました。楽しめないクリスマス程,悲しいものはありませんね。メリークリスマスが言えるというのは当たり前のようで当たり前ではないのだと考えさせられる作品でした。
言葉が盗まれてしまうってことだったんですね!
題名で何が盗まれるんだろうって思ってましたが…。
久しくメリークリスマス!って言ってない気がするのはきっと盗まれていたからですかね…笑