修羅場の女

水野 七緒

読切(脚本)

修羅場の女

水野 七緒

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〇新橋駅前
ルリ(ふわぁ・・・眠・・・)
ルリ(・・・うん?)
小太郎「はぁっ!? ふざけんなよ!」
真澄「ごめんなさい」
真澄「こんなはずじゃ なかったのに・・・」
小太郎「知るか! そんなの聞いてねぇ!」
真澄「怒らないで」
小太郎「怒りたくもなるだろ!」
真澄「でも、人は弱い生き物よ?」
真澄「誘惑には どうしても逆らえない・・・」
小太郎「・・・なんだよ、それ」
小太郎「本当にそれでいいのかよ」
真澄「もちろん、良くないのは わかってるわ」
真澄「あなたが、私を責めるのも 当然のことよ」
真澄「でも、どうしても・・・」
真澄「どうしても、私・・・」
小太郎「──俺にしろよ」
真澄「えっ」
小太郎「ずっと好きだった」
小太郎「本当に好きだったんだ あんたのことが」
小太郎「けど、あんたの 幸せのためを思って」
小太郎「この想いは 伝えないつもりで・・・」
真澄「ダメ! それ以上は言わないで!」
小太郎「嫌だ、聞いてくれ!」
小太郎「好きだ、あんたが好きだ!」
真澄「・・・っ」
小太郎「愛してる! だから・・・」
小太郎「そんな浮気野郎は捨てて 俺にしろよ、ナオミ──」
小太郎「って、もしもし? もしもし、ナオミ?」
小太郎「ああ、くそ! 電波の調子が・・・」
小太郎「もしもし、もしもーし!」
真澄「ひどい・・・そのあだ名だけは やめてって言ったのに」
真澄「ハイハイ、わかった 認めるわ」
真澄「私は、あなたに頼まれたプリンを 勝手に食べたダメな女です」
真澄「で、どうすれば?」
真澄「・・・わかったわ 買いなおしてきます」
真澄「でも、また帰りの電車のなかで 食べたくなるかも・・・」
真澄「嘘よ、ごめんなさい ふふ・・・」
ルリ(はぁ・・・やっと静かになった)
  ・・・・・・もしもーし?
  もしもし、ルリ
  聞いてる?
ルリ「ああ、ごめん 聞いてなかった」
ルリ「今、めちゃくちゃ 眠くて・・・」
  なんだよ、聞けよ!
ルリ「だって、明け方まで 電話してたんだよ?」
ルリ「誰かさんの彼女と」
  う・・・っ
  それで・・・その・・・
  ユイコはなんて?
ルリ「絶対許さないって」
  そ、そっか・・・
  ちなみに、それって
  浮気相手が誰なのか・・・
ルリ「気づいてない」
  ・・・・・・マジか
ルリ「ホッとした?」
  いや、ええと・・・
ルリ「ホッとしたんだね?」
  ・・・・・・
ルリ「じゃあ、私から質問」
ルリ「ユイコとは いつ別れてくれるの?」
ルリ「本命は私だ って、言ってくれたよね?」

コメント

  • おいおい街中でそんな修羅場しなさんなや、と読んでいたら、その真相はw
    ルリさん巻き込まれたなーと思っていたら、実は彼女もw
    細かい仕掛けが折り重なっていて面白いですね!

  • 小太郎と真澄はそれぞれ別の人と会話してて、たまたまアンジャッシュのコントみたいにうまい具合にハマっただけなんですね。ルリの無表情が修羅場を迎える嵐の前の静けさだと思うと怖い。文章だけの小説では表現しづらい状況を画面でうまく表現した作者さんのアイデアに感心しました。

  • 周りで雑音与えていた人達の修羅場かと思いきや、彼女自身がその張本人、しかもとても切羽詰まった
    感じで。相手の男性の口ぶりから、なんか前向きな気持ちにはなれませんけど・・。

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